むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • コロナが5類になって1年

    あっという間に4月も終わろうとしています。来週からはゴールデンウィークとなりますね。当院の診療はカレンダー通りとなります。4月30日、5月1,2日は通常通りです。幸い、最近はコロナやインフルエンザが減ってきており、連休後にまた急増する心配はないように思います。そういえば、新型コロナが5類に変更になったのがちょうど去年のGW明けからでしたね。あれから私達の生活も一気に変わりました。とても忙しくて慌ただしい1年でした。思い返すと遠い過去のような気がします。みんながマスクを外して街を歩けるようになったし、旅行も行ける、宴会もできる、自由というのは本当にありがたいものだと実感しました。この頃まで、ほとんど外出はせず、するときもマスクは2重にして、ゴム手袋をする、みたいな人がいましたが、さすがにそういう人も見なくなりました。家にこもりっきりで筋力低下(フレイル)とか、認知機能低下とか、抑うつ気味になった人も大勢いました。そういう2次被害的なものもだいぶ減ったと思います。

    家に引きこもると鬱になりやすいのはなんとなくイメージできると思います。ここで大事なのは、朝きちんと起きること、朝ご飯を食べること、朝日を浴びること、長い昼寝をしないこと、運動すること、などです。どれも引きこもりの人がちゃんとできていないことです。朝起きて朝日を浴びると目から入った光刺激で10数時間後に脳内でメラトニンという睡眠ホルモンが出てきて夜眠くなるリズムができます。また光刺激でセロトニンという気分を安定させる脳内ホルモンが増えてきます。メラトニンやセロトニンは光刺激も必要ですが、栄養素、特にタンパク質がその材料となりますから、肉や魚、卵などを食べる必要があります。ナッツ類も良いと言われています。また、そういった蛋白質をセロトニンやメラトニンに変換するためにビタミンB(特にナイアシン)やビタミンD、亜鉛、マグネシウム、鉄などのビタミン・ミネラルを必要とします。

    うつになりやすい人はそういった栄養をきちんと取っていない事が多いのは、診察中に聞いてみると明らかです。仕事が忙しくて朝昼ろくに食べない、コンビニのおにぎりとか菓子パンで済ます、夫や子供にご飯や弁当を作るが自分は余り物をつまむ程度しか食べない、などなど、カロリーは足りても栄養(ビタミン、ミネラル、蛋白など)が全然足りていない。新型の栄養失調です。

     

  • ツムラのはんこ(懐かしい思い出)

    先日から話題の生活習慣病療養計画書という書類を患者さんごとにプリントして説明し、サインを頂くという一連の作業をやってみました。一日を通して生活習慣病に関連する患者さん全てに書類を作成してサインを頂きました。多少の時間をとるもののなんとか診療時間内にできることを確認することができました。細かい詰めはまだこれから必要だと思いますが、一旦はこの方法で大丈夫だと確認できてホッとしました。今回の国の大きな方向転換についていけないクリニックは淘汰されていくことになると思います。こういうときに頼りになるのは相談できる友人です。特に同業の友人は同じ悩みで対策を考えているので、良いヒントがあります。私たち昭和生まれは、友人たちと定期的に飲みにいったりする世代なので情報交換もそういう会に参加すれば簡単です。若い世代になると、オンラインでZOOMとかチャットになると思いますが、そちらは時間と空間の壁がない分広くつながれる一方で、どこまで本音を引き出せるかがポイントになるかと思います。

    今日は診療が終わったあと、保険医協会の主催で診療報酬改定の説明会がオンラインでありました。これも上に書いた生活習慣病の話がメインでした。話を聞いていて驚いたのは、紙カルテにはんこを押して療養計画書を作る方法をレクチャーされていた点です。今どき紙カルテで・・。はんこを作って療養計画書を作る前に電子カルテを導入しないと、と思いますが、はんこは数千円、電子カルテは数百万ですからさすがに同じ土俵で話はできないのでしょう。

    はんこといえば、昔の診療所の診察机にはツムラの漢方の処方名が入ったはんこが100個以上並んでいたのを思い出します。カルテに漢字で葛根湯などと書くのに手間だからという理由です。なかには当帰四逆加呉茱萸生姜湯という長くて難しい名前もあるのでさすがにはんこがほしいのはわかります。電子カルテの時代になり、あのはんこは姿を消しました。私は電子カルテ用のパソコンにユーザー辞書登録をしているので「とうき」と打ち込むと「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」が出てくるようにしています。

  • 地震に備えましょう

    熊本地震からちょうど8年たった昨日はそろそろ寝ようと思った途端に携帯から激しく「地震です!」とアラームが鳴ってびっくりしましたね。うちではiPhone2つとiPad、アンドロイドPadなど全部で5つの端末が一斉になったので無茶苦茶びっくりしました。何事だろうと思いました。大きな揺れがきます、と言っていたと思いますが全然揺れませんでした。キッチンにぶら下げているフライパンがゆらゆらと揺れているだけでした。携帯の緊急速報は本当に困ったものです。もっと静かに鳴ってほしい。とりあえずNHKをつけてみたら、アナウンサーはかなり静かなトーンで地震の被害状況や今後の対策について話していました。昔なら、甲高い声で何度も「命を守る行動を」と繰り返していましたが、騒ぐのをやめたのでしょう。いい傾向です。冷静に話さないと頭に入ってきません。

