むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 体調を気にしすぎると本当に病気になる

    血圧の患者さんには血圧手帳をお渡しして、家庭血圧を測ってもらいます。病院で測るといつも高いのに家ではそれほど高くないという場合、家庭血圧の方を重視します。病院の血圧だけを信じて薬の強さを調節すると、家で普通に過ごす際に低血圧になってフラフラしたりするからです。血圧手帳には通常朝晩2回分の血圧を書くスペースがあります。ところが、なかにはそれでは足りずに自分で大学ノートに記録してこられる方もおられます。

    たまにすごいのが、一日1ページくらい使って、朝から晩まで何度も何度も血圧を測り、脈拍を測り、体温を測り、頭が痛いから鎮痛剤を飲んだとか、動悸がしたとか、一日中自分の体調を観察しては記録してくる人がいます。まるで集中治療室に入院している患者さんみたいです。このような微細なデータ収集はたまに大切な傾向を発見するヒントになるのですが、たいていはなんの役にも立ちません。逆に害があります。

    自分の些細な体調不良にフォーカスして記録することを目的としているため、通常だったら見逃す(気にもとめない)頭痛や血圧の変化を病的に捉えて、不安が増大します。気にしなければ病気ではありません。気にしていると本物の病気になります。訪問診療で高齢者を見ると、皆さん朗らかでお元気です。自分の病気のことなど気にもしません。朝から頭が痛かったこと、先週まで入院していたことなど覚えていません。かわいそうなのは、まったくボケていない頭脳明晰なお年寄りです。年をとれば毎日どこそこ不調が出ます。それを、がんではないかとか、肺炎ではないかとか一日中考えては辛い顔をしています。年をとったらボケたふりをして笑って過ごしましょう。幸せを呼ぶ秘訣です。

    クリニック前で見た今日の夕焼け