漢方を専門にしていると、いわゆる不定愁訴と呼ばれる患者さんがたくさん来院されます。不定愁訴とは訴えがとにかく多彩で治療する側も困ってしまう状態です。例えば、頭痛、めまい、倦怠感、肩こり、不眠、腰痛みたいなことを問診票に記入されます。私たちが医学部で勉強する際には、臓器別(縦割り)なので、このように多科横断的な訴えがあると困ってしまいます。診療科で言うなら、神経内科、整形外科、耳鼻科、などとなります。実際、大学病院のように全部の科が揃っているところほど、自分の領域(垣根)がはっきりしており、その症状は当科ではないので専門の科を受診するよう紹介するということになり、たらい回しになります。全部の科をまわったあげく、結局特に異常は見つからなかったということで終わりになる場合もあります。
一方、漢方は不定愁訴の治療を得意としており、訴えが3つであろうと10であろうととくに構いません。漢方薬は多成分(いくつもの生薬を組み合わせている)のため、薬効も1つではなくいろんな症状を治す力があるからです。私に言わせると、訴えが多いほど、それだけ参考となる情報が多いので治療がしやすいぐらいです。むしろ、訴えが少なくて情報が少ないほど漢方治療は難しくなります。
いま、私はハングルを勉強していますが、絶対読めないと思っていたハングルがだいぶ読めるようになってきました。丸や四角の記号みたいなものが英語のスペル(発音記号)対応できるため、ハングルを全部アルファベットに置き換えればよめてしまうのです。そして、面白いのは隣り合ったハングル文字の母音と子音(パッチム)が溶け合って発音されるのです。漢方と似ているなーと思います。母音や子音の塊であるハングルは漢方の基本処方。2から4つの基本的な生薬の組み合わせで1つの薬効がでてきます。それをいくつか組み合わせた単語に相当するものが個別に対応した処方となります。