むらかみ内科クリニック

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  • たこつぼ心筋症

    たこつぼ心筋症という変な名前の心臓病があります。国際的にも英語でTakotsuboと呼ばれますが、蛸壺がなにかしらない外国人向けにカテコラミン心筋症という学術的な別名もあります。心筋梗塞そっくりの心臓発作を起こします。心不全になって集中治療室に入院することもしばしばです。心電図も心筋梗塞そっくりなので、心臓で起こっている電気生理学的な変化は心筋梗塞と似たような感じなのだろうと思いますが、唯一違うのが冠動脈造影の結果です。冠動脈は心臓を取り巻く血管で、心筋に酸素を送っている大事な血管です。心筋梗塞ではこの冠動脈が血栓で詰まってしまい、心筋にダメージを与えます。しかし、たこつぼ心筋症は冠動脈の詰まったところがないのが特徴です。

    なぜたこつぼと呼ばれるのか。これは、心エコーの所見からネーミングされたものです。心臓の左心室は血液を送り出すポンプの働きをしているため、1分間に60回程度収縮します。心筋がまんべんなく縮むのが正常ですが、たこつぼ心筋症では心臓の心尖部(下の方)の収縮が悪く上の方だけが縮んでくびれたようになります。縮んでいない下のほうが逆に膨れて見えるため、ちょうど蛸壺のように見えるのです。

    たこつぼ心筋症が起こるのは、とても大きな興奮、ショックな出来事などがきっかけとなると言われています。宝くじにあたったとか、大切な人が急に亡くなったとか、そういうときにあれよあれよと言う間に心不全となり、時には命にかかわるほどのショック状態となることがあります。ただ、心筋はびっくりして動きが悪くなっただけなので、急性期を乗り切ればもとに戻ります。最近当院でもこの症例を経験したのでご紹介しました。