むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 君臣佐使

    君臣佐使(くんしんさし)というのは漢方薬の構成を表したものです。通常漢方薬は4ー5種類以上の生薬の組み合わせから成ります。例えば咳のひどい風邪で使う麻杏甘石湯は麻黄、杏仁、甘草、石膏の4味からできており、それぞれの生薬の1文字ずつを取ってネーミングされています。君薬(主となるもの)は麻黄で気管支拡張作用があり呼吸を楽にします。臣薬(君薬のサポート)が杏仁で、咳を止めます。佐薬(そのまたサポート薬)が石膏で抗炎症作用、使薬(そのまたサポート)が甘草で諸薬の調和と抗炎症作用という構成になっています。

    わたしは西洋薬を使って治療する時も君臣佐使を考えます。例えば、熱が出て咳とたんがあって、鼻づまりありという患者さんがきたとします。熱は何度か、咳はどのくらいひどいか、鼻炎の状況はどうか、などいろいろ確認します。そして、私の外来では、一番困っているものから順番をつけてもらいます。すると、患者さんによって1 咳で夜眠れない、2 熱で倦怠感、3 鼻水鼻づまり というかもしれません。別の患者さんでは1 鼻づまりで眠れない、2 咳がきつい 3 熱 と言われるかもしれません。

    こういう順番を聞いたら、君となる処方を決めます。前者なら フスコデ、後者ならアレグラなどが候補です。あとはそれをサポートする薬を選んでたしていきます。これが漢方的考えにもとづく西洋医学的治療です。そんな考えで日頃から処方するため、私は、できあいのPL顆粒などはほとんど使いません。

    この花を撮った時失敗した駄作をせっかくなので比較のために掲載しましょう

    写真も君となる主役の花が大事ですが、写真を構成する君臣佐使を考えると背景などへの配慮がいかに大切かわかります。主役はサポートしてくれるみんなのおかげで引き立つのです。

  • 静かな看取り

    訪問診療をしていた患者さんが亡くなりました。この方は、入居している老人ホームで最期を迎えたいという希望が強かったため、施設の受け入れ、訪問診療の体制、万一の際の入院ベッドの確保など受け入れ態勢を備えました。食事が入らない時には点滴できるように訪問看護にも協力いただきました。このように万全の体制で受け入れ、ちょうど1ヶ月がたったところでした。

    通常、癌末期で大病院に入院していると、これでもかと体に鞭打つように抗がん剤や放射線を続けます。体力は落ちるし、感染症にかかったりして大変な目にあいます。一方、今回のように老人ホームで最期を迎える場合、せいぜい酸素を流す程度で点滴も何もチューブは体につけません。病院では当たり前の酸素モニターや心電図などの生体監視は行いません。それに変わって、家族がそばにいて手を握り、頑張って、頑張って、と声をかけます。

    しばらくすると、家族も状況を受け入れ、「頑張れ」から「頑張ったね」に変わってきます。そして「いままでありがとう」と感謝の言葉にかわります。病院に比べて老人ホームはその人の自宅と同じですから、静かに厳かに時は流れます。病院で下手に最期を迎えると心臓マッサージされて、気管内挿管(管を喉に入れる)されて、人工呼吸器につながれたまま息を引き取ります。私は今までそんな病院で働いた時間が長かったため、このように静かで美しい最期はとても印象的です。このような最期を迎えることができるかどうかのポイントは・・・・

    本人と家族の覚悟だけです。また、家族は覚悟していても、突然遠い親戚さんが現れて「救急車で日赤にお願いします」なんて言い出さないことだけがポイントとなるのです。

    明午橋から見た白川

  • 眠剤は出さなくなった病院が激増中

    5月は忙しかったです。連休で皆さんゆっくりしたと思いますが、私たちは訪問診療の都合もあり何処へも行かずに患者さんを見てまわりました。連休が開けると、クリニックを休んだ1週間分の患者さんがどっと薬を取りに来ました。毎日が本当に多忙でした。毎日朝が来たと思えば夜になり、月曜が来たと思えば土曜になる、1日1週間が矢のように速いです。気がつけばもう月末です。知り合いの先生からは飲みに行こうよと誘われていましたが、とても忙しすぎて飲みに行く暇はありません。「今は忙しいから、落ち着いたら連絡します」と言いながら、すでに1ヶ月がたってしまいました。1ヶ月なんて本当に一瞬です。

    逆に、1日が非常に長くて困っている人もいます。例えば不眠症の人です。布団に入って、まだ寝付かない、まだ眠くない、と何度も時計を確認して、あら、まだ30分しかたっていない、とかいいながら結局朝になってしまうのです。私のように気がついたら1ヶ月という人間とは正反対です。お気の毒としか言いようがありません。

    最近は診療報酬改定のあおりで、「4月から睡眠薬は出せなくなったので血圧の薬だけだしておきます。眠剤は精神科に行ってもらってください」と、患者さんを見捨てるようなことをする施設が激増しています。デパスやマイスリーを定期処方すると病院の収入が激減する仕組みを厚労省が決めたため、出せば出すだけ病院は損するのです。だからといって、血圧の薬だけ自分の施設で出して眠剤を他院に回すのはやり過ぎではないかと思います。このように患者さんを儲かるか儲からないかの判断で振り分けるのは病院の姿勢としてどうかと思うのですが、今回の睡眠薬処方の件でリトマス試験紙のように病院の体制を誰もが判定できるのではないかと思います。

  • 新しい認知症治療薬は当分出てこない

    Yahoo!ニュースをみていたら、驚きのニュースが出ていました。アメリカの大手製薬メーカーが相次いで認知症治療薬の開発を中止するというものです。ファイザー、イーライリリー、メルク、ジョンソン・エンド・ジョンソンといった業界トップメーカーがことごとく認知症治療薬の開発で成果を得られず撤退すると書いてあります。これは、先日まで私がブログに書いていた通り、認知症に至るまでの原因は人それぞれで、単純ではないためだとおもわれます。先日私が読んだ「アルツハイマー病 真実と終焉」という本には原因が36通りあると書いてありました。それを全部とは言わなくとも、一つでも多く改善することが大事なのです。それは、なにも画期的な治療薬を必要とすることではなく、生活習慣の改善とビタミン類のサプリをとