むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 梅雨は頭痛の季節

    梅雨の中休みでよく晴れた一日でした。朝は涼しいかなと思ったのですが、昼は30度を超える暑さでした。暑さもですが、この湿度で頭痛やめまいの患者さんが相当います。頭痛は、最初カロナールでなんとかなったけどだんだん効かなくなり、ロキソニンやイブを使う様になった。ほとんど毎日1回か2回頭痛薬を飲まないとやっていけない、というくらいひどい人もいます。ただし、それほど鎮痛剤を使わないといけないのはただの湿度のせいとか気圧の変化とかではありません。薬物乱用頭痛と言います。鎮痛剤を使いすぎたせいで、鎮痛剤が切れてくると頭痛がするからまた鎮痛剤を飲む、という悪循環に陥っているのです。

    このような場合、頭痛の専門家はとにかく頭痛の原因となっている鎮痛剤を使わないように!と指導されます。それが正論です。しかし、頭痛があるのに頭痛薬を使うなと言われた患者さんは絶望的になります。今日からどうやって過ごせばいいんだ、と。そこで漢方の出番です。私はこういう場合、抑肝散加陳皮半夏を処方します。飲んでもらっているうちに次第に頭痛の頻度が減り、気がついたら鎮痛剤を週に1回しか使っていない、みたいに自然と鎮痛剤の泥沼から救われます。もちろん頭痛のタイプによっては五苓散や葛根湯などを併用して治療効果を高めることもあります。

    五苓散はこの時期のめまいにも有効です。私はどちらかというと苓桂朮甘湯を処方することが多いのですが、それが効かないときに五苓散がよく効く場合があります。両者はかなり似た生薬構成なのですが、微妙な違いが効果の差となるようです。

    ところでヤクルト1000という睡眠に効くと言われている新商品がありますが皆さん試したことありますか?私は毎日5時間半睡眠ですが、寝付くのに数分、あとは朝まで目は覚めません。不眠症ではないので、ヤクルト1000の効果を確かめるのは難しいかもしれません。ヤクルトがなぜ睡眠に効くのか詳細は知りませんがおそらく腸内細菌がセロトニンを増やし、その結果メラトニン(睡眠に関係する脳内ホルモン)が増えるのだと思います。それで眠れるなら面白いですね。

    日曜日の夕やけ

  • 学会の週末

    先週の日曜は地域医療センターの出動協力医の当番だったので2週間ぶっ通しで仕事をしました。そしてこの週末は福岡で東洋医学会総会でした。土曜は診療があるので、日曜だけでも日帰りで行くつもりでしたが、どうしても熊本から離れられない事情があり、仕方なくオンライン参加することにしました。学会は金土日の3日間です。金土は仕事で時間が取れませんでしたので、後日オンディマンドで聞きます。日曜のプログラムも後日オンディマンドで聞けるのですが、やはり、せっかく今福岡で開催されているのをリアルタイムに聞いて勉強したいという気持ちもあり、日曜は朝から晩までずっと自宅でオンラインで参加しました。いい時代になりました。もし学会会場に行けば複数同時にあちこちの会場であっている発表の中から興味あるのを一つだけしか聞けませんが、WEBだと後日全部聞いて勉強することができます。また、聞き逃したところは数分戻ってもう一度聞いたりと言うこともできます。勉強の環境が凄まじく整いました。コロナ後もずっとオンライン学会は開催してもらいたいです。

    私くらい漢方の勉強を長年やっていると学会でもだいたい聞いたことある内容が多くなってきます。しかし、勉強会や学会に参加するとたいてい1つか2つはキラリと光るすごい情報を得ることがあります。私にとっては参加費を1万払ってもその1つに出会うことができれば大満足です。そのゲットした1つの情報で明日からの診療がガラッと変わることがあります。そして、その結果救われる患者さんが何十人と出てくるのです。そういう意味でも真剣に学会の情報を吸収して、キラリと光るたった1つの情報を自分のものにすること、このために週末を潰してひたすら勉強しているわけです。

    家の本棚を整理していて益田総子先生の劇的漢方シリーズという本が7冊出てきたのですが、私は以前この本をバイブルのように何度も何度も読みました。その後本棚にしまって10年ぐらいたっていると思うのですが、久しぶりに読み返してみて、びっくりしました。コロナ後遺症の治療に自分であれこれ考えて治療法を確立したと思っていた処方が、この本に書いてあったのです、もちろん症例はずっと前の話でコロナではないのですが、まさか私が考案したと思っていた処方は益田先生の影響を受けていたのだと知り、昔読んだ知識が知らないうちに自分のものになっていたんだと気づきました。

    県庁前

  • 熊本中央病院と連携の会でした

    土曜日は朝の8時頃から待合がいっぱいで、座るところもないくらいでどうしようと思いましたが、新患の割合は少なく血圧の薬などの再診が多かったので、待ち時間はそれほどにはならず、昼には終了することができました。私はそれから大急ぎで弁当を食べて、医師会に心臓検診に行きました。私は通常の内科の診察もかなりスピーディーな方ですが、心臓検診でも要領良くどんどん診察します。ただ、心臓検診は診察とセットで心エコーや運動負荷心電図の検査があるため、私が頑張れば頑張るほど検査部門が渋滞します。また、運動負荷心電図は指示したドクターが直接検査にはいる事になっているので、バンバン診察した結果、私が担当しないといけない負荷心電図検査が相当数にのぼり、結局診察と結果説明が終わったのはいちばん最後になってしまいました。

