むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 匂いと認知機能

    匂いがわからないとのちに認知症になる、とまことしやかに言われています。それを過剰に心配して来院される方もありますが、それは必ずしも正しいとは限らず、心配しすぎても仕方ありません。例えば花粉症や副鼻腔炎で鼻に慢性的な炎症がある場合、鼻にある嗅覚神経にもダメージがきて匂いがわからなくなるということはざらにあります。これは認知症と全く関係ない話です。

    認知症で匂いがわからなくなるのは嗅覚神経が脳に直結しており、認知症で問題になる海馬(脳の記憶と関係した部分)の萎縮と嗅覚の鈍麻に関連があるらしいのです。それなら記憶と匂いが関連しているというストーリーは正しいかもしれませんが、その逆は必ずしも真ではありません。つまり、嗅覚が低下している原因の一つとして認知機能低下が関連するということはあるかもしれませんが、それ以外にも原因があるわけなので、1対1の密接な関連があるわけではないのです。

    ただ、匂いがするにしろしないにしろ、認知症は若いうちから意識して予防しないと遅れてしまってはどうしようもありません。血圧とコレステロール、血糖を管理することは必須です。頭に良いとされるビタミン類やEPA, DHAなどの脂肪はきちんと取っておくこと。心房細動などの不整脈はきちんと治療すること。運動をして筋力低下を避けること。テレビなどをボーと見る受け身生活習慣を改め、本を読む、新聞を読む、人と会話するなどアクティブな生活をすることが大切です。

  • 大雨とコレステロールと

    熊本は100ミリの大雨でした。ちょうど昼過ぎ往診に出かける際にはバケツをひっくり返したような大雨でした。至る所で側溝の水が溢れ冠水しています。それでも今日はクリニック近くの訪問だったため、渋滞にはまったりせず昼休みに滞りなく訪問診療をすることができました。ランニング用ウインドブレーカーを雨合羽代わりにきたのですが、帰ってきたらずぶ濡れでした。

    数年前までは新築を設計する際に50ミリまでの大雨には耐える設計ですとか、自信満々に言っていました。それがこのわずか数年で常識を超える事態となりました。ちょっと降れば50ミリ、70ミリは当たり前、100ミリも想定内という感じです。当クリニックは大きな屋根が印象的なデザインですが、その大屋根の雨を処理する排水には巨大なパイプを入れてあります。もちろん今日の100ミリの雨もどうってことありませんでした。ニュースでも50年に一度の大雨とかいう表現がしょっちゅう聞かれるので、これまでの50年とこれから先の日々は同じと考えてはいけません。

    このことを考えていると頭に浮かぶのは女性のコレステロール値です。50歳くらいまではほとんどの人は低いのですが、更年期を境にコレステロールはどんどん上がり始めます。最初の50年とその先は別の人生のようです。同じものを食べて同じだけ運動してもコレステロールは上がってしまうので、どうしようもありません。昨日NNTの話を書きましたが、女性の高コレステロール血症を男と同じ基準で治療すべきかは議論のあるところです。

  • 薬のNNT

    NNTという言葉がありますが、専門用語なのでちょっと難しいかもしれません。NNTとはNumber Needed to Treatの略です。これは、ひとりの命を救うのに何人に処方(治療)しないといけないかという治療確率を表した数値です。例えば、私が大学院時代に研究した学位論文のテーマがプロテインCという抗凝固物質の抗炎症作用だったのですが、敗血症性ショックに投与すると死亡率を低下させるという結果でした。のちにアメリカでリリーという製薬会社が遺伝子組み換え技術を使ってプロテインCを大量生産することに成功し、救急現場で大々的に使えるようになりました。その時、20人の敗血症性ショックに投与すると1人の命が助かる(NNT=20)という成果でした。

    例えば、コレステロールの薬。健康診断で一定の数値を超えていたら治療を始めましょうということになるわけです。そのコレステロール治療薬のNNTは死亡に関しては100以上です。ということは、せっせとコレステロールの薬を処方して飲んでもらっているのですが、私の患者さんでコレステロールを100人治療して1人は飲んでいたおかげで死なずに済んだということになるわけです。ということは、残りの99人は飲んでも飲まなくても結局一緒な訳です。ただ、飲んでいたおかげで死なずに済んだのが自分のことかもしれない(確率1%)というふうに理解しないといけません。我々は、そういう治療効果を意識して本当に治療に値するかどうかは真剣に悩まないといけないと思います。このNNTのデータを客観的に見て私が思うには90歳以上ではコレステロールの治療は意味がありませんが、世の中の多くの現場ではなかなかそうもいかないのが現実です。みんな科学的でなく感情的だからです。

    一方、若年性高コレステロール血症の場合は家族性の可能性が高く、遺伝的に異常がある可能性が高いため、非常に心疾患を合併しやすくなっています。この場合は治療のメリットは大きいため、ためらわずに若いうちから薬を飲んでコントロールすべきだと思います。

  • 洗濯洗剤の進化は本物か?

