むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 腰痛治療のプロは問診が命、だそうです

    NHKのプロフェショナルという番組があります。その道の達人を紹介したものです。先日、腰痛治療の達人が紹介されていました。確か徳島大学の先生だったと思います。腰痛の治療ですから、もちろんMRIも撮りますが最も大切にしているのは問診だそうです。どうして痛くなったのか、どのようなときに痛むか、どんな姿勢で痛みはひどくなるか、などあらゆる角度から質問しながら痛みの原因を探ります。そして、問診の結果どのあたりにどういう病変がありそうだとあたりをつけてから最後にMRIを確認するそうです。

    そうすると、よく患者さんのことを知らずにMRIだけ見て診断した場合とは全然違う病変が見つかるようです。MRIのいいところは、ものすごく病変がよく映ることです。しかし、その反面、見つけた病変(例えば脊椎の変形で狭いところがあるという所見)が患者さんの訴えている症状の原因かといえば、必ずしもそうでない場合が多いのです。したがって、腰痛のため手術をしたけど結局治らなかったという人が半分(50%)くらいの割合でおられるのはそのためです。医学用語で偽陽性といいます。陽性所見が間違いだったという意味です。患者さんは、痛みの原因がMRIをとってわかってよかったと思うかもしれませんが、その狭いところが本当に悪さしているかは、かなり慎重に判断しないといけません。

    当院では鍼治療もしていますが、腰痛に鍼はよく効きます。しかし、鍼をしたからと言ってMRI所見が変わることはないのです。狭いところは狭いままです。それなのに痛みが取れるということは、狭く見えていいるところが症状と関係なかったということです。このように、MRIという素晴らしい検査器具を手にした今でさえ、問診が最も大切なのです。

  • 医療はビジネスか?

    金曜の夕方は森都総合病院の連携の会に参加しました。森都総合病院は以前はNTT西日本九州病院と呼んでいました。その前は逓信病院でした。NTTから完全に独立して立派な民間病院へと成長しました。以前はお役所的で採算度外視していたところがありましたが、今ではきちんと医療に貢献しつつ赤字にならないよう経営努力もされており、立派なものです。それにしても、公的な施設はどうして赤字垂れ流しで許されるのでしょうか。まっとうな仕事をして赤字になるようなら、医療制度が悪いわけですが、実際はおそらく経営努力が足りないのだろうと思います。

    医療は実際やってみると本当にビジネスとは縁遠い世界です。値段設定は厚生局が定めた公定価格です。勝手に割り引いたり値段を変えてはいけません。しかも、保険証を使って国や企業の保険と個人負担を分担するため、社保や国保のルールを守らなくては1円も入ってきません。広告にも厳格なルールがあり、うかつにCMや新聞などに好き勝手な広告を出すこともできません。すべて許認可制度の下規制されています。

    そういう中で、今のところ唯一といっていいほど自由にできているのが、ブログです。ブログは広告と違って不特定多数の人の目に触れる仕組みではなく、読みたい人が自分の意志でアクセスして読んでもらっているので、比較的自由度が高くなっています。それでも、誇大な表現や誤解を招くような表現は許されません。当然ですが、医療という世界は頑張ればなんとか赤字は出ないがたいした利益も出ないという共産的な世界なのです。

  • 雨の日頭痛

    テレビのCMを見ていたら雨の日頭痛にロキソニンSと言っていました。そうです。雨の日や雨が降りそうになる前に頭痛がする人はたくさんいます。若い女性では生理前に頭痛がするというのも似た病態です。たいていは、CMの通りロキソニンやイブなど鎮痛剤を飲んで過ごすことでしょう。しかし、梅雨の時期は雨が続くため頭痛持ちの人はきつい季節です。鎮痛剤を連用すると胃も悪くなるし、腎臓にもよくありません。できるだけ鎮痛剤を使わない工夫が必要です。

    おそらくこのような頭痛持ちの人は気圧の変化や湿度の変化を敏感に感じ取る体質です。体質ですから、簡単にはなおりません。鎮痛剤で症状だけとってもきりがありませんから、漢方で体質改善をすることをお勧めします。まず、単純な雨の日頭痛には五苓散が効きます。冷えて痛む場合は呉茱萸湯、生理前にも頭痛がする場合当帰芍薬散などがファーストチョイスとなります。飲んでいるうちに頭痛の回数が減ってくるので、鎮痛剤を減らすことができます。

