むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 熊本城マラソン頑張れ!

    明日2月16日は熊本城マラソンですね。今日(15日)は「東方医学研修会」という漢方の勉強会に参加するため街に出ましたが、すごい人出でした。年末の忘年会シーズンを上回る混雑ぶりで、マラソン前日の賑わいを感じました。ただ、今の時点ではあいにく雨が降っています。明日の朝までに雨がやんでくれることを願っています。雨の中のフルマラソンは過酷です。私自身、レインコートを着て走った経験がありますが、雨に濡れなくても汗だくになり、結局全身びしょ濡れになってしまいます。明日私は地域医療センターで内科の1次救急外来を担当します。低体温や足がつって動けなくなるランナーが運ばれてくるかもしれません。朝から待機していますので、何かあれば対応します。

    さて、今日の東方医学研修会の話に移りたいと思います。今回は佐賀から栗山先生をお招きし、心身医療についての講演をいただきました。漢方に関する話題はもちろん興味深かったのですが、それ以上に心身医学の話が示唆に富んでいて、私にとっては宝石箱のような講演でした。

    特に印象的だったのは、精神科疾患、特に発達障害のような患者さんに対する考え方です。栗山先生は「治せないけれど、楽に生きられるようにすることはできる」とおっしゃいました。その言葉にハッとさせられました。最近の医療は「治るか治らないか」に注目しがちで、患者さんが日々の生活をいかに楽に、快適に過ごせるかという視点が軽視されがちです。例えば、がん患者さんの場合、最近では「治らなくても、共存しながら元気にやれているので大丈夫です」と言われることが増えてきました。それでいいんだと思います。

    別の例を挙げると、不眠症の患者さんは「睡眠薬を使えば眠れるけど、いつまで薬を飲み続けないといけないんだろう?薬なしで眠れるようになりたい」とおっしゃいます。糖尿病や高血圧も同じで、多くの場合、薬は長期間にわたって必要です。しかし、薬を使うことで血圧や血糖値が安定し、脳卒中や心筋梗塞などの深刻なトラブルを防ぎ、快適な生活を維持できるのです。

    睡眠に関しては、栗山先生が興味深いデータを紹介されました。睡眠薬を飲んでよく眠る人と、薬を飲まずに不眠に悩む人を比較すると、前者の方が認知症の発症率が低いそうです。生活の質(QOL)も、当然ながらよく眠れる人の方が高いです。それなのに、多くの患者さんは薬を飲み続けることに抵抗を示します。日中に眠くてボーっとするより、睡眠薬を使ってでもしっかり眠り、日中は元気に活動する方が、結果的に充実した人生を送れると思うのですが……皆さんはどう思いますか?

  • 痛みと漢方

    「痛みと漢方を学ぶ会」という勉強会が毎年この時期に開催されます。今回は第8回でした。私はほぼ最初からこの会に参加して、痛みを漢方でいかに治療するかというとてもマニアックな会で勉強しています。内容は痛みに特化しているため、演者の先生も麻酔科出身の方が多く、とても専門的な話を聞くことができます。今年のテーマは「血虚にまるわる痛みの漢方治療」ということで、難治性の痛みに血虚がいかに関与しているかを紐解く勉強会でした。

    私が痛みの治療に血虚を意識するのは、帯状疱疹後神経痛とか、坐骨神経痛で足の裏に何か踏みつけたような違和感があるとか言われる時です。血虚治療の基本処方である四物湯を使います。もちろんこれだけでは治らないのですが、他の処方に合わせることで治療効果がアップします。血虚は目に見えて存在する病態ではなく、そこにあると思ってみないとわかりません。いわば、心の目でみて診断する感じです。したがって、漢方の初学者にこういう所見があれば血虚の存在を疑うと説明するのが難しいです。

    難治性の疼痛というのは漢方診療をしているとよく相談されるため、私たちも常に知識をアップデートしておかないといけません。今日は血虚だけでなく、痰湿が影響している話も聞きました。このあたりをうまく理解して治療に繋げることができれば、痛みから救われる患者さんも増えることと思います。私も、今日学んだことをしっかり落とし込んで、来週からの診療に役立てたいと思います。

  • Office365が大幅値上げ

    ネットでニュースを見ていたところ、マイクロソフトのオフィス365が大幅値上げされるとのこと。これからは毎年、何万円もの使用料を支払う必要が出てきそうです。サブスク型にはこうしたリスクがあるため、当院ではサブスク型ではなく買取型のオフィスを全パソコンに導入しています。日常業務ではGoogleスプレッドシートを使うため、エクセルを使用する機会はほとんどありません。ただし、パワーポイントだけは他のソフトに置き換えるのが難しいのが現状です。特に学会発表では、PowerPoint形式がほぼ標準となっているため、他のソフトでは互換性の問題でスライドが崩れてしまうリスクがあります。このような事情もあり、パワーポイントだけは依然として必要不可欠なツールだと感じています。

    一方で、WPSオフィスという格安ソフトも存在しています。私は自宅で複数台のパソコンを使用しているため、コストパフォーマンスの良いWPSを導入していますが、ほとんど互換性に問題はありません。ただし、厚労省から送られてくるエクセル調査ファイルなど、複雑な計算式が埋め込まれたものにどの程度対応できるかは試したことがないため、引き続き検討が必要だと感じています。また、厚労省のファイルがMacで開くとエラーになるケースもあり、このような問題は改善されるべきだと思います。

