むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 東方医学研修会

    今週も結局土曜日までずっと忙しい毎日でした。カルテの山を見るとどうしても気持ちがあせって、一人ひとりゆっくりお話を聞いたりする事ができず、大変心苦しく思っています。まるでコンビニみたいなクリニックだなと思ったりしますが、それだけ皆さんに求められている証拠だと自分に言い聞かせながら、テキパキと仕事をこなしている毎日です。そんな短い会話の中でも、結構印象的な話題を話していかれる患者さんがいます。そう言う人は毎回面白いネタを持っており、話が上手いなーと感心します。逆に、話はいいからいつもの薬をくれれば結構、という感じの人もいます。個性はいろいろあって面白いですね。

    土曜日は夕方から東方医学研修会という漢方の勉強会でした。私が主催しているものなので、座長をしたり、最後に演者の先生に質問や感想を述べたりするのが仕事です。高齢者のフレイルについてのお話で、漢方を使った高齢者医療の実際について学びました。わたしも訪問診療では平均年齢90歳以上という高齢者医療をしていますので、大変参考になりました。

    今日の勉強会とは関係ないのですが私が思う高齢者医療に対する意見を少し書いておきたいと思います。例えば糖尿病。若い世代だとヘモグロビンA1cは7以下にするように徹底するのですが、80歳も過ぎてからはそんなに厳しくする必要はありません。年を取ったら、多少血糖が上がってもしっかり栄養をとることのほうが大事です。コレステロールも体重も同じ。基準よりすこし上の方が健康的です。極端に数値が低いとその方が心配です。しかし、多くの高齢者は若い頃に主治医に脅かされた記憶が鮮明で、採血データに一喜一憂します。年を取ったら、できるだけ不必要な薬は飲まずに食事や運動から健康維持するのが理想です。一方、若い世代は将来の合併症を予防するためにもできるだけガイドラインに準じた標準治療を受けることをおすすめします。

  • 湯らっくすでリラックス

    ひさしぶりに東京から息子が帰省してきたので、いっしょにサウナの西の聖地と呼ばれる「湯らっくす」に行ってきました。今回行ったのが2回目です。実は子供が小さかった頃に行ったことがあったのですが、当時はふつうのスーパー銭湯でした。それが、地震で被災したあと復旧する際にサウナブームに乗ってサウナ好きのための施設に様変わりして、今があります。そのため、以前は地元の人のお風呂だったのが、最近は全国からわざわざこのサウナに入るために熊本を訪れる人がいるくらいです。

    ここがすごいところはいくつもあって書ききれないのでぜひ確かめていただきたいと思いますが、週末はとても混み合う上に値段があがるので平日がおすすめです。男性用しか知りませんが、サウナが3つあり、塩を全身に塗って入るミストサウナも気持ちいいし、真っ暗闇の洞窟のようなせまいサウナは瞑想するのにぴったりです。サウナはどれもTVがついていないので静かです。これこそホンモノだと思います。私が定期的にいく水春のサウナはみんなでTVに向かって座る形になっており、野球や相撲の時間はみんな区切りのいいところまでダラダラと入っているので危険だと思います。サウナでは自分を見つめ直す時間にするもよし、心を無にしてマインドフルネスに徹するもよし。TVだけはいけません。友達とおしゃべりも迷惑です。

    サウナでは暑さとその後の水風呂で交感神経が極限まで緊張します。その後、体を簡単に拭いて椅子に座って外気浴していると、心地よい風がなんともきもちいい。サウナでの汗は交感神経の汗。外気浴での汗は副交感神経の汗。これを2,3回繰り返すと副交感神経からのリラックスもマックスに達してストレスは全部抜けてしまいます。サウナにハマるサウナーが急増しているのはそう言う背景があるからなのです。

  • 高血圧におすすめのサプリ

    今週後半は雨続きの予報ですが、春みたいな暖かさです。朝の冷え込みも緩み、快適です。午前中はまだ晴れており、仕事をしていて窓からさす日差しは眩しいほどでした。そのおかげか、発熱患者さんは先週よりも減ってきた感じがします。むしろ胃腸炎のほうが多くなっています。正月休みで韓ドラをいくつか見終わったので、新しいドラマを物色していました。今度はどれを見ようかな。ふと目に止まったのがあったので、とりあえず1話見て決めようと思い、見始めました。ドラマは最初のとっつきが大事です。見はじめて、これはおもしろい、続けてみようと思い、何話あるのかチェックしてびっくり、74話まであるじゃないですか。これは1年かかっても見終わらないかも。大河ドラマを超える大作。続けてみるかちょっとビビっています。

    NHKゴガクでハングル講座を頑張って続けています。毎日知らない単語がバンバン出てくるのでせめて一つでも2つでも覚えたいと思いますが、やっぱり年にはかないません。なかなか覚えられません。それでも、最近は韓ドラを見ていて字幕と実際のセリフの違いに気がつくようになりました。本当はこんなふうに言ったのを字幕ではこう表現したんだって感じで微妙なところがわかると嬉しいものです。語学の勉強は普段使わない頭をつかうので頭の体操になります。