    厄介なのは薬物乱用性頭痛です。鎮痛剤の使い過ぎ(ほぼ毎日飲むような人)では鎮痛剤を飲めば痛みが取れるのですが、薬が切れてくると痛みが出ます。そこで次の薬を飲まないとやっていられないという悪循環に陥ります。このような薬物乱用頭痛は抑肝散がよく効きます。抑肝散を朝晩飲んでもらうと、気が付けば鎮痛剤をあまりいらなくなったといわれます。西洋医学的には、ひたすら鎮痛剤を我慢するようにと言いますが、それはつらいことです。抑肝散があれば、そのような我慢をしなくても自然と薬物乱用から解放されます。

  • COPDは禁煙が絶対必要

    熊本市民病院は地震で大きく被災して現在建て替え中です。新しい病院は健軍自衛隊の横の敷地で当院からはかなり近くなります。毎日新病院前を通るのですが、かなり出来上がった印象でした。そんな中、今日は夕方から市民病院主催の勉強会があり、もうすぐ開院の案内がありました。来週には建物の引き渡しがあるそうです。それから検査機器を入れたり備品を整えたり大忙しです。当院も規模は違いますが建物の引き渡しから開院までの1か月ちょっとは怒涛のような忙しさでした。スタッフと患者さんの動線の確認、受付から会計までのシミュレーションなど図面上で考えていたのと現実出来上がってみてやってみるのではずいぶん違います。場合によっては建設会社に手直しを頼まないといけないこともあります。また、保険所や厚生局などの許認可関連が神経を使います。市民病院は同じ東区でとても近い位置にあるため連携の面からも期待が大きいです。いい病院になってもらいたいです。

    講演会で市民病院の紹介の次に熊大の呼吸器内科の教授に就任された坂上先生の講演がありました。この教授は私より5つ以上若く、この先熊大で20年以上教室を運営される予定です。頑張ってもらいたいものです。講演の内容は「長びく咳」についての話でした。クリニックを開業していると咳が止まらないという訴えの患者さんは非常に多いです。そして、咳が止まらないために肋骨にひびが入ってしまうような人もおられます。何とか咳を止めてあげたいのですが、なかには困難を極める場合があります。今日の勉強でさらに治療成績が上がることを期待します。

    咳や息切れがひどい場合、COPDという病気かもしれません。肺気腫とも呼びます。今日の講演では、たばこをやめずにCOPDの治療はできないと断言されていました。大学病院では禁煙しなければ治療してもらえないみたいでした。COPDでは在宅酸素療法となる場合もあり、酸素ボンベを引っ張りながらタバコを吸うと火災の危険性もあるので絶対禁煙すべきです。

     

     

     

  • いよいよ梅雨入り

    例年より3週間遅れの梅雨入りとなりそうです。おかげで、素晴らしく快適な6月を過ごすことができました。湿度がない6月、夕方の気持ちいい毎日は散歩などにもってこいでした。農家の皆さんは田植えができずに困っておられたことと思います。ところで、先日NHKニュースでやっていたネタですが、とても大事なのでここに書いておこうと思います。梅雨の時期にバックや靴などが濡れないように防水スプレーをする人も多いと思います。防水スプレーは便利ですが、使い方に注意が必要です。それは、絶対に吸い込まないことです。間違っても室内で使わないように。風通しのいい外で使ってください。ベランダなどでもいいかもしれませんが、風向きによっては自分のほうへ飛んできます。これを吸ってしまったら、たいへんです。靴も、玄関のように狭い空間でスプレーしないでください。

    私は大学院からアメリカ留学中まで合計10年以上急性呼吸不全の治療を研究していました。もっぱら敗血症や重症熱傷などに伴う呼吸不全が研究テーマでしたが、防水スプレーの吸入による呼吸不全は命にかかわることがあります。肺の表面がテフロン加工されて酸素が取り込めなくなるようなものです。ご注意ください。

    吸い込んで体を壊すものといえば、たばこが筆頭格です。来月から公共の施設(役所、学校、病院など)では全面禁煙となります。法律ですから処罰の対象となります。駐車場も敷地内すべて禁煙となります。ご注意ください。最近はレストランなどでも多くが分煙ではなく全面禁煙となりつつあります。喫煙する方は、この際頑張って禁煙に取り組まれてはいかがでしょうか。

    ガクアジサイ、大好きな花です