    突然ですが、洗濯用の洗剤のことを書いて見たいと思います。みなさんアタックやボールドなどの洗濯用洗剤をお使いと思います。昔に比べれば小さくて便利ですね。今の液体濃縮洗剤の前はもう少しサイズの大きな液体洗剤でした。どーんといまの3倍は大きい容器に入っていましたね。その前を覚えていますか?そう、粉の洗剤ですね。計量スプーンで測って使っていました。もしかしたら今もまだこの粉タイプは売ってあるかもしれません。そのもう一つ前をご存知ですか?さすがにこれは結構な年の人しか覚えていないかもしれませんが、どデカい粉の石鹸でした。計量カップも米をはかるカップくらいのサイズでした。

    思い返せば、洗剤はどんどん進化しました。しかし、今思い返しても、洗浄力は全然アップしていないような気がします。サイズが小さく、買ってくるのに便利、家に置く場所を取らないという進化をしただけで、かんじんの洗浄力はたいした進化はしていない気がします。これは、一緒に使う漂白剤にも問題があるかもしれません。昔は塩素系(ハイターなど)でしたが、色物は色落ち注意ということでよく洗い上がりにガラが白く抜けてショックだった記憶があります。これはまだ私が大学生くらいの時代ですから、20年から30年くらい前ですね。その後、色落ちしない酸素系漂白剤が主流となっています。たしかに色落ちの心配は無くなりました。

    しかし、色落ちしない漂白剤で白くなるはずもなく、洗剤もコンパクトになっただけですから昔の方が白かった気がするのは私だけでしょうか?今でも白衣などの洗濯には消毒も兼ねて塩素系洗剤を使います。もちろん真っ白に洗えます。そこで、私も家庭内の白いタオルやシャツ、下着類は塩素系漂白剤をたっぷり使ってまとめ洗いすることにしました。間違いなく綺麗になります。洗剤が進化したような気がしたのは錯覚だったのでしょうか。

  • 高齢者の役割

    敬老の日でした。日本の高齢化はどんどん進み、敬老といっても、大半の人がそれに該当するような時代もすぐそこです。歳を取っても、健康でイキイキと楽しい生活ができるような高齢社会であってほしいと思います。

    人間の欲求には段階があり、生理的欲求(食べ物、排泄、睡眠など)、安全欲求(雨風をしのげる快適な住居、交通事故や転倒事故などのない環境)そして、社会的欲求(なにがしかのグループに参加して社会の一員として参加、貢献できること)といった、低次欲求から、承認欲求(さすがですねと、皆に認められる)、自己実現欲求(目標達成)という高次欲求があります。老人になった場合、老人ホームやデイサービスなどで一番下の生理的欲求と安全欲求だけはなんとか満たされるよう皆努力しています。しかし、その上の社会的欲求、や承認欲求というのはなかなか現実難しいところがあります。Facebookは同級生などの輪が広がっており、部屋に居ながらにして社会参加ができるという意味では社会的欲求を満たしてくれるツールです。寝たきりでも参加可能です。これからは高齢者ほどFacebookの時代だと思います。

    ほかにも、歌がうまいならカラオケサークル、将棋がうまいなら将棋サークル、体が丈夫なら街の中で自転車などの整理(アルバイト)など社会に参加する方法はいろいろあります。そうすることで、社会的欲求と承認欲求は満たされます。それができない場合工夫が必要です。例えば、男性のお年寄りの場合、デイサービスでビーチバレーなんてやってられないと思う人もいると思いますが、そういう人にはバレーの審判を頼むとか、トーナメント表を作ってもらうとか、なんらかの得意なことを生かした役割を担ってもらうことです。こういう工夫は全く介護保険の点数(施設としての報酬)につながりませんが、入居者さんの幸せを第一にいろいろ工夫してもらいたいなと思います。