むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 患者さんに触れない診察

    先日も書きましたが、最近では診察で聴診するのをほとんどの場合省略しています。患者さんとの接触を避けることは、私たち医療人と患者さんの距離を取るため、そして、診察時間を可能な限り短くするための対策です。逆に言えば、人との距離を保つこと、無駄な接触を避けること、そして、対面で会話する時間を3分以内にすることなどが感染予防に重要だと考えているわけです。本来なら、患者さんを自分の家族と思って接することをクリニックの理念としているので、この取り組みは理念に反するのですが、院内で新コロの感染が起こってしまっては元も子もありませんから、致し方ないと思っています。診察があまりにあっさりして物足りないと思われるかもしれません。もし、話足りないときは遠慮なくいろいろ聞いてください。全員に診察時間制限をしているわけではありません。必要と思えば、じっくりお話する時間を取ります。

    昼に銀行に行ったらカウンターにコンビニみたいなビニールの幕が貼ってありました。この銀行は2年ほど前にカウンターのアクリルの仕切りを取り払ってオープンカウンターに改装したばかりだったのですが、また、仕切りの小さな隙間から通帳などのやり取りをしなくてはいけなくなりました。クリニックでもそういうビニールの幕を作っているところがだいぶ増えてきています。新コロの場合、クルーズ船ダイアモンドプリンセスの例を見るとわかるように空調などを介してどこにでも飛んでいくと思われます。あんなビニールの幕は感染予防になるとは考えられないし、実際に科学的根拠はないとおもいます。

    そうは言っても、うちのスタッフに聞いたら心理的な安心感があるそうです。スタッフがそれを望むのなら、仕方ないので当院も受付にビニールの幕を張ることを検討したいと思います。これからの世は人と接近しないことが基本だと考えると仕方のない流れなんでしょう。私は漢方を専門としているため、レントゲンの写真を見るより痛いところを触ってみることを重視していました。なんとも寂しい世の中になってしまいました。今、仕方なく距離をとっていますが、心は今まで通りバリアなく接したいと思っています。

  • 時代の荒波の真っ最中

    感染予防のために聴診器を使わない診察をはじめました。この数日、できるだけ患者さんに触ることなく、話を聞くだけで薬を処方しています。これは、内科医にとってかなりチャレンジです。触ってみればいろんな情報がとれます。熱い、冷たい、腫れている、むくんでいるなどは当然ですが、漢方では触ることで気の流れも見ます。達人は顔を見ただけでそこまでわかるのでしょうが、普通の漢方医は脈などを触ってみて気が多い少ないなどの判断をするのです。

    漢方は寒熱虚実で処方を決めます。西洋医学が病名で薬が決まるのとはかなり違う論理があります。寒熱虚実は触ってみるとわかることが多いのですが、患者さんの話を細かに聞くことで代用する事ができます。例えば、指が腫れて痛いと言う場合、じっとしていても痛いのか、動かすと痛いのか、お風呂で温めたら痛みは減るのか、夏と冬で痛みは違うのか、など、あれこれ情報を集めることで寒熱の判断ができるのです。

    このように、患者さんに触らない診察は新コロ対策としてやむを得ず始めたわけですが、この習慣が1ヶ月も続くと元に戻ることはないと思います。それくらい、今回の新コロの与えるインパクトは大きいと思います。テレワークなども同じだと思います。一旦今までの習慣から離れてしまうと元には戻りません。好むと好まざるとこれが世の流れです。ふとテレビを付けたら「さんま御殿」があっていましたが、あんなに大勢の芸人さんがギュウギュウ詰めにひな壇に座るなんてありえないと皆が感じれば、ああいう番組はそのうちなくなってしまうのです。時代の流れ、今は急流下りのような荒波にもみくちゃにされている真っ最中です。自分にできることをするしかありません。

  • 世の中は聴診しない診察へと向かっている

    久しぶりにためしてガッテンを見ました。オキシトシン(幸せホルモン)の話をしていました。誰かに手を握ってもらったりハグしてもらったりすると幸せホルモンがでてきます。このホルモンは人を幸せにするだけでなく、不安、痛み、ストレスから開放してくれる素晴らしい働きがあるというものです。医療・介護の世界では手をさすってあげるような治療(癒やしのセラピー)があり、ユマニチュードと呼ばれています。がん患者さんや認知症患者さんにも効果的だと言う報告があります。

