むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 新しい職場に馴染もう

    学校はまだ入学式や新学期が始まっていませんが、会社ではすでに部署異動などが今月初めに行われたという方も多いようです。通常、新しい環境で1ヶ月ほど頑張ってみて、それでもストレスに耐えきれず体調を崩して来院されるのが5月頃。いわゆる「五月病」と言われる状態です。

    しかし、5月まで待つ必要もないのかもしれません。実際、今日は早くも“五月病のような”症状を訴える方が来院されました。新しい部署で3日間頑張ったけれど、すでにきつくて限界、とのこと。
    通常、1ヶ月ほど新しい部署で働いてみて継続が難しいようなら診断書を出し、しばらく静養を勧めることもありますが、さすがにまだ3日目。新しい仕事に慣れる時間も必要ですから、今回は軽めの安定剤を処方し、まずは仕事内容を少しずつ覚えたり、周囲と良好な関係を築いたりしてみましょうという話になりました。

    このようなケースでよく見られるのが「適応障害」。新しい環境にうまく馴染めずに体調を崩す状態です。
    一方で「過剰適応」といって、新しい環境に適応しようと必死で努力し、周囲からは「頑張ってるね」と評価されるものの、実は無理を重ねて心身に不調をきたすタイプもあります。

    さらに、近年注目されているのが「大人の発達障害」。たとえば、ケアレスミスが多く注意力が散漫なために叱られやすい人や、コミュニケーションが苦手で、わからないことを質問できずにミスをしてしまう人などです。これらの方々も、慣れた仕事には問題なく取り組めるのですが、業務内容が変化したり、急に仕事量が増えたりすると、対応が難しくなり、やがて体調を崩してしまいます。

    こうした方たちはすでに精一杯努力しており、限界を超えている場合が多いです。必要なのは、本人の努力ではなく「働きやすい環境」の整備です。上司の方には、部下の特性や個性を理解したうえで、適切な配慮や調整をお願いしたいと思います。

    さて、日本は先進国の中でも「一人あたりの生産性が低い国」としてよく話題になります。欧米諸国では、日本よりも長期休暇をしっかり取りながらも、高い給与と成果を出しているのです。
    その背景には「仕事の効率性の違い」があります。日本では、個人の専門性を重視せず、部署異動を繰り返して多様な業務を経験させる風潮があります。これは“総合職育成”としての側面もありますが、せっかく仕事に慣れてきた頃に別の部署に移され、また一から覚え直し──というサイクルでは、生産性が上がるはずがありません。

    例えば学校の先生を見ても、英語を教えるのが得意な先生が、授業だけでなく委員会活動や部活動など、専門外の業務を数多く抱えています。これでは本来の力が発揮しきれません。
    このような「何でも屋的」な働き方は、日本の職場構造の大きな問題点だと感じます。