むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • PTSDに神田橋処方

    この週末、震災後の復興を記念すべきものが2つ。一つ目はご存知交通センターが新しく桜町熊本(ローマ字表記が正しいらしい)のオープンです。もう一つが俵山の大切畑ダムをう回していたところが復旧して全面開通するそうです。久木野方面はかなり楽になります。ちょうど連休なので行ってみたいと思います。

    このように、熊本地震から3年半たとうとしていますから道路や建物は次々と復興しています。しかし、当院に来る患者さんで、震災をきっかけに体調を崩したという人がいまだにあとをたちません。ふとした拍子に怖かった思い出が蘇ってくるというのはPTSDといいます。震災などの大きなショックを受けたときの心のダメージが後々まで尾を引くものです。それ以外にも、幼少期にとてもつらい思いをしたとか、上司からこっぴどく叱られたとか、旦那から暴力を受けたとか、子供が大病をしたとか、いろんなレベルの恐怖体験があります。そういった恐怖体験があとになって不安などを引き起こして体調不良の原因となるのは珍しくありません。

    私はカウンセラーではないので、幼少期にさかのぼった恐怖体験を根掘り葉掘り聞き出すことはしません。しかし、今の体調不良に関連するきっかけみたいなことで思い当たることがあれば教えてくださいとは尋ねます。そこでもし多少でも過去のトラウマが影響していると思ったら神田橋処方という漢方の出番です。四物湯と桂枝加芍薬湯を併用するのですが、驚くべき効果を発揮します。なぜこの処方が著効するのかは漢方を専門としている私にもわかりませんが、患者さんが元気になってくれれば、理屈は後回しでも構わないと思っています。

     

     

  • 治りにくい胃腸症状には漢方

    ストレスで下痢する人がいます。学生だと、試験前にお腹が痛くなるとか、学校に行こうとするとトイレに籠ってしまって遅刻しそうになるというのはよくあることです。大人でも、ストレスで出勤しようとするとお腹が痛くなって結局仕事を休んだというような話をよく聞きます。このような症例でふつうの胃腸炎の薬をもらっても、なかなか良くなりません。胃腸炎ではないからです。このような病態は、過敏性腸症候群と言って、それ専用の薬でないと治療が困難です。

    当院でも、このような過敏性腸の患者さんが多く来院されますが、まずは漢方を使用します。腹痛や下痢には漢方がよく効くのですが、原因が精神的なものでもなんとかなります。ストレスで朝から腹痛があるとか、試験の前は調子が悪いという場合など、漢方の出番です。それでも不十分なら、過敏性腸用の下痢止めも処方します。しばらく使うと落ち着いてくることが多いです。

    もう一つよくあるのは機能性ディスペプシアという病態です。食べると胃が痛くなる、吐き気がするなどの症状があるのですが、胃カメラなどの検査では異常なしと言われるものです。多くは胃酸を抑える薬を処方されますがなかなか改善しません。これも、漢方が結構役に立ちます。胃の粘膜を治す西洋薬とは違って、胃腸の機能を正常化させる働きが漢方にはあるのです。

  • 栄枯盛衰

    トランプ大統領は、電子タバコのアメリカでの販売を禁止すると発表したそうです。https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1909/12/news092.html 青少年の死亡事故が相次いだためです。それにしても、決定まで即断即決、その速さにびっくりしました。私の周りで電子タバコを使っている人はいませんが、患者さんには結構います。おかげで禁煙できたという人もいますので多少メリットもあるなと思っていましたが、乱用して死んでしまってはいけません。

    もう一つ、一世を風靡したかと思ったらあっという間に終わってしまったものがあります。ZOZO(ゾゾタウン)です。アパレルのネット販売で一気に会社が大きくなり、前沢社長が月に行くと発表したり、女優の剛力彩芽と結婚したりで何かと話題でしたが、このたびヤフーに買収されたそうです。びっくりです。

    このように、ちょっと前までものすごい勢いで人気だったものがあっという間にその勢いをおられるという場合があります。原因は自分にあるときもあれば、時代の流れのときもあります。それを考えれば、わたしたちの日々のいいとき悪いときの波というのは全然たいしたことではありません。なんとかなることばかりです。例えば会社で辛い人。その会社にしがみつく必要はないんです。やめてほかを探すのはありです。給料が下がるのを恐れているかもしれませんが、病気をして鬱みたいになってまで今の会社にいなくてもいいと思います。そんな時代に生きているわけですから、なにか手に職をつけていざというときもなんとかなるという自信があれば言うことなしです。たとえば、介護業界などは引く手あまたですから、体力と思いやりの心さえあれば、すぐにでも転職できます。

