明日は福岡で漢方の講演をする予定です。タイトルは「Long COVIDの中西医結合治療」というものです。Long COVIDとは、いわゆるコロナ後遺症のことです。当院はコロナが5類になった時から積極的にコロナ後遺症の患者さんの治療に取り組んでいます。
多くの患者さんがコロナ感染後に倦怠感、長引く咳、めまい、動悸などに悩まされていました。かかりつけ医で相談しても対症療法的な対応や、場合によっては「治療法がないから経過観察」とされることが一般的でした。厚労省のコロナ後遺症治療ガイドラインでも、検査で異常がない場合には経過観察や専門医への紹介が推奨されていますが、その専門医が必ずしもコロナ後遺症に詳しいわけではなく、多くの患者さんがたらい回しにされている状況でした。
私は漢方で治療すれば多くの症状が改善できるという手応えを得たため、当院のホームページや保健所を通じて「コロナ後遺症外来を実施します」と宣言しました。
その結果、これまでにおそらく1,000名を超える患者さんが来院されました。漢方治療の結果、8割以上の患者さんが改善を見せましたが、やはりどんなに工夫しても改善しないケースも少なからずあります。しかし、初診時に車椅子で寝たきりに近かった患者さんが動けるようになり、仕事に復帰できた例もあり、治療に取り組んできた甲斐を感じています。今日は、匂いが分からないという患者さんが、漢方治療を続けた結果、8か月かけて匂いを正常に感じられるようになったという報告を受け、非常に嬉しい気持ちになりました。
明日の講演でお話しする「中西医結合」というのは、中医学(漢方)と西洋医学の併用療法を指します。一方に偏ることなく、効果が期待できる治療法を洋の東西を問わず取り入れるアプローチです。
現在では、多くの患者さんを診療して治療経験を積んだ結果、効率的に改善を目指す治療ができるようになりました。しかし、当初は試行錯誤の連続でした。過去のカルテを見返しながらスライドを作成していると、当時は非常に悩みながら治療を進めていたことを思い出します。
医療は理論だけでなく、実際の臨床経験を通じて新たな治療法を模索することが重要だと改めて実感しています。コロナ後遺症という未知の病態に対する治療は遠回りも多かったですが、その経験があったからこそ現在の自分があると感じています。
https://www.youtube.com/watch?v=M7z-PLe_RNU
ノーランズのリンダ・ノーランがなくなったとの訃報を聞き、とても残念です。この曲を久しぶりに聞いたら青春時代がまぶたに浮かびました