むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 内科学会の週末

    何週間ぶりか、土日いい天気です。たまった洗濯物や布団を干すことができました。この週末は内科学会です。東京で開催されているのですが、WEB配信のお陰で自宅にいながら参加できます。以前なら東京までの飛行機代とホテル代、学会参加費、飲食代などを合わせると10万以上かかっていましたが、今は参加費もクレジットカード払いで、旅費も移動時間の拘束もありませんからとてもいい時代になりました。しかも以前なら、訪問診療のことも気になってとんぼ返りで戻ってきていたのでほとんど会場で講演を聞いたことはありませんでした。学会の専門医などを更新するのに必要な単位を取るためだけに参加していたのです。それが、今では専門外の神経内科とか消化器とか一つ一つ講演を聞きます。しかもパソコンの画面だと広い会場のスライドより細部までよく見えるのでとても勉強になります。

    そんなWEB学会はいいことづくめですが、唯一残念なのが、むかしなら学会にかこつけてちょっと旅行したり美味しいものを食べたりする機会があっったのに、今や全くそういうチャンスが無くなったことです。それから、東京の学会に行くと熊本では会うことのできない一流の先生と遭遇するチャンスが有りました。有名な教授が学会で目の前にいると、私たちにとっては芸能人に遭遇したくらいワクワクします。そういったワクワクがWEB学会でなくなってしまったのは残念ですね。やっぱり、直接お会いして話すことでいろんなチャンスが広がります。私たちくらいの年になったら、それほど野心に燃えて行動するということはないので学会で有名教授と会ってもなんでもありませんが、若い人は面倒がらず会場に行ってみてほしいと思います。

    まだ5月ではありませんが、だんだん五月病の患者さんが増えてきました。五月病というのは新しい職場や部署など、環境が変わった結果、そのストレスで体調を壊してしまうものです。通常5月の連休明けに、仕事に行こうとしても体が動かないとか、吐き気や頭痛で仕事に行けなくなります。ストレスが原因なので頭痛薬や胃薬などではなかなか調子も回復しません。当院の心療内科の新患は今のところストップしていますが、当院かかりつけの患者さん(日頃は高血圧などでかかっていて五月病になったというような場合)と、他の病院からの紹介状のある方の場合はこのような心療内科も受け付けています。まずは電話でご確認ください。

     

    ブルーベリーの花(つぼみ)

  • 心臓神経症

    日赤のWEB講演会で循環器の漢方の話をしてほしいと頼まれていたので、今日は診療が終わってから診察室のパソコンに向かってWEB講演をしました。胸部不定愁訴の漢方治療について解説をしました。胸部不定愁訴は心臓神経症とよばれることが多く、胸が痛い、動悸がする、などの症状を訴えて心電図などいろいろ検査しても異常なしと言われる場合で、西洋医学的に異常なしでも患者さんにとってみれば本気で痛いし、辛いし、苦しいのでなんとかしてくれということになります。そこで漢方の出番となります。

    漢方は西洋医学がスタンダードとなる前は普通にどんな疾患にでも対応する標準治療でした。おそらく日本ではそういう時代が1500年以上続いていたと思われます。それが、最近(と言ってもこの100年ほど)で西洋医学が発展して不整脈を止める治療薬とか、痛みを取る鎮痛剤とかいろんな薬が出てきたわけです。それでも、漢方のほうが10倍くらい歴史と治療経験があるため、西洋医学で太刀打ちできない難しい症例は漢方の出番というわけです。一方で、心筋梗塞や高度の不整脈などはカテーテル治療とかペースメーカーの手術が優れた成績を示すわけですから、西洋医学VS東洋医学と競い合うわけでなく、お互い得意分野が違うので補完しあう関係だと考えます。

    心臓神経症はその名の通り神経症です。神経症はむかしドイツ語でノイローゼと言っていました。どちらかというと循環器より精神科や心療内科のほうが得意です。循環器のドクターはデジタル的で治療結果も速攻で求めます。精神科はアナログ的でゆっくりじっくり患者さんの治るペースを見ながら治療します。この相反する性格の間で私はときに循環器的、時に心療内科的に患者さんを見ながらハイブリッド的な治療を心がけています。

     

  • 肝線維化の予測値 FIB4インデックス

    週末はあっという間に終わり、新しい週が始まりました。講演のスライドをずっと考えていましたが、なんとか締め切りに間に合わせました。最近はせっかくスライドをつくっても製薬会社のチェックが入ってあれこれ書き直しになるのでやる気が出ません。「不適切にもほどがある」というドラマが話題ですが、最近は何をしても不適切と判断されてしまうのです。例えばスライドに商品名が入っているとNGです。一般名で書くように言われますが、馴染のない一般名で作ったスライドは誰が見ても意味がわからず、価値がないと思います。そんな感じでスライドに細かい表記をすればするほど訂正箇所が増えていき、やる気がどんどん削がれていくので、あれこれスライドに書くのは止めました。

    よく講演の上手い人はイメージ写真みたいなものを1枚出しただけで延々30分ぐらい話します。私もそんな話し方に変えようと思います。とはいえ、なにかないと話せないので、話したい項目だけスライドにして、大事な講演内容は口頭で話すだけ。あとは聞きながらメモしてください、という感じにしました。これは手間がかからずいいのですが、緊張して話すことを忘れてしまったら、ピンチです。そうならないよう事前の準備を怠らないようにしたいと思います。

