むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 何もせず見守る医療というのもあり

    最近は医療施設と介護施設の連携を強化するように国が勧めています。入院患者を減らし、できるだけ在宅や高齢者施設で過ごしてもらいたいのが国の本音で、そのためにはいろいろ持病がある高齢者をなにかあるたびに病院に入院させないで在宅で見てもらえる体制を日頃から作っておくようにということです。在宅と入院で国の財政にかかる負担がどのくらい違うかというと、入院すれば必ずCTやMRIその他全身くまなく検査します。高齢者を検査すれば、今まで見過ごされていた小さなガンなどが見つかることは多々あります。結局放っておいてもたいした問題でなくても、見つけてしまったら、放置するのも心配なので手術したり、いろんな治療をします。その後、限度額いっぱいリハビリしてから施設に返すので、かかる医療費は相当な額になります。一方、在宅医療ではそのような濃厚医療はできないので、お金はあまりかかりません。

    わたしが見て感じるのは、高齢になって無駄な検査をたくさんして、病気を見つけるのは本人にとって全然幸せではないのではないかということです。とりあえず、見つかった病気は「早く見つかってよかったですね」ということになりますが、果たしてそれが本当に良かったのかは疑問なところが大きいです。

    最近、当院近くにグループホームがオープンして、当院に連携施設になってほしいと頼まれたのでお引き受けしました。先日入居された一人が、これまで病院にかかったり、診察してもらうたびに薬が増えて、その結果どんどん体調が悪くなるので、何もしないでほしい、というご希望でした。ほとんどのドクターは標準治療(ガイドライン通り)をしたがり、それを外れることをとても嫌います。しかし、高齢者医療のことを真剣に考えると、何もせず見守るのが一番幸せにつながるというのは一理あると思い、その方もわたしが担当することにしました。診察をしても薬を出さず見守るというのは、医者にとってはストレスですが、患者さん(やその家族)の希望であれば、できるだけ希望に添えるようにしたいと思ったわけです。