むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • フクロウ型の人を治療する

    フクロウのような人がいます。いわゆる宵っ張りです。夜遅くまで起きていて朝起きられない。会社では眠くなる。学生なら朝遅刻してしまったり、ひどいときは不登校になってしまう。こういう人を漢方の世界でフクロウ型と呼びます。山本漢方理論で有名な体質です。自律神経失調タイプや朝から低血圧でエンジンがかからない人はフクロウ型に分類されます。

    こういう人は精神科でカウンセリングを受けてもなかなか改善しません。睡眠薬をうまく使えば夜眠れるようになるので、朝からきちんと起きられれば社会生活は問題ないレベルにすることはできます。しかし、患者さんが小中学生で眠剤を使いにくかったり、睡眠薬をどうしても飲みたくないと言われれば、西洋医学的にはお手上げです。漢方の出番です。

    単に朝起きられない、夜はダラダラと携帯などで時間を潰して起きている、という人には苓桂朮甘湯がよく効きます。それに加えて、日中だるい、めまいふらつきがある、という場合、半夏白朮天麻湯が有効です。場合によってはこの2つの処方を合わせて使います。学生で学校に行けないとか遅刻を繰り返すというときはぜひ試す価値があります。その際、プロテイン(運動選手が飲むのと同じ)を併用すると、更に効果的です。

     

  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という変な名前の心臓病があります。国際的にも英語でTakotsuboと呼ばれますが、蛸壺がなにかしらない外国人向けにカテコラミン心筋症という学術的な別名もあります。心筋梗塞そっくりの心臓発作を起こします。心不全になって集中治療室に入院することもしばしばです。心電図も心筋梗塞そっくりなので、心臓で起こっている電気生理学的な変化は心筋梗塞と似たような感じなのだろうと思いますが、唯一違うのが冠動脈造影の結果です。冠動脈は心臓を取り巻く血管で、心筋に酸素を送っている大事な血管です。心筋梗塞ではこの冠動脈が血栓で詰まってしまい、心筋にダメージを与えます。しかし、たこつぼ心筋症は冠動脈の詰まったところがないのが特徴です。

    なぜたこつぼと呼ばれるのか。これは、心エコーの所見からネーミングされたものです。心臓の左心室は血液を送り出すポンプの働きをしているため、1分間に60回程度収縮します。心筋がまんべんなく縮むのが正常ですが、たこつぼ心筋症では心臓の心尖部(下の方)の収縮が悪く上の方だけが縮んでくびれたようになります。縮んでいない下のほうが逆に膨れて見えるため、ちょうど蛸壺のように見えるのです。

    たこつぼ心筋症が起こるのは、とても大きな興奮、ショックな出来事などがきっかけとなると言われています。宝くじにあたったとか、大切な人が急に亡くなったとか、そういうときにあれよあれよと言う間に心不全となり、時には命にかかわるほどのショック状態となることがあります。ただ、心筋はびっくりして動きが悪くなっただけなので、急性期を乗り切ればもとに戻ります。最近当院でもこの症例を経験したのでご紹介しました。

     

  • 3段論法には気をつけよう

    たけしの健康番組ネタです。微小脳出血が結構見つかるという話です。微小脳出血は今日の番組では歯周病菌が脳に飛んで炎症を起こすことで血管が破綻して出血を起こすと言っていました。以前から歯周病菌は歯茎から血管内に入り、いろんな病気を引き起こすと言われていました。微小脳出血もその一つのようです。番組では口腔内の細菌数を減らす方法を紹介していました。口腔ストレッチという口の体操です。あいうべ体操とだいたい同じような感じでした。しかし、ここで番組が提示した三段論法は信じてはいけません。微小脳出血は歯周病菌と関連している。口腔ストレッチをすると歯周病菌の数が減少する。それでは<口腔ストレッチをすると微小脳出血が減る>という理論は正しいでしょうか?それは誰も証明していないので、頭の中で3段論法的に正しくても医学的にはまだなんとも言えません。私は、口腔ストレッチくらいでは脳出血は減らせないのではないかと思います。ただ、口腔ストレッチはお金がかるわけでもないので、やって見る価値はあります。

    医学界にはこのようなあやしい論法がたくさんあります。たとえば心筋梗塞はコレステロールが高い人のほうがかかりやすい(事実)。そして、スタチンという薬剤でコレステロールを下げると心筋梗塞が減る(事実)。この2つから、<コレステロールを下げれば心筋梗塞が減る>と言うのは正しいのかという話。実は、ゼチーアというコレステロールを下げる薬剤はコレステロールを下げても心筋梗塞を減らせなかった(最近やっと減らせるという論文も出ましたが・・)事実があります。結局、アメリカ心臓学会は高コレステロールの治療中はコレステロールの値は測る必要ない、とにかくスタチンを飲ませておけ、と言いました。結局、心筋梗塞を減らしたのはコレステロールを減らしたからではなく、スタチンの作用だった可能性があるのです。

