市内はあまり雨も降らず、穏やかな一日でした。
夕方、仕事の後で医師会に出かけ、心臓健診班の会議に参加しました。みんなで手分けして、大量の学校心電図をチェック。会議後に外に出たら、思った以上に肌寒く、長袖シャツの上にもう一枚ほしいほどでした。
私は先週の土曜日にセミナーを開催して慌ただしく過ごしていたため、今週はずっと疲れがたまり気味でした。そんななか、風邪の患者さんが次々と来院され、少し辟易していました。また、遠方からも新患さんが複数来られ、その多くが中高生で、体調不良を訴えていました。
起立性調節障害の可能性も考えられますが、一度の診察で確定することは難しいため、漢方などを使いながら、経過を見て判断していきます。なかには軽い発達障害があると思われる方もおられますが、丁寧に話を聞いていく中で、少しずつ見えてくるものです。
困るのは、診察中にまるで他人事のようにそっぽを向いて返事もしないお子さん。情報がほとんど得られず、診断が非常に難しくなります。また、こちらが子ども本人に質問しているのに、お母さんが代わりにどんどん答えてしまうケースも困ります。親が話しすぎると、子どもが自分の言葉で話す機会を失ってしまうことがあるからです。
これは親子だけでなく、夫婦間にもよく見られるパターンです。奥さんの体調を聞いているのに、ご主人が代わりに答える。残薬の確認までご主人が答えることもあります。ここまで全てを管理されている奥さんは、きっと大きなストレスを抱えているのではないかと心配になります。
逆に、ほとんど口を開かないご主人と、非常によく話される奥さんというご夫婦もいます。ご主人の口からご自身の体調や気持ちを直接聞き出したいのですが、奥さんがすべて代弁してしまうことが多く、難しい場面もあります。
私はカルテを記載する際に、特に注意していることがあります。それは、「できるだけ患者さん本人の言葉のまま書く」ということです。家族が代わりに話した内容や、医師の側で要約した言葉では、情報の本質が失われてしまうことがあります。
たとえば、患者さんが「今朝起きて髪をブラッシングしたらビリビリ痛くてびっくりして来ました」と話された場合、それを「今朝から頭痛あり」とだけ記録してしまうと、重要なニュアンスがすべて省かれてしまいます。患者さんが発する言葉には、診断のヒントがたくさん散りばめられています。
そのため私は、診察が始まる前から患者さんが書いた問診票の文字をじっくり見つめ、「どんな気持ちでこの言葉を書いたのか」を想像するところから診察を始めています。診察室に呼び入れる前から、すでに診療は始まっているのです。