むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 個々の体質を考慮する医療とは

    高血圧の人には、塩分に気をつけて薄味にしましょうとほとんど皆に言っています。しかし、塩分感受性というのは人それぞれ異なっており、同じ塩分量を摂取しても血圧が上がる人と上がらない人がいます。ということは高血圧の患者さん全員に減塩指導をするのは理論的には間違っていて、人それぞれに適切にアドバイスすべきだと思われます。しかし、実際にはどんな体質なのかを検査することは難しく、現実的ではありません。そこで仕方ないので皆に同じ様に薄味にしましょうと言っているわけです。入院したことのある人はご存知と思いますが、入院食はとんでもない薄味で味気なくてご飯が美味しくない。ただでさえ食欲が無いのに味も薄くてますます食欲が落ちる。しかし、退院する頃には血圧の薬を飲まなくて良くなった、なんて話があります。一方、それほど薄味の食事をとってもたいして血圧は下がらない人もいます。やっぱり体質の問題だからです。

    コレステロールも同じです。LDLが高いと、油ものを控えましょうと言われると思います。検診を受けただけなのに担当医から「どんな食生活をしているんだ」とえらく怒られたという話もよく聞きます。しかし、コレステロールも食事で上がる部分はわずかで、大半は自分の肝臓で合成されたものです。つまり、油ものをたくさん食べなくても自分でかってにコレステロールをバンバン合成しているので、そう言う体質だと何を食べても上がってしまうわけです。ここでも、個々の体質を無視した十把一絡げの指導があります。

    最近、遺伝子解析を売りにした検診があります。これだと、それぞれの方がどんな病気にかかりやすいかの遺伝子レベルの体質判定ができるので、オーダーメイド的な適切なアドバイスができるかもしれません。また、mRNAを解析するタイプの検診では遺伝子を持っているかどうかだけでなく、どの部分の遺伝子が活性化して発現しているかがわかるので更に有意義なデータが得られるかもしれません。ただ、このような先進的な検査は発展途上で、今のところどう扱っていいのかわかりません。これからに期待です。

    久木野そば道場@道の駅