むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 睡眠は大事だが、変なこだわりは捨てよう

    いろんな訴えで患者さんが来院されますが、眠れないことほど切実な訴えはありません。眠れさえしたらあとはなんとかなると言われます。ちょうど昨日のブログで、屋根が雨漏りさえしなければなんとかなると書きましたが、それも安心して眠れるということと同じです。やはり、ちゃんと眠れないと疲れが取れず、日常生活は維持できなくなります。そもそも睡眠は食欲に並ぶ生理的欲求の一つです。

    おりしも、世の中は睡眠薬や安定剤に対して厳しくなってきました。従来たくさん使われてきたベンゾジアゼピン系の睡眠薬や安定剤を使わないようにという風潮です。これらを使いすぎたせいで、認知症になるとか、夜間トイレに起きた際にふらついて転倒・骨折という流れで寝たきりになる高齢者が多いというのも事実です。また、睡眠薬や安定剤は依存性があるのも問題です。そこで、漢方で眠れませんかとか、鍼治療で眠れるようにしてくださいとか、無理難題を要求されることが度々あります。

    漢方や鍼にも不眠を治す治療法はあるのですが、その力はそれほど強くはありません。試す価値はありますが、それにあまりこだわることはないと思います。眠剤を飲んで認知症になったら怖いからと、なんとか漢方で寝ようとするけど眠れない。そうこうしているうちに疲れも取れず頭はボーとしてノイローゼのような毎日を送る、というのはきちんと眠剤を飲んで頭スッキリ快適に過ごすのと比べてどっちがいいか考えてみましょう。また、お酒を飲んで寝るというのもよくありません。寝たいためだけにお酒に走った結果アル中になったり肝硬変になっては本末転倒です。

  • 大阪地震

    大阪で地震があったそうですね。速報は聞きましたが、朝から晩までずっと忙しく、全くニュースを見る暇がありませんでした。被害に遭われた方にはお見舞い申し上げます。熊本でもあれから2年ですが、まだ復興半ばです。最近は復興するスピードより壊れてしまうスピードの方が早くて日本中あちこち大地震の被害が続きます。最近は関東で地震が多いと思っていたところ大阪ですから、地震予測なんて本当にあてになりません。

    今日患者さんと大阪の地震のことを話していて、納得したことがあります。熊本が大地震を経験したからこそたどり着いた心境だと思います。それは、屋根だけちゃんと治って雨が漏らなければあとはなんとかなる、です。確かに私のうちも屋根が壊れて雨漏りしたので、梅雨の時期はバケツを並べて大変でした。ポタポタと部屋の中で雨の雫がバケツに落ちる音を聞くたびに気持ちが沈みます。忙しい中、屋根修理にきてくれた大工さんには本当に感謝です。しかし、屋根さえ治れば確かに気持ちよく眠れます。壁紙が破れていても、塀が傾いていてもなんて事ありません。うちはまだ修理していません。朝から晩まで仕事で家にいませんから、寝るだけなら本当に雨さえもらなければいいのです。

    地震の被害にあってこそ、体が無事で寝るところさえあればなんとかなるという心境に達します。(実際には電気、水道といったライフラインも必要でしたね)ただ、地震だけでなく、水害や火山の噴火、火災、落雷など自然災害はいつどこに起こるかわかりません。そのような際に、自分の財産や利益を守るのも必要でしょうが、助け合いの心、奉仕の心、お互い様という心がなによりの救いとなります。

  • アザができやすい人にはビタミンCと豚骨スープ

    手足にぶつけた覚えもないのにアザができる人がいます。若い女性や高齢者によく見られます。「あっ、私もある」という人は結構多いと思います。アザは内出血ですから、内科を受診すると出血傾向の検査をされると思います。具体的には血小板数と凝固異常の検査(プロトロンビン時間など)です。しかし、ほとんどの場合こういう検査では異常は見つかりません。

