むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • インスリンの話

    ひときわ寒かった冬も終わり、例年より早く桜が開花しました。暖かくいい天気の日曜でした。洗濯をしたり布団を干したり、家のフローリングのワックスがけをしたり、日ごろできなかったことを一気にしました。昼にはクリニック近くのコンビニで弁当を買い、クリニックの向かいにある公園のベンチで一人花見弁当を食べました。外で食べる弁当はおいしい!ひごろ炭水化物ダイエット(糖質制限)をしているのですが、弁当の半分はご飯です。もったいないので全部食べました。たまに食べるのもいいものです。炭水化物を食べたあとは、体を動かしてカロリーを消費します。血糖が上る前に燃やしてしまえば、食べなかったことになります。大事なのは、血糖を上げないこと、インスリンを上げないことです。

    インスリンは血糖を下げるホルモンですが、血液中の糖分を筋肉などの組織中に取り込ませます。それで糖の利用が進めばいいのですが、余ってしまえば身についてしまいます。つまり体重増加です。糖尿病治療薬はほとんどがインスリンを増やす働きがあるため、血糖は下がるのですが太ってしまいます。これでは治療の意味がありません。もう一つ困るのが、インスリンは成長ホルモンのような働きをします。がん細胞もインスリンで大きく育ってしまいます。糖尿病の人はガンが多いことが知られています。薬によりガンが増えるのかどうかはさだかでないのですが、要注意です。

    以前は膵臓(インスリンを分泌する臓器)を休ませるために早めにインスリン注射を導入して治療する方法が一般的でした。しかし、インスリンでガンが増えるかもしれないという話から最近はインスリン導入をできるだけ遅くするのがトレンドです。かわりにSGLT2阻害剤という画期的な治療薬が出てきて、糖尿病の死亡率を明らかに改善するデータが発表されています。今後の糖尿病治療は大きく変わりそうです。

    クリニック前の公園にて

  • 理想と現実

    仕事のストレスで体調を壊して来院される方が後を絶たちません。皆さん、毎日大変な思いでがんばっています。話を伺っていると、一つの傾向が見えてきます。ストレスの特に多い職場があるのです。それは「看護師(介護士)」「保育士」「学校の先生」などです。いずれも、昔小さい子どもたちが大きくなったらなんになりたい?と聞けばベスト3に入るような職業ばかりです。せっかく頑張って理想の職業になっては見たものの、現実は厳しいものです。

    看護師、保育士、教師という職業は免許が絡んだ職業です。せっかくとった免許がありますから、それ以外の職業はあまり考えないと思います。普通の人なら、ある会社で自分にあわないと思ったら他の会社に移ることは比較的簡単です。しかし、看護師や保育士、教師という職業の人達は「職場」を変わっても「職業」を変えることはめったにありません。自分も免許にとらわれているし、親も自分の子が他の職へ転職することをよく思いません。せっかく頑張って免許を取ったのに、というわけです。

    たまに美容師さんも職場のストレスで来院されますが、他の免許に比べて美容師さんのほうがまだいいような気がします。転職しやすいのと、いざとなったら自分で独立しやすいからではないかと思います。転勤も独立もままならない学校の先生が最も厳しい職業のような気がします。これからの日本は少子高齢化で働き手不足がどんどん進みます。これは、逆に考えると働く人にとっては素晴らしい売り手市場です。免許にとわられず広く視野を持てばどんな仕事だってあります。やる気と体力が全てです。

  • くびのセルフ整体

    一日電子カルテでパソコンを見つめていると、くびの骨に負担がかかります。姿勢は猫背になりやすいし、くびは少し顎が上がった感じで上向きになります。こういう姿勢が長時間続くと、だんだん骨の並びがその姿勢に適した感じになってきます。つまり、猫背でパソコンを見つめる姿勢が一番筋力を使わずに楽な形に変形してくるのです。そうすると、仕事が終わって普段の生活に戻ってもいつもの姿勢の方が楽になっていますから、歩く姿勢やキッチンに立って料理する姿勢は逆にきつくなります。