    この効果は素晴らしいし、お金もかからないので是非取り入れたいのですが、新型コロナの時代、人と接触する行為は極力避けないといけません。この先コロナが下火になることはあっても完全に消えてしまうという可能性は低いため、人との距離を保つことが習慣化されると思います。そうすると、せっかく素晴らしい効果をもたらすユマニチュードも発展しないかもしれません。

    内科の診察では聴診器を使うことが当たり前ですが、最近では感染拡大予防のために極力聴診しないようにしています。診察が物足りないと感じるかもしれませんが、心不全や喘息など聴診がよほど大切な場合を除いて最小限にしています。医師会からは、風邪の患者さんも聴診しないように指示されています。風邪は肺炎かどうかを見極めるため聴診したいのですが、聴診器にウイルスが付着したり、患者さんに必要以上に接近することで医療者にうつることを極力避けるために致し方ないと思います。

  • 当院は通常通り診療しています

    非常事態宣言が全国に適応拡大されました。クリニックはこのような場合、社会のインフラとして必要なので休まず診療します。みなさん、薬が切れたらどうしようと心配されていますが、通常通りやっていますので、ご心配なく。昼にいつものように往診にでかけたら、いつも以上に人通りが多く、スーパーや百均などは車があふれていました。みんな買い出しに走っているのでしょうか?東京を見てわかるように、厳しい外出制限がされたとしても食料品店はあいているので、慌てる必要はありません。みんなが必要以上に(冷蔵庫に入れて腐らせるほど)買いだめすると、一時的に品薄になるので、冷静に行動することが求められます。また、スーパーのレジなどに並ぶことで3密状態となります。感染リスクも高まりますので、無駄な買い物は避けましょう。

    当院も、金曜は思いがけず100名をこす患者さんで冬の忙しい時期と同じ位の賑わいでした。幸い、発熱や怪しい感染症疑いみたいな患者さんは一人も来られなかったので、安全に診療できたと思います。冬場の込み合う時期だったら、インフルエンザとか、普通の風邪などの感染症患者さんがたくさん来ます。それでも私やスタッフは誰もうつりませんから、きっとみんな強力な免疫を持っていると思います。

    このインフルエンザの例でもわかるように、日頃ちょっとずつウイルスに暴露されると発病することなく免疫を獲得できます。自然のワクチンみたいなものです。新コロをそんな気持ちでかかってしまうと大変なのですが、万一無症状でたまたま検査したら陽性がでたような場合、超ラッキーです。それで免疫ができれば向かうところ敵なしです。ただ、今の日本での対応だと、隔離されたりして大変ですけどね。

  • マスクで顔が見えない診療

    最近は患者さんのほとんどがマスクをしています。目は見えるのですが、顔の半分以上が隠れていると、元気なのか元気でないのかわかりにくいですね。特に、気を使われる人は「おかげさまで随分良くなりました」と言いながら、全然良くなっていない場合もあります。その返事が本心なのか、お世辞なのかを見抜くには相手の顔をじっくり見るしかありません。顔全体が見えていれば、瞬時に本当かどうか判断できるのですが、目だけだと、相手を見抜くのに時間がかかります。じっと相手の目をみて、その目の奥に潜んだ感情まで見ていきます。

    一方、診察する私の方ですが、私はマスクが嫌いです。息苦しい、耳が痛くなる、声がこもってお年寄りには聞き取りにくい、などいろんなデメリットがあります。ただ、最大のデメリットはそういうものではありません。実は、いろんな不安を抱えて来院している患者さんに、大丈夫ですよ、心配いりませんよ、と言葉で伝えてもたいして安心してもらえません。そこで、自分の表情を精一杯の笑顔にすると、多くの患者さんは安心されます。目だけでなく、口角もあげて微笑むと、患者さんの表情も鏡のように緩みます。

    しかし、私がマスクをして、目だけで患者さんに安心のパワーを送ろうとすると、顔全体でパワーを送るとき程の効果は出ません。倍以上の心を目の表情に込めないといけません。なので、マスクでの診療は疲れます。しかし、これは私にとっての修行です。マスクで顔を覆って目力だけで患者さんを癒やすパワーを習得できれば、向かうところ敵なしです。

     

    熊本地震(本震)から4年ですね。激動の4年でしたが、コロナ禍であの時よりさらに大変な現在、みんなで力を合わせて乗り切りましょう。