    話題は変わりますが、今日は福岡で漢方の講演が予定されていました。あちらに出向く予定だったのですが、急な都合で自宅からWEB配信での講演に変更することになりました。運営を担当されている方々には急なお願いをしてしまい申し訳なかったですが、ZOOMのようなツールの発達により、出張せずに仕事ができる利便性を改めて実感しました。

  • コロナ後遺症の治療

    明日は福岡で漢方の講演をする予定です。タイトルは「Long COVIDの中西医結合治療」というものです。Long COVIDとは、いわゆるコロナ後遺症のことです。当院はコロナが5類になった時から積極的にコロナ後遺症の患者さんの治療に取り組んでいます。

    多くの患者さんがコロナ感染後に倦怠感、長引く咳、めまい、動悸などに悩まされていました。かかりつけ医で相談しても対症療法的な対応や、場合によっては「治療法がないから経過観察」とされることが一般的でした。厚労省のコロナ後遺症治療ガイドラインでも、検査で異常がない場合には経過観察や専門医への紹介が推奨されていますが、その専門医が必ずしもコロナ後遺症に詳しいわけではなく、多くの患者さんがたらい回しにされている状況でした。

    私は漢方で治療すれば多くの症状が改善できるという手応えを得たため、当院のホームページや保健所を通じて「コロナ後遺症外来を実施します」と宣言しました。

    その結果、これまでにおそらく1,000名を超える患者さんが来院されました。漢方治療の結果、8割以上の患者さんが改善を見せましたが、やはりどんなに工夫しても改善しないケースも少なからずあります。しかし、初診時に車椅子で寝たきりに近かった患者さんが動けるようになり、仕事に復帰できた例もあり、治療に取り組んできた甲斐を感じています。今日は、匂いが分からないという患者さんが、漢方治療を続けた結果、8か月かけて匂いを正常に感じられるようになったという報告を受け、非常に嬉しい気持ちになりました。

    明日の講演でお話しする「中西医結合」というのは、中医学(漢方)と西洋医学の併用療法を指します。一方に偏ることなく、効果が期待できる治療法を洋の東西を問わず取り入れるアプローチです。

    現在では、多くの患者さんを診療して治療経験を積んだ結果、効率的に改善を目指す治療ができるようになりました。しかし、当初は試行錯誤の連続でした。過去のカルテを見返しながらスライドを作成していると、当時は非常に悩みながら治療を進めていたことを思い出します。

    医療は理論だけでなく、実際の臨床経験を通じて新たな治療法を模索することが重要だと改めて実感しています。コロナ後遺症という未知の病態に対する治療は遠回りも多かったですが、その経験があったからこそ現在の自分があると感じています。

    https://www.youtube.com/watch?v=M7z-PLe_RNU

    ノーランズのリンダ・ノーランがなくなったとの訃報を聞き、とても残念です。この曲を久しぶりに聞いたら青春時代がまぶたに浮かびました

  • 体にいいこと、わるいこと

    日曜日はクリニックのワックス清掃があったため、夕方まで院内に待機していました。2ヶ月ごとに清掃が入るので、毎回この日は帳簿整理にあてています。ちょうど先月開催した東洋医学会の会計報告書もまとめる必要があったので、仕上げの作業をすることができました。あとはコピーを取って本部に送るだけです。

    今回の学会は、ほとんど私の個人的なパソコンやクリニックの備品を活用した「手作りの学会」だったため、驚くほど費用を抑えることができました。しかし、困ったことに予算がだいぶ余ってしまい、その処理方法に頭を悩ませています。このまま決算を学会に報告すると、本部に全額吸収される可能性があります。できれば熊本の漢方界の発展に役立つ形で活用できないかと考えていますが、今さら適切な使い道を提案するのも難しい状況です。

    会計の作業を進めながら、WEB講演会にも参加して勉強しました。その中で特に印象に残ったのは、体を老化させる要因として「酸化」「糖化」「アルデヒド化」の3つが挙げられていたことです。

    体を老化させ、病気を引き起こす3つの要因
    1. 酸化
    酸化LDL(酸化したコレステロール)が動脈硬化を引き起こすことが知られています。興味深いことに、酸化する前のLDLは体にとって重要な物質であり、問題なのは「酸化すること」です。この現象はよく「体が錆びる」と例えられます。
    対策としては、抗酸化物質を多く含む食品(緑黄色野菜、魚油、アマニ油など)を摂取することが有効とされています。

    2. 糖化
    糖化は、過剰な糖質(高血糖)が体内のタンパク質と結合し、タンパク質を変性させる現象です。この影響は老化や病気の進行につながります。料理では、食品を高温で焼いたり揚げたりすると糖化が進みます。これが、焼き目や香ばしさを伴う美味しさの元になるため、「美味しいものほど体に危険」と言われる理由です。
    対策としては、血糖値の急上昇を抑える食事法(低糖質食、玄米菜食、高タンパク食など)が推奨されています。

    3. アルデヒド化
    アルデヒドは、体の蛋白質や脂質に結合し、これらを変性させる物質です。アルデヒドはお酒の代謝過程で産生されることで知られていますが、タバコの煙にも含まれており、特に電子タバコには添加されている場合があるため注意が必要です。
    対策としては、お酒やタバコを控えることが重要です。

    このように、体を老化させる3つの要因(酸化、糖化、アルデヒド化)は、健康管理の上で見逃せないポイントです。対策として摂るべき食材、避けるべき食材としてあげたものは、どれもすでに知られていることですが、科学的背景が明らかになってきたことで、より説得力を感じました。