    こういう状態が続くと肩こりから頭痛になったり、鎮痛剤を使っても治りにくい状態になります。今日私はそんな感じでくびの調子が悪いなーと感じていました。日頃患者さんには鍼治療などをしている身ですからこういう時はなんとか自力で治さないといけません。首の骨を後ろから前へじっくり力を込めて押しました。頭はくびを押す力と反対にうしろへ引きます。そうこうしているうちに、首の骨がコキッとなって、一気に軽くなりました。

    これこそセルフ整体です。整体に行くと首の骨をゴキッと入れられます。これはとても恐怖感があり、苦手ですが、自力でするのであれば怖くありません。ゆっくり力を込めて首の骨を矯正します。一旦うまくいくと、ものすごくくびが軽くなります。肩こり、首コリにはセルフ整体です。

  • 産婦人科漢方

    産婦人科のドクターの集まりで漢方の勉強会があります。今日はその会に呼ばれたので、1時間の講演をしました。テーマは不定愁訴の漢方治療です。不定愁訴というのは、訴えが多彩で治療に難渋する病態です。更年期に多いので、婦人科の先生がいちばん困っているものです。

    頭痛、肩こり、めまい、吐き気、喉のつまり、などいろいろな症状が出てきます。聞けば聞くだけ症状が増えていきます。こういう場合、整形、耳鼻科、消化器内科、脳外科などなどいろいろな専門がオーバーラップし、専門の診療科ではその症状の一つずつは見れるのですが、全部まとめて一人の患者さんの訴えとなるとお手上げです。

    漢方を使うと、気の不足とか、気の巡りが悪い、血の不足など漢方独特の診察で処方を決めていきます。訴えが10個位あったとしても、気血水で考えれば2つか3つのカテゴリーに分類できます。その結果、漢方処方や西洋薬を組み合わせることで治療の方針が立ちます。怖がらずに、一つ一つの訴えを根気よく治療しましょうと言う内容のお話をしてきました。

  • 患者さんにシンクロして考える

    しばらく暇な日が続いていましたが、今日は朝から全く休む間もないほど大勢の患者さんに来ていただきました。午前中は待ち時間が長くなり、ご迷惑をおかけしました。定期処方を取りに来ただけという方にはとくに申し訳ないと思っています。途中、日赤に紹介しないといけないような患者さんがいると、さすがに30分位はかかってしまいます。重症患者さんはゆっくりしていられませんので、どうぞご了承下さい。また、漢方の相談や心療内科の新患では結構考える時間が必要です。パッと見てぱっと処方が決まる、というわけではありません。じっくり話を聞いて、いくつもの治療方法を考え、最もその患者さんに適していると思う処方に決定するまで、ある程度時間がかかります。血圧が高い人に血圧の薬を出すのと違い、簡単ではないのです。

    頭がいたいというだけでも、どんなときにどんなふうに痛いのか、その痛みを起こしている原因はストレスか、肩こりか、その他何かないか、根掘り葉掘り聞き出します。聞いているうちにだんだん自分が患者さんにシンクロしてきます。すると、患者さんのことでなく自分を治すみたいな感覚で必要な薬が頭に浮かんできます。鎮痛剤でいくか、抗うつ薬でいくか、漢方にするか。漢方の中でも、柴胡を使うか、葛根を使うかなどだんだんアイディアが決まってきます。

    そこまで情報を聞き出せた時は治療もうまくいきます。ほとんど自分が患者さんの困った症状を実体験する感覚で処方を決めるのです。逆に、情報が少なすぎるとこちらもきちんと患者さんの悩みを把握できずぼんやりした処方になってしまいます。このように、私は初診の問診に時間をかけていますので、ご協力をお願いします。

    白川