    高森月巡り温泉

  • 血管を丈夫にするには

    若い女性に結構みられるのが、ぶつけた覚えもないのにあざができるというもの。最近当院を受診されたお嬢さんは、手足に点状の点々とした皮下出血(紫斑といいます)でした。内科医や皮膚科医が紫斑を見ると、血小板数が減少する病気や紫斑病という特殊な病気を考えますが、たいていは検査しても何も出てきません。そういう場合、経過観察ということになります。教科書的には治療法はないと言われています。以前もこちらのブログに書いたことがあるのですが、こういう紫斑を単純性紫斑といいます。じつは、大抵の場合、コラーゲン不足が原因です。つまり、肉や魚をしっかり食べていないと、体(特に血管の構造)がもろくなり、ちょっとした負荷で血管が破綻して皮下出血を起こすのです。

    肉や魚などに含まれるコラーゲンは、いわゆるゼラチンです。煮たあとに冷えると固まるプルンプルンしたあれです。そういうコラーゲンを食べても胃で消化されて体内でコラーゲンにはならないと言う人がいますが、それは間違いです。豚足を食べると肌がプルプルになる、という実感こそが正しい事実です。食べたコラーゲンは消化の過程でアミノ酸に分解されますが、体内の必要なところで再構築されます。例えば弱った血管壁にある細胞内の遺伝子はコラーゲンを作ろうとやる気満々なのですが、材料となるアミノ酸を食べてくれないとコラーゲンができないのです。また、コラーゲンを再構築する際にはビタミンCも必要です。ビタミンCはビタミンEでリサイクルされるのでビタミンEも大切です。

    というわけで、ビタミンCやEを紫斑の出ていたお嬢さんにしばらく飲んでもらっていたのですが、昨日来院されたのをみたらすっかりきれいになっていました。良かったです。今日、医学論文サイトを見ていたら、ベジタリアンは出血性脳卒中が1.4倍多いという研究成果が発表されていました。数千人規模の研究で18年もの追跡調査です。正しいと思います。肉を食べないベジタリアンは血管が弱く、出血しやすいのです。

    久木野から高岳方面を望む

  • 体調を気にしすぎると本当に病気になる

    血圧の患者さんには血圧手帳をお渡しして、家庭血圧を測ってもらいます。病院で測るといつも高いのに家ではそれほど高くないという場合、家庭血圧の方を重視します。病院の血圧だけを信じて薬の強さを調節すると、家で普通に過ごす際に低血圧になってフラフラしたりするからです。血圧手帳には通常朝晩2回分の血圧を書くスペースがあります。ところが、なかにはそれでは足りずに自分で大学ノートに記録してこられる方もおられます。

    たまにすごいのが、一日1ページくらい使って、朝から晩まで何度も何度も血圧を測り、脈拍を測り、体温を測り、頭が痛いから鎮痛剤を飲んだとか、動悸がしたとか、一日中自分の体調を観察しては記録してくる人がいます。まるで集中治療室に入院している患者さんみたいです。このような微細なデータ収集はたまに大切な傾向を発見するヒントになるのですが、たいていはなんの役にも立ちません。逆に害があります。

    自分の些細な体調不良にフォーカスして記録することを目的としているため、通常だったら見逃す(気にもとめない)頭痛や血圧の変化を病的に捉えて、不安が増大します。気にしなければ病気ではありません。気にしていると本物の病気になります。訪問診療で高齢者を見ると、皆さん朗らかでお元気です。自分の病気のことなど気にもしません。朝から頭が痛かったこと、先週まで入院していたことなど覚えていません。かわいそうなのは、まったくボケていない頭脳明晰なお年寄りです。年をとれば毎日どこそこ不調が出ます。それを、がんではないかとか、肺炎ではないかとか一日中考えては辛い顔をしています。年をとったらボケたふりをして笑って過ごしましょう。幸せを呼ぶ秘訣です。

    クリニック前で見た今日の夕焼け