    私は以前急性期病院で循環器と救急の担当でした。夜間当直をすると20台から多いときだと40台ぐらい救急車が入ります。それぞれ、交通事故だったり心筋梗塞だったり脳卒中だったり大量服薬だったりで緊急事態なのですが、私たち救急担当医は決して慌てず冷静に静かに指示を出します。点滴、採血、レントゲン、次々と指示を出すのですがドラマや映画のように怒鳴ったりはしません。それでもたまに大声で怒鳴るドクターがいるのですが、ついてくれるナースがびっくりして結局仕事がはかどらなくなるので、静かに冷静に指示するに限ります。怒鳴るのは未熟な証拠、そして自分に余裕がない証拠です。

    最近は、怒鳴らなくても、こうしたほうがいいんじゃないかとアドバイスしただけで下の人はパワハラを受けたと言って欠勤したり退職したりします。部下と人間関係を良くしようと思って飲みに誘うと、飲み会参加は業務命令ですか、という話になる。難しい世の中になりました。当院にはそう言ってパワハラされたから欠勤するための診断書がほしいという人も来るし、かわいがって育てた部下からパワハラだと言われて心が折れたという上司の人も来院されます。みんな病んでますねーーー。

  • 何もせず見守る医療というのもあり

    最近は医療施設と介護施設の連携を強化するように国が勧めています。入院患者を減らし、できるだけ在宅や高齢者施設で過ごしてもらいたいのが国の本音で、そのためにはいろいろ持病がある高齢者をなにかあるたびに病院に入院させないで在宅で見てもらえる体制を日頃から作っておくようにということです。在宅と入院で国の財政にかかる負担がどのくらい違うかというと、入院すれば必ずCTやMRIその他全身くまなく検査します。高齢者を検査すれば、今まで見過ごされていた小さなガンなどが見つかることは多々あります。結局放っておいてもたいした問題でなくても、見つけてしまったら、放置するのも心配なので手術したり、いろんな治療をします。その後、限度額いっぱいリハビリしてから施設に返すので、かかる医療費は相当な額になります。一方、在宅医療ではそのような濃厚医療はできないので、お金はあまりかかりません。

    わたしが見て感じるのは、高齢になって無駄な検査をたくさんして、病気を見つけるのは本人にとって全然幸せではないのではないかということです。とりあえず、見つかった病気は「早く見つかってよかったですね」ということになりますが、果たしてそれが本当に良かったのかは疑問なところが大きいです。

    最近、当院近くにグループホームがオープンして、当院に連携施設になってほしいと頼まれたのでお引き受けしました。先日入居された一人が、これまで病院にかかったり、診察してもらうたびに薬が増えて、その結果どんどん体調が悪くなるので、何もしないでほしい、というご希望でした。ほとんどのドクターは標準治療(ガイドライン通り)をしたがり、それを外れることをとても嫌います。しかし、高齢者医療のことを真剣に考えると、何もせず見守るのが一番幸せにつながるというのは一理あると思い、その方もわたしが担当することにしました。診察をしても薬を出さず見守るというのは、医者にとってはストレスですが、患者さん(やその家族)の希望であれば、できるだけ希望に添えるようにしたいと思ったわけです。

  • 経営の勉強会

    今回の診療報酬改定で内科系の開業医は大打撃です。早急の対応がないと、巨額の赤字が見込まれます。国は職員のベースアップを言ってきていますが、これほどまでの減収を飲ませておいて、ベースアップするにはよほど体力のあるクリニックしか対応できません。今日はそういう状況の中で生き残りをかけた対策勉強会がありました。同級生を中心に内科で開業している友人たちと、医師会の保険担当の理事とのざっくばらんな意見交換会です。

    今回改定される項目は多岐にわたり、そのなかでも大きな影響のあるいくつかに対してそれぞれのクリニックが現在取り組んでいることや、今後どういう方向で対応していくかという意見を聞くことができました。とにかく大量の書類作成その他の雑用をこなしてもこれまでより減収です。何も対策を取らなかったらおそらくクリニックの存続は難しいです。私も、業務縮小して訪問診療をほそぼそとして食いつなぐ方法なども検討しましたが、そんなことをするために開業したのではない。開業当時の志を新たにして、やれることは全部やって現状維持したいと思いました。

    コロナ後遺症にしろ、五月病にしろ難しい症例は病院の経営にとっては全くプラスではなく、シンプルな高血圧や高コレステロール患者さんのほうが嬉しいわけですが、私の持てる漢方の得意技をいかすにはとにかくどこの病院でもうまく治らなかった、みたいな難治症例にチャレンジすることが仕事のやりがいです。診察に時間がかかっても、私はそういう人達を救うためにクリニックを経営しているのだと思ってがんばっています。私は経営者でもあるので、クリニックの今後の進む方向を決めてスタッフに示さないといけません。1−2週間前にだいたい心は決めていたので、今日、みんなと意見交換してその方向で間違いないと確信しました。