むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 私の漢方の師匠

    先週の土曜の午後から東洋医学会だったのですが、診察が長引き、参加できませんでした。会場は福岡の九州大学なのですが、最近はWEBでの参加なので、移動する時間がないのはいいのですが、今回みたいに全く時間が取れないとどうしようもない・・と思っていたら、なんと、見逃し配信をしてくれることになりました。うれしい!参加費を振り込んでいたのがもったいない、というのもありますが、今回は寺澤先生という国宝級の漢方の大御所のお話が聞けるのでぜひ聞きたかったのです。寺澤先生は以前富山医科薬科大の漢方診療科の教授だったのですが、私が研修医の頃(H5だったと思います)にニュースカイホテルに講演に来られました。研修医の頃から漢方を勉強したくて仕方なかった私は、大学でその当時一緒だった坂田先生(熊本リウマチ内科院長)と会場に足を運びました。

    その時、どんな講演だったかは覚えていないのですが、漢方を勉強するぞという意気込みだけはあり、そのきっかけとなったのが寺澤先生だったわけです。当時寺澤先生が発刊された「症例から学ぶ和漢診療学(初版)」という本が私のバイブルでした。いまは手に入らない本で、おそらく相当なプレミアがついていると思います。そういうわけで、私の漢方の師匠として尊敬しているナンバーワンが寺澤先生です。そして、そのとき講演会場にいたのが牟田光一郎先生(御船の牟田医院)でした。当時熊本で漢方といえば牟田先生だったわけですが、その会場で牟田先生にばったりであった際に、「漢方を勉強したいんです!」といったところ、では今度の日曜日の朝うちに来なさいと誘っていただきました。

    それから10年以上牟田医院の2Fの会議室で日曜の朝から夕方まで漢方を習いました。寺子屋みたいな勉強会でした。寺澤先生に次ぐ私の漢方の師匠です。このお二人がすごいのはたくさんの弟子を育てられたことです。昔はこのように本との出会い、師匠との出会いが全てでしたが、最近はWEB講演会で日本中どこにいる有名人の講演会でも、自宅でお茶など飲みながら参加できるというのはすごいことです。

  • 友あり遠方より来るまた愉しからずや

    光の色が鮮やかで、春がきたなーと感じさせられます。日本は2月が一番寒いですが、私の留学していたテキサスのガルベストンは12月が一番寒かったです。クリスマス頃しばらく寒い日が続くのですが、年が明けると一気に春めいてきて、1月でもたまには冷房を入れたりしていました。地域によって季節の移り変わりは違うんですね。私の大学院時代、熊大の私の研究室にモンゴルからの留学生を引き受けて、私が実験を手取り足取り指導していました。そして、私がアメリカに留学してからしばらくして、彼をアメリカに呼びました。

    私は子供が小学校に上がる年に帰国を決めましたが、彼はそのままテキサスに永住し、家を買い、彼の子どもたちはテキサス大学に進学しました。いまでは彼は当時私達が研究していた教室の教授になっています。私が帰国してから20年ほど経ちました。実は、こんどのゴールデンウイーク明けに東京で熱傷学会があるのですが、彼はゲストとして招待講演をすることになり、日本に来るというのです。そして、学会を主催する先生方のご厚意で熊本にも足を伸ばしてくれることが決まったとの連絡が来ました。嬉しいことこの上ないです。

    学会世話人の先生からは、せっかくなので阿蘇の温泉に行こうとか、美味しいものが食べられる店があったら推薦してほしいとの連絡があり、準備に忙しくなってきました。暖かくなってきたので、阿蘇方面をドライブするのも楽しい季節です。下見を兼ねてそのうち阿蘇まで行ってきたいと思います。「朋あり遠方より来るまた愉しからずや」とは論語の一節。

  • チャットGPTは完璧な翻訳家でもある

    このところ連日チャットGPTの話題を書いていますが、今日は翻訳のレベルを検証してみました。英文の医学論文をネット上で見つけて、要約の部分をコピペして、チャットGPTに「日本語に翻訳してください」と書いてみたところ、完璧に翻訳してくれました。逆も行けるかなと思って「次の文章を医学論文風の英語に翻訳してください」と書いて「我々は今回の研究結果よりビタミンCの大量投与は抗癌作用を有することを明らかにした」と書いたところ。回答は「Based on the results of our study, we have demonstrated that high-dose administration of vitamin C has an anticancer effect.」と帰ってきました。完璧です。このレベルの翻訳ができるなら、大学院生が英語で論文を書くのなんて楽勝です。結果さえ出れば、すぐ論文化できます。