    検診のあと、急いで帰宅して家に車をおいて、バスでもう一度街までとんぼ返りしました。今日は4年ぶりに熊本中央病院の連携のつどいという集まりがあり、日頃入院や検査でお世話になっている中央病院の先生たちとの懇談会でした。コロナで中断していため4年ぶりということもあり、集まった人数はホテルキャッスルの2Fの一番広いキャッスルホールに立っている人だけでぎゅうぎゅう詰めの状態でした。久しぶりに、同級生や近隣の医師会の先生方、元同僚、大学時代の同門の人たちとワイワイお話できて楽しいひとときでした。コロナの3年間孤立してひたすら診療に徹しましたが、自分と縁のある先生がこんなに沢山いたんだと思うと、心強く感じました。

    その会で中央病院の小児科部長の永野先生(同級生)からの相談で、最近不登校がとても増えて困っている、とのお話でした。当院でも起立性調節障害などで朝起きられないため、学校に行けていないという生徒さんたちが大勢来院されています。漢方が飲めれば、結構元気になる場合があるので、今後中央病院と連携をして、当院で漢方治療、中央病院ではカウンセリングという両輪で取り組みをしようということになりました。

  • みねばりの櫛のパワー

    漢方を専門にしていると、患者さんの「気」を意識します。気が多いか少ないか、気がきちんと流れているか、というのを見極めながら処方を決めるのです。気の流れといえば、気功は中国では東洋医学の一分野として普通に扱われています。太極拳も気の流れを意識した運動です。熊本東方医学研修会という勉強会があり、去年から私が主催して漢方の勉強会をやっていますが、私がひきつぐ前は気功でもヨガでも患者さんの役に立つならなんでも勉強しようという会でした。

    そのつながりで、気功の達人の坂本先生という方と出会い、その方が亡くなる最後の数年主治医をさせていただいた関係ででいろいろ教えていただきました。その坂本先生の妹さん(木村先生)も気功の達人で福岡に在住でしたが、実は、その木村先生も最近なくなったと聞き、とても残念です。坂本先生は水道町で気功の体操教室を長年されており、門下生もたくさんおられます。そのうちの一人は時々私に会いにきてくれるのですが、坂本先生から受け継いだ気功体操をボランディアで教えておられて、うれしい限りです。私は漢方薬で気を動かしますが、当然体操や気功で動かすこともできます。うまく行けばそれで人は元気になるし、痛みもとれます。

    私も気功体操はちょっと習ったのですが、人に教えたりして見せるほどの技術はありません。その坂本先生の形見で頂いたのが木曽のみねばりというツゲのような硬い木でできた櫛です。坂本先生は、これで髪の毛を整えてもいいのだけれども、痛いところをこの櫛で軽くこするとすごいパワーがあるよ、といわれていました。たしかにその天然木で作った櫛のパワーはすごいと感じた私は、台湾の夜市で見つけたくすの木の櫛とか楽天でみつけた木曽のみねばりの櫛なども手に入れてパワー比べをしてみたのですが、坂本先生の形見の櫛が一番でした。先生は、旅行中にふと手に取ったらあまりのパワーに驚いていくつか買ってきたと言われていたので、どれでもいいわけではないのでしょう。

    今日は木村先生の訃報を聞いて、不思議な思い出話を書きました。

  • 喉の所見で診断する

    最近は毎日数名のコロナ陽性患者さんが出ています。印象としては第7波のときと同じかそれ以上いるのではないかと思います。ほとんどインフルエンザよりも軽い風邪みたいなものなので、それほど特別扱いする必要はありません。5類扱いでしかるべきと思います。毎日何人もの喉の所見を見ていると、あ、これはインフルエンザ、これはコロナ、これは溶連菌感染、とだんだんわかってきます。以前はインフルエンザとコロナを同時に検出できる検査キットを使っていましたが、最近はコロナ用、あるいはインフルエンザ用の単体のキットを使うことが多くなってきました。検査する前からだいたいどちらか見当がつくからです。実は単体の検査キットはインフル・コロナを両方検出できるキットより値段が安いので、検査代も安くなります。検査を受ける側にもメリットがあります。

    ドクターもこのブログを見ていると聞いているので、専門的ですが、見分け方を書いておきたいと思います。インフルエンザは咽頭のリンパ濾胞が赤く腫れて小さなイクラのような斑点状に見えるのが特徴的なので、私はレッドスポットとカルテに書いています。コロナの場合は咽頭が夕焼けのように真っ赤に見えることが多く、太陽のフレアのようなので私はカルテにフレア状発赤と書いています。溶連菌は扁桃腺が化膿したように見えることが多いのが有名です。

    小児科の先生はアデノウイルスとかコクサッキーウイルスの咽頭所見も目で見て当てられる人がいるので、経験を積むことで精度が上がるのは間違いないです。そこで、人工知能(AI)の出番です。AIに各症例の咽頭所見の写真をとにかくたくさん学習(ディープラーニング)させることで、高精度で診断が可能となります。インフルエンザ用のAIはすでに発売されています。検査キットに遜色ない精度だと聞いています。そのAI機器による診断は保険適応されています。