    最近、検診でFIB4インデックスという項目があります。これは肝線維化を予測する値と言われており、通常の検査で測定する血小板数、肝機能(AST,ALT)と年齢をもとに計算するものです。ウイルス性肝炎はもとより、アルコール性肝障害や以前はあまり心配ないとされていた脂肪肝なども肝硬変に進展する可能性があることがわかってきたため、肝硬変のリスクを予測する計算式が開発されたのです。もし検診データでFIB4インデックスがついていない場合、ネットで簡単に計算できるのでぜひお試しください。当院ではエコーを使って肝臓の線維化の状態を測定するフィブロスキャンという検査を導入していますので、もしFIB4インデックスが高値だった場合はご相談ください。

  • 痛みと漢方

    「痛みと漢方」というシンポジウムに参加するため博多に来ています。福岡でペインクリニックをされている平田先生の主催する勉強会です。毎年参加しているので、これが7回目になります。ちょうど当院がオープンして7年なので、同じ年数が経っています。この勉強会は整形も産婦人科も内科も横断的に痛みに関係した疾患の漢方治療について毎年それぞれの専門家が発表します。そして最後に平田先生が痛みの専門医として難治症例をいかに考えいかに治療すればいいかを教えてくださいます。今日も素晴らしい講演をしていただき、大変勉強になりました。当院にも、いろんな病院に行ったけど治らなかったという難しい患者さんが漢方を求めて来院されます。わたしも、ここで勉強したことをもとにいろいろと考えて治療に取り組んでおり、胸痛、腰痛、手足の痺れなどあらゆる疾患にチャレンジしています。手術をしたけど治らない、みたいな症例は最初から難しいとわかっているので、漢方でなんとかしましょうと安請け合いはできません。頑張ってみます、と患者さんと共に戦う姿勢で臨むまでです。それでも、平田先生からいろいろ教えていただいたおかげで、難しい症例もある程度治せるようになってきました。

    私ぐらい漢方を長年勉強していると、こういう勉強会でもそうそう新しい話に出会うことはありません。今日も4時間にわたる勉強会で、なるほど、これを聞けてよかった、というキラッと光る情報は二つ三つあればいい方です。あとの9割ぐらいの時間は知っていることなのでただ聞き流しているだけです。それでも、そのたった数個の情報が価値があるのです。おそらくそれを聞けただけでたくさんの患者さんが救われる結果になると思います。

    さて、先日にわかベジタリアンになったと書きました。一方で、韓国料理屋さんで美味しいステーキ肉を焼いて食べて感動の旨さだったと書いたばかりですが、今日はせっかく博多に来たので、どうしても食べにいきたかったメキシカンのエルボラーチョ(博多駅ビル内)にいきました。ここでタコスを食べたら、また涙が出るほど美味い!!肉を食べるたびに涙が出そうなくらい感動します。こういう幸せを味わえるにわかベジタリアンは最高です。

  • 私が鍼治療を続ける理由

    朝起きて自宅の周りを見たら全く雪はなかったので、ホッとしました。ところが、いつものように出勤してみてびっくり。クリニックの周りは白く雪化粧していました。やはりクリニックのあたりは標高が高くて寒いんですね。それでも道路は積雪がなく普通に通れました。それにしても寒い一日でした。去年ジャパネットなどでしきりにCMしていた電熱線入りダウンがついに役立つときが来ました。満タンにチャージしたバッテリーをベストのUSBにつなぐと背中や首元がポカポカします。その上から通常の防寒をすると寒さ知らずです。もう一つ、私の寒さ対策は寝るまえに5分だけ布団乾燥機をかけることです。5分でも布団はポカポカになって天国です。あー暖かいー。幸せな気分で眠れます。

    仕事から帰って、WEB講演会に2つ参加しました。運良く開始時間が1時間ズレていたので、いつものようにパソコンを並べて見たりせず、順に参加できました。一つは小池先生の分子栄養学の講座。私達がいかに鉄欠乏、ビタミン不足に陥っているか。そのせいで体調不良、メンタル不安定などの状態を来たしているか解説されました。ためになる話でした。2つ目の講演は昨今の医薬品不足の背景についてジャーナリストが徹底取材して解説してくれました。この医薬品不足は最近毎日頭を悩ませていますが、私が思っていたより何倍も複雑でとんでもない闇でした。問題の根底は自由経済による民間製薬会社(特にジェネリックメーカー)と厚労省が薬価を統制している社会主義的経済のギャップが修正不可能なレベルまで悪化したものと考えます。講演でも言われていましたが、今の医薬品不足は今後3年以上解消される見通しはないとのこと。咳止めも去痰剤も解熱剤も血圧の薬も利尿剤も漢方薬も何も手に入らないでどう医療をすればいいのか。欠品(出荷調整を含む)しているのは4000品目(全体の3割以上)にも登るそうです。信じられない状態です。

    まあ、愚痴ってもなにもかわらないのでこれ以上書きませんが、多くの患者さんの処方で今まで通りとはいきませんのでそれはご了承ください。私が鍼治療をほそぼそと続けているのはそれで収益をあげようと思っているわけではありません。半分は趣味、東洋医学に対する興味が尽きないからなのですが、あと半分の理由は災害時に電気も水も薬も手に入らないとき、私が避難所を回って何ができるだろうかと思ったときに、鍼さえあれば何でもできると思ったからです。じっさい、国境なき医師団など海外の災害現場で活躍している医療チームでは鍼灸が大活躍しています。私も、そう言う事態にそなえて鍼の腕を落とさないように日々努力しているのが本音です。なので、医薬品がまったく入ってこなくなっても鍼だけでやっていける!と密かに思っています。