むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 適切な薬を適切に使うことの大切さ

    秋になり、血圧が上がる人が増えてきました。冬には若干降圧剤を強化する場合が多くなります。薬には強さと半減期の2つを考えて処方します。どのくらい血圧を下げたいのか、その作用を何時間ぐらい効かせたいかでその患者さんに必要な薬が決まります。血圧に関して言えば、多くの場合切れ目なく丸一日ゆっくり効いたほうがいいので、半減期の長い薬を使います。アムロジン、ミカルディス(テルミサルタン)、ミカムロといった薬がそれに相当します。

    睡眠薬の場合も同じです。どのくらいの強さにするか、何時間ぐらい効かせるかで薬が決まってきます。寝付きが悪い人、中途覚醒する人、朝早く目が冷めてしまう人など不眠にもいろんなタイプがあるのでそれに応じた薬が必要となります。最近は、癖になりにくい睡眠薬なども出てきていますが、その薬を使って強さや持続時間が自在に調節できるわけではありませんので、みんなにその薬があうとは限りません。自分の睡眠の状態に一番あった薬を使うのが生活の質を上げる意味で大切だと思います。

    糖尿病に関しては、また別の考え方があります。血糖を下げる薬はいくつもありますが、血糖やヘモグロビンA1cだけを下げても仕方ないということが最近明らかになってきました。数字を下げるだけならどの薬でもいいのですが、糖尿病の場合、心疾患、腎臓その他の合併症をいかに減らすかが大切です。実は血糖をただ下げてもこれら合併症はなかなか下がらないのです。しかし、SGLT2阻害剤をいう薬を使うと合併症がかなり減らせることがわかってきました。したがって、血糖やA1cの数値を下げればいいというわけではなく、どの薬を使って下げるかが重要なのです。

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  • 非接触型体温計の原理と限界

    最近はどこへ行っても体温を測られます。とても不愉快です。あんなのでコロナの感染拡大を抑えられるはずありません。コロナは無症状の人が知らないうちに人に移すことが多いのです。熱があるかどうかは関係ないと思います。ビニールカーテンやフェイスシールドほど滑稽なことはないですが、入り口で熱を測っている飲食店にはあまり行きたくありません。

    非接触型体温計でピピッと測るのは便利ですが、全然正しい体温ではありません。医学的にはあの体温は信用しません。単なる参考値です。体温はちゃんとした体温計を脇など体の深部に近いところで何分かかけて計らないと正しくありません。本当の体温は口の中とかお尻に体温計を入れて測ります。非接触型では小児用で耳から鼓膜温を測るタイプが有りました。鼓膜は深部体温に近いので割と正確だと思います。

    物理的に表面温度を正確に測ることは何ら難しくありません。おでこの温度を正確に測ってもそれが正確な体温というわけではありません。おでこは外気にさらされており、外の暑い寒いとか汗の有無で温度が変わるからです。非接触型体温計のマニュアルにも、体温を測る場所と同じ環境に30分以上いて落ちついてから測ることと書いてあります。私は、今の非接触型体温計が普及し始めた15年ほど前に田迎の東病院につとめており、便利なので外来で導入しようと考えたのですが、脇で測る体温と非接触型の誤差を何百例とデータを取って、使えるかどうかを検討したことがあります。結果は、外から入ってきてすぐの外来患者さんの体温はあの非接触型ではでたらめすぎて測れないという結論でした。一方、入院患者さんは同じ環境内にいるので割ときちんと測れることがわかりました。

    繰り返しますが、外から建物に入ってすぐに測れば無茶苦茶な温度が出ます。あの体温計の原理を考えると、おそらく室温(X1)とおでこの体表面温度(X2)を測定することで、実際の体温(Y)を類推する計算式が入っていると考えられます。したがって、温度計がおでこから3センチ離して測定すること、と書いてあれば、そのとおりにしないと計算式に入れる値(X2)がおかしくなります。勝手に、口の中の温度を測ってみたり首の温度を測ってみたりすると、おでこ用に開発された計算式に当てはまりませんから、ぜんぜん違う予測体温(Y)が求められます。いずれにしても、ちゃんと測っていない体温(類推)ですから、こんな数値を信じてコロナ対策をしていますとわかったような顔をしている素人には本当に呆れますが、物理の知識のない人には理解できないでしょう。重要な事なので医療関係者はわかるまで読み返してください。

  • 正面突破がいいとは限らない

    今回の台風は東へそれて熊本への被害はほとんどなく幸いでした。私の歩く通勤路にはイチョウの街路樹があるのですが、今朝はとんでもない量のぎんなんが歩道に落ちていました。匂いもひどく、その上を踏んで歩くのははばかられます。道路の右も左もイチョウがあるので、どちらの歩道を通っても同じです。だれか近所の人が掃除してくれないかな?と思いながらぎんなんを踏み潰さないようにつま先でそっと歩きました。帰り道、同じところを通ったのですが、ふと、自宅に帰るには別にその通りを通らなくても帰れることに気づきました。なーんだ、50mもかわらないけどちょっと回ればこんな苦労しなくてよかったんだ、と気づいて嬉しかったです。