    さて、今日は高血圧の新患さんが二人来ました。それほど悪い状態ではなく、薬を始めるのはまだ待ってもいいかなという感じでした。運動をしているか聞いたところ、偶然ですがふたりともランニングをしているとのこと。高血圧の初期は減塩と運動で様子を見るのがお約束です。しかし、きちんと運動の習慣があるとなると、あまり生活改善のヒントが思いつきません。そこでおすすめしたのが、アルギニンのサプリです。アルギニンは血管内皮で一酸化窒素をつくる材料となり、血管を拡張します。その結果血圧が下がることを期待できます。血行が良くなるのでランニング後の筋肉の疲労回復にも役に立つのではないかと思います。実は、私はアメリカにいた頃アルギニンや一酸化窒素の臨床応用の研究をしていました。

  • 個々の体質を考慮する医療とは

    高血圧の人には、塩分に気をつけて薄味にしましょうとほとんど皆に言っています。しかし、塩分感受性というのは人それぞれ異なっており、同じ塩分量を摂取しても血圧が上がる人と上がらない人がいます。ということは高血圧の患者さん全員に減塩指導をするのは理論的には間違っていて、人それぞれに適切にアドバイスすべきだと思われます。しかし、実際にはどんな体質なのかを検査することは難しく、現実的ではありません。そこで仕方ないので皆に同じ様に薄味にしましょうと言っているわけです。入院したことのある人はご存知と思いますが、入院食はとんでもない薄味で味気なくてご飯が美味しくない。ただでさえ食欲が無いのに味も薄くてますます食欲が落ちる。しかし、退院する頃には血圧の薬を飲まなくて良くなった、なんて話があります。一方、それほど薄味の食事をとってもたいして血圧は下がらない人もいます。やっぱり体質の問題だからです。

    コレステロールも同じです。LDLが高いと、油ものを控えましょうと言われると思います。検診を受けただけなのに担当医から「どんな食生活をしているんだ」とえらく怒られたという話もよく聞きます。しかし、コレステロールも食事で上がる部分はわずかで、大半は自分の肝臓で合成されたものです。つまり、油ものをたくさん食べなくても自分でかってにコレステロールをバンバン合成しているので、そう言う体質だと何を食べても上がってしまうわけです。ここでも、個々の体質を無視した十把一絡げの指導があります。

    最近、遺伝子解析を売りにした検診があります。これだと、それぞれの方がどんな病気にかかりやすいかの遺伝子レベルの体質判定ができるので、オーダーメイド的な適切なアドバイスができるかもしれません。また、mRNAを解析するタイプの検診では遺伝子を持っているかどうかだけでなく、どの部分の遺伝子が活性化して発現しているかがわかるので更に有意義なデータが得られるかもしれません。ただ、このような先進的な検査は発展途上で、今のところどう扱っていいのかわかりません。これからに期待です。

    久木野そば道場@道の駅

  • 総合診療勉強会

    私は同級生の内科医の友人たちと定期的に総合診療の勉強会をしています。糖尿病の専門とか、腎臓の専門とかいろんなドクターが集まっているので毎回持ち回りで講義をしてもらって知識のアップデートをしています。今日は慢性腎臓病の勉強と、麻しんや風疹などの皮疹が出る感染症の勉強会の2本立てでした。こんな素晴らしい勉強会がただで参加できるなんて夢のようです。やっぱり持つべきは良き友人です。ここで得た知識は明日からの臨床に即役立つのは間違いないし、困ったときにはまたその先生に相談したらいいという安心感があります。

    私たち開業医がいちばん恐れるのは一人でクリニックをやっているために相談するドクターがいないこと、知識のアップデートができずに時代から取り残されることです。学会などに積極的に参加して勉強するのも大切ですが、忙しくてなかなか時間が取れないのが悩みです。総合診療というのはどんな病気かわからない状態から、病歴を聞いて身体所見を見て、採血やレントゲンなどの検査データを見て診断を導くそのプロセスがパズルみたいで難しくも楽しいものです。病気の診断は理詰めで考えてあらゆる可能性からいくつかの疾患に絞り込む作業ですが、実はひと目見てぱっと瞬間的に診断する直感力も必要です。そのためには内科疾患に限らず、皮膚科や小児科など幅広い知識と経験が必要です。

    来月、産婦人科の漢方勉強会で講演を頼まれました。先週からスライドの構想を練り始めたところです。参加する先生は皆さん婦人科なので、講演で話す内容は女性のいろんな症状を漢方でどう治療するか、漢方的にはどう考えたらいいのかという話題にしようと思っています。私はこれまで中級者以上向けのはなしばかりしていたので、今回は初学者にもわかるような内容にしようと考えていますが、案外そちらのほうが話すのが難しいです。漢方の基礎理論は大きく分けて日本古来の古方と呼ばれるものと中国でまとめられた中医学の2つがあり、同じ漢方なのに診断のプロセスが全く異なります。上に書いた総合診療で言えば、理詰めで考えて診断するのが中医、直感的に診断するのが古方といった感じです。どちらでもたくさん勉強すれば行き着くところは同じだっったりしますが、初学者に説明するのは本当に難しいです。

    久木野