    結局、スタチンには活性酸素を減らしたりプラーク(動脈硬化病変)を安定化させることで心筋梗塞を減らしているようです。血液中のコレステロールの値はスタチンが効いているかどうかの参考にはなります。ちょっと難しい話を書きましたが、TVで見る三段論法的なストーリーはまゆつばものが多いと思ったほうが良いと思います。

     

  • 脱水に注意しましょう

    恵みの雨ですね。昨日までの暑さも一段落して、からからに乾燥した空気に湿度が戻りました。植木も喜んでいるようです。ニュースでは先日の北海道の39度の高温で36歳の男性がゴルフ中に熱中症でなくなったということでした。こんなに若くても熱中症でなくなるんだと驚きました。なにか基礎疾患があったのかもしれませんが、それはわかりません。体がまだ暑さに慣れていないというのが問題です。汗をかけないと暑さに負けてしまいます。日頃エアコンの涼しいところで過ごしていると汗をかくことがなく熱中症になりやすいのですが、今の季節では誰でもまだ体が高温に順応できません。私はサウナが好きで、月に1回位ですが、温泉に行ったら何度もサウナで汗を流します。サウナ以外に汗をかく訓練といえばスポーツです。冬の屋外ではあまり汗をかきませんが、ジムのマシンを使えば冬でもどんどん汗をかきます。このようにサウナやジムで汗を流しておけば、大抵の暑さには耐えられると思います。

    血圧の治療薬に利尿剤があります。フルイトランとかナトリックスという名前です。また、利尿薬との合剤でコディオという薬もあります。また、足がむくむという理由で利尿剤を使ってある場合があります。ラシックス(フロセミド)、アルダクトン(スピロノラクトン)、ダイアートといった薬です。こういう利尿剤系の薬剤を飲んでいると年中脱水気味になりますので、夏の暑い時期は脱水に注意が必要です。ただ、勝手に飲むのをやめてはいけません。心不全や腎機能低下などの背景があって利尿剤を使っている場合、薬を勝手にやめると尿が出なくなり、浮腫(むくみ)がひどくなるばかりでなく、息が切れて喘息みたいになることがあります。主治医に相談してから夏場は調節してもらうといいと思います。

    週末の炎天下、ランニングしている中年の人を何度も見かけました。こんな暑い日に走ると汗もいっぱい出て痩せるぞ、と思っているのだったら大間違いです。それは単なる脱水です。後で水を飲めばもとに戻ります。走ったあとのビールが美味いから炎天下走る、というのも危険です。サウナも同じですが、大量の汗をかいて脱水になると血液がどろどろになり脳梗塞や心筋梗塞を起こす場合があります。水分補給は最初からしっかりしておきましょう。また、アルコールは利尿効果があるので脱水をすすめてしまう場合があります。ビールで水分補給はやめておきましょう。

     

  • 柔軟剤で匂いを取るのはどうかと思います

    日曜日は、北海道で39Cとすごい記録が出ました。熊本も暑かったですね。運動会があったところは大変だったことでしょう。私は、暑くなる前にと思って早い時間からクリニックの草取りをしました。道路に面した側に南天がたくさん植えてあるのですが、その間に無数の雑草が生えています。全部取ることはできませんから、伸びて目立つものだけとったら45Lの袋いっぱいでした。また、駐車場の南側に生け垣があるのですが、こちらの方も大変な草でした。2ヶ月ほど前に茂っていた草は枯れてしまって目立たなくなっていたのですが、よーく見たら枯れた草にものすごい量の種がついています。種が飛ばないようにそーっと集めたらまたまた45Lの袋いっぱいになりました。結局、草取りに2時間ほど費やし、顔や腕は日焼けでひりひりします。

    草取りが終わったらすぐシャワーを浴びて、着ていた服は全部洗濯しました。汗だくの服を放置するとひどく臭くなります。おそらく皮脂汚れが酸化するのと雑菌が繁殖するからだと思います。クリニックでは小中学生も来ますが、特に男の子は香りのついた柔軟剤の香りが強烈なお子さんをよく見ます。また、朝から通りすがりの野球部の少年たちはユニフォームを着たまま通学していますが、これまた柔軟剤の強烈な匂いを当たりに撒き散らしています。

    おそらくお母さんはとんでもなく臭う野球のユニフォームや体操服などを香りの強い柔軟剤を大量に入れることで対処しようとしているのでしょう。しかし、香りというのはほんの僅かで脳から自律神経に働きます。柔軟剤の強烈な匂いは着ている本人に悪影響が出ると思います。皮脂汚れはアタックなどの通常の洗剤でとれます。あとは雑菌ですが、ハイターやうず潮などの塩素系漂白剤が殺菌効果があります。酸素系漂白剤ではあまり効果がありません。塩素系の漂白剤は洗剤をいれるところに入れます。洋服と一緒に重曹をたっぷり入れるとさらに消臭効果が増します。そして、洗い上がりに塩素臭が残らないように柔軟剤を入れるところにはクエン酸を少々入れてみてください。無臭の仕上がりになります。部屋干しで臭ってしまうタオルなどもこの方法で匂いが取れます。

    麦の収穫も終わり、今から田植えの準備が始まります