むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 非接触型体温計の原理と限界

    最近はどこへ行っても体温を測られます。とても不愉快です。あんなのでコロナの感染拡大を抑えられるはずありません。コロナは無症状の人が知らないうちに人に移すことが多いのです。熱があるかどうかは関係ないと思います。ビニールカーテンやフェイスシールドほど滑稽なことはないですが、入り口で熱を測っている飲食店にはあまり行きたくありません。

    非接触型体温計でピピッと測るのは便利ですが、全然正しい体温ではありません。医学的にはあの体温は信用しません。単なる参考値です。体温はちゃんとした体温計を脇など体の深部に近いところで何分かかけて計らないと正しくありません。本当の体温は口の中とかお尻に体温計を入れて測ります。非接触型では小児用で耳から鼓膜温を測るタイプが有りました。鼓膜は深部体温に近いので割と正確だと思います。

    物理的に表面温度を正確に測ることは何ら難しくありません。おでこの温度を正確に測ってもそれが正確な体温というわけではありません。おでこは外気にさらされており、外の暑い寒いとか汗の有無で温度が変わるからです。非接触型体温計のマニュアルにも、体温を測る場所と同じ環境に30分以上いて落ちついてから測ることと書いてあります。私は、今の非接触型体温計が普及し始めた15年ほど前に田迎の東病院につとめており、便利なので外来で導入しようと考えたのですが、脇で測る体温と非接触型の誤差を何百例とデータを取って、使えるかどうかを検討したことがあります。結果は、外から入ってきてすぐの外来患者さんの体温はあの非接触型ではでたらめすぎて測れないという結論でした。一方、入院患者さんは同じ環境内にいるので割ときちんと測れることがわかりました。

    繰り返しますが、外から建物に入ってすぐに測れば無茶苦茶な温度が出ます。あの体温計の原理を考えると、おそらく室温(X1)とおでこの体表面温度(X2)を測定することで、実際の体温(Y)を類推する計算式が入っていると考えられます。したがって、温度計がおでこから3センチ離して測定すること、と書いてあれば、そのとおりにしないと計算式に入れる値(X2)がおかしくなります。勝手に、口の中の温度を測ってみたり首の温度を測ってみたりすると、おでこ用に開発された計算式に当てはまりませんから、ぜんぜん違う予測体温(Y)が求められます。いずれにしても、ちゃんと測っていない体温(類推)ですから、こんな数値を信じてコロナ対策をしていますとわかったような顔をしている素人には本当に呆れますが、物理の知識のない人には理解できないでしょう。重要な事なので医療関係者はわかるまで読み返してください。