    私が大学院生の頃、毎日実験に明け暮れていましたが、週1回の教授を交えてカンファレンスでは、急いでその結果を論文にまとめろといつも言われていました。英文論文を書くには、結果”Results”の部分をまず書いて、それに必要な実験方法”Method”を書きます。その後、何十編もの参考文献を引用しながら考察”Discussion”を書きます。そして最後に要約”Abstruct”を書くのです。それを全部英語で書くとなると、まずは他の人が書いた論文を真似しながら書くのですが、いろんな人が書いた論文の文章を部分部分でまねして書くと文章のトーンがおかしくなります。それを自分なりの表現で統一してかきあげます。最後に外国人の校正者(もちろん有料)に依頼してきちんとした英文に直してもらってから投稿するのです。

    似たような研究に取り組んでいる人は世界中に何人もいるため、大発見!とおもっても不思議と世界のどこかにいるライバルがほぼ同時期に同じ発見をしていることがあります。その時、すぐに論文化して発表した方の勝ちとなります。今日、チャットGPTが英文医学論文の執筆に使えることがはっきりしました。論文作成の労力は10分の1以下だと思います。これは日本から情報発信する競争力が10倍アップしたということです。研究者の皆さん、スピード勝負はチャットGPTをいかに使いこなすかにかかってきましたよ。

  • コロナ後遺症の講演でした

    今日は仕事が終わってから、診察室のパソコンに向かってWEB講演をしました。タイトルはコロナ後遺症の漢方治療です。どこにもコロナ後遺症の治し方を書いた教科書などないので、試行錯誤ですが、はっきり言えるのは西洋薬では限界があるということ。漢方を使うとかなり治せるのですが、それも限界があります。結局の所、ハイブリッド治療に行き着きました。これでたいていの症状に対応できます。

    今日の講演で強調したかったのは、処方を決める際には患者さんのニーズを確認すること、という点です。私たち医者は難しい症例に直面した時、よくわからないけど治せるところだ治しておこうという考えになりがちです。案外それは間違っていなくて、自信を持って治せそうなところからアタックすることで最終的にはなんとかなる事が多いのは事実です。しかし、コロナ後遺症に関して言えば、患者さんの訴えやニーズを詳細に確認し、処方を決めるべきだと思っています。

    講演でも話したのですが、例えばコロナにかかって療養解除となり仕事に行ったけど倦怠感、頭痛、咳、頭が働かないなどの症状でやっぱり仕事は無理、とのことで早退した。翌日からずっと仕事を休んでいる、という患者さんが来ます。どう治療するか悩みますが、答えは患者さんがもっています。どうして仕事に行けないのですか?と確認すること。すると、ある人はきつくてきつくて、といいます。ある人は咳がひどくて周りからも白い目で見られるから仕事できませんと言う。結局私たちは独りよがりで処方を決めるのではなく、患者さんが困っているポイントの核心を狙った治療をしてあげないと解決しないのです。今日はそんな話をいろんな症例を通してお話しました。

  • 来週コロナ後遺症の講演をします

    今日は暖かい日差しで春そのものでしたね。夜、ゴンの散歩をしていたら真っ赤に染まった大きな満月(十七夜くらい)が東の空に登ってきました。あまりの美しさにしばし見とれました。そういえば、先日トルコで大地震がありました。1万人もの死者が出たと報道されており、大惨事となっています。やはり今回の大地震も満月前後でした。満月は美しく神秘的ですが、地震を引き起こすほど大きな重力の歪をもたらします。潮の満ち引きは月の重力の影響ですが、それが最大となる大潮が満月の日です。怖いですね。

    さて、来週はコロナ後遺症について90分のウェブ講演をします。それに備えて厚労省が出しているCOVID-19診療の手引というものを読みました。罹患後症状(いわゆる後遺症)だけをクローズアップした手引が出ているのですが、手引の半分は症状についての疫学(統計データ)ばかりがずらずらと書いてあります。その後、呼吸器(長引く咳など)、循環器(動悸など)・・と各論に分けて対処法が書いてあるのですが、たいていは採血、レントゲン、心電図などを検査して異常なかったら3ヶ月ほど経過観察、異常があれば専門病院へと書いてあります。結局、これと言った治療法がないので、自然と治るのを待つか、呼吸器や循環器の専門家の判断に任せるということです。

    しかし、呼吸器や循環器の専門家がコロナ治療の専門家というわけではありません。したがって、治療はそれぞれの経験と勘で行われるはずです。この度東洋医学会からもコロナの漢方治療法が発表されましたが、通常の風邪治療と何ら変わりないものでした。私は去年からコロナ後遺症を500から1000人は診ていますが、やはり治療は普通の風邪のように簡単ではありません。症状は十人十色ですが、これまでの経験でだいたい治療法のパタン化ができたため、最近はこの症状はこの治療とだいたいわかっています。来週はその話を講演する予定にしています。