    実は、アザができやすい人の多くは栄養不足です。栄養とは漠然としていますが、コラーゲンとビタミンCです。若い女性や高齢者はあっさりしたものを食べる傾向にあり、脂っこい肉や豚骨スープなどは避ける傾向にあります。しかし、肉や豚骨スープには大量のコラーゲンが含まれます。これが体の組織を構成する重要な成分なのです。血管壁にはコラーゲンがたくさん分布しています。万一ケガなどをしてコラーゲンが血液に触れるとすぐに血液が固まります。血液凝固というのは血管外に存在するコラーゲンをキッカケに止血作用が始まるようにできているのです。しかし、血管周辺にコラーゲンが十分ないと軽く手足をぶつけただけで出血して止まらないのです。

    コラーゲンは食べるとアミノ酸レベルまで消化されてしまうといいますが、ビタミンCがあると体内でコラーゲンに再構築されます。また、ビタミンEはビタミンCの作用を増強します。そこで、アザができやすい人にはまずビタミンCやE(ユベラ)などを飲んでもらうといいのですが、大切なのはコラーゲン摂取です。肉を食べるのが基本ですが、豚骨スープも非常にいい食材です。たまにはコラーゲンと思ってラーメンの汁を大切にいただくと良いと思います。もちろん、インスタントではだめです。ちゃんとしたラーメン屋さんのものにしてください。それから、ラーメンを食べた後はビタミンCを1000mg以上飲んでおいてください。また、ひごろ肉をあまり食べていないなら、チャーシューをトッピングして食べるのもいいと思います。ただし、炭水化物制限が基本ですから、替え玉は無しですよ。

  • 夏の体調不良

    いまの季節、熱が出たり体調が悪いととてもきついです。冬のインフルエンザもきついですが、夏風邪もきついものです。最近は朝と昼の寒暖の差が大きく、体調を壊す方が多数見られます。冷房を入れっぱなしで寝るとかは、ご注意ください。

    風邪症状がなく、とにかくきつい、だるい、熱っぽいだけ、なんでしょうこのきつさは。という患者さんもいます。喉を見ても赤くないし、咳も鼻水もない。聞けば頭痛が少しとか、寒気がしたとか、はっきりしない症状しかありません。実は、私自身、この週末「これ」にかかってしまいました!自分でかかってみるとよくわかります。患者さんの訴えではよくわからなかったのですが、この異様なだるさと気分不良は胃腸炎のウイルス感染です。ノロではないかもしれませんが、なにがしかの胃腸炎ウイルスです。多くの場合だるさ、熱っぽさで始まり、1ー2日たつと腹痛、吐き気、下痢などの症状が出てきます。みなさん早い段階で来院されると、胃腸炎症状がないので診断が難しいのです。

    私は診察の際にこまめに手をアルコール消毒します。しかし、インフルエンザなどはアルコールで消毒されますが、ノロなどの胃腸炎ウイルスはアルコールでは消毒できません。そのせいで簡単に患者さんから移ってしまうのです。手洗いが大切です。さて、私の場合は、まだ下痢などにいたらず、ムカムカとお腹のチクチク程度ですので、特効薬の黄連解毒湯を飲んで回復してきました。この漢方は苦いですが、胃腸炎にはものすごく良く効きます。

  • 暴力的な認知症

    認知症治療薬にアリセプトという薬があります。この分野では最も有名な薬ですから、ご存知の方も多いかと思います。この手の薬は使ってみるとほとんど期待はずれで、効いていると実感することは少ないものです。しかし、ほかに薬がないことから、それでも使うしかないのが現状です。

    私が訪問診療しているお年寄りで、かなり認知症が進んだおばあちゃんがいました。膝が痛いと言っては湯飲みのお茶を膝に塗ったり、ご主人のヘアトニックを湯のみに入れて飲んだり、いろんなことをしてしまいます。このままだと危険だなと思い、アリセプトを処方しました。少しでも異常行動が減ればと期待してです。

    しかし、アリセプトを始めて2週間、今度は杖でご主人を叩くようになってしまいました。こういう暴力的な行動は認知症で陽性症状と言って過剰に元気良くなった症状です。認知症の薬で元気を通り越してしまった可能性があります。あわててアリセプトを中止したら落ち着きました。このように、認知症の薬で本来とは違った性格になってしまうことがあります。ますます認知症が進んだと思わず、薬のせいじゃないかと疑うことも大切です。