    実は、人生にも同じようなことがあるのです。順調に進んでいるように見えても突然目の前に困難が迫ってくる。正面から突破しようとすると苦難を伴う。日本人の多くは正面突破を好みます。小さい頃から正々堂々とか、逃げるなとか言われてきたからです。しかし、急がば回れということわざもあります。立ち止まって、振り返って、正面突破以外の方法がないか考えるのは正しいことです。目の前に苦難が訪れた時、神様が自分に与えた試練だと思って試練を乗り越えると、また次の試練が来る。実は、神様からのメッセージは、「そっちの道じゃないよ」と教えてくれているかも知れないのです。これは「斎藤一人」さんの講演で聞いた言葉です。

    職場や学校で嫌な目にあって体調を壊して来院される方があとを絶えません。そのような場合、一旦立ち止まって体を休め、そしてどっちに進むべきかをよく考えるようお話します。自分が休むと迷惑をかけるからと言って、我慢して出勤するのは実は誰のためにもなっていません。自分の体調が悪化するだけでなく、職場でもミスをしたり負のオーラを撒き散らして同僚までも巻き込んでしまいます。こんな場合は潔く休んでリフレシュしましょう。

    錦ヶ丘公園

  • 秋のアレルギーシーズン

    秋のアレルギーシーズンです。花粉症や喘息が増えてきました。私の経験では稲刈りが終わってしばらくがシーズンです。窓を開ければ涼しい風が入ってきて気持ちいいですがアレルギー性鼻炎や喘息の原因となる花粉なども入ってきます。悪化する前に対策を取りましょう。喘息の場合はステロイドの吸入が基本です。きちんと使えば効果は間違いありません。もし、吸入しているのに喘息が出る場合、吸い方に問題があるのかもしれません。吸入薬にはいろんな種類があり、吸いやすいものや吸いにくいものもあります。薬のメーカー(ブランド)を変えると喘息が収まる場合もありますので、悩んでいないで専門医に相談することをおすすめします。

    そういう私も今年急に喘息が出てきて時々咳き込みます。自分の胸に聴診器を当てるとヒューと音がして、びっくりしました。あわてて引き出しの中をゴソゴソ探して出てきた五虎湯という漢方を飲んでみたところ、10分ほどで見事に落ち着きました。漢方も軽症にはすごく効きます。

    一方、鼻炎に関していえば、アレルギー性鼻炎にはいろんな薬剤があります。最近はパイロットも飲んでいいと言うお墨付きの眠くならない薬があります。受験生にもおすすめです。鼻炎が慢性化すると副鼻腔炎になることがあります。耳鼻科では抗生剤を長期に出されますが、辛夷清肺湯という漢方は副鼻腔炎によく効きます。私は抗生剤をあまり使わず漢方で治します。また、春の花粉症シーズンにもおすすめしましたが、ビタミンDを5000単位から1万単位(場合によってはそれ以上)を飲むことでが劇的にアレルギー性鼻炎が改善する場合があります。治らずに困っている人は是非お試しください。

    天高く・・健軍川にて

  • トランプ氏もビタミンDを飲んだらしい

    トランプ大統領がコロナに感染したというニュースが出ました。たまたまNHKを見ていたら、すごいことを言っていました。なんと、トランプ大統領は治療薬として「ビタミンDと解熱鎮痛剤を飲んだ」と言っていました。さすが、アメリカのトップはわかっている。私が常日ごろビタミンDをとったほうがいいと言っているのは予防の意味と、もし新コロにかかった際に軽症で済むことがわかっているからです。今回のトランプさんのようにかかってしまったらどうしたらいいのか?これはすでに数ヶ月前からイタリアとフランスで治験が始まっています。ビタミンDの大量投与です。私の知る限り、予防で飲む際には毎日2000から5000単位あるいは1万単位を3日に1回程度でいいと思います。一方、今回のトランプさんのように陽性が発覚した際に慌てて飲むときは20万単位1回投与です。すごい量ですが、一気に体内のビタミンD濃度を上げてやらないといけないので、パルス的に使います。この使い方が有効かどうかは現在臨床治験の結果待ちの段階です。

    当然ですが、感染予防にはビタミンB, CとEも飲んでおくべきです。アメリカ製のサプリが良いと思います。なぜなら日本製は量が少なくて高い。サプリ大国アメリカは非常に厳しい基準をクリアしないと販売できません。日本はそのような規制がないため、嘘みたいに薄い(内容の少ない)ものがたくさんあります。よく内容を読んで理解できないと、お金をドブに捨てるような事になりかねません。私が診察の際にこのようなことを説明しても、国産にこだわる人がいます。その場合、パッケージに書いてある一日量の3倍から10倍飲まないと効きません。

    結局私たち内科医は薬のソムリエみたいな仕事をしているわけですが、どの薬が良いかだけでなく、それをどのくらいの量飲めばいいかが大切なのです。サプリの場合保険が効かないし、当院の場合直接販売はしませんからネットで各自購入していただきます。そこで、患者さんのやる気と理解力とネット通販の経験がないと思うようにいきません。そう考えると、ネットで検索して買い物できる能力というのは現代人にとって必須ですね。

    久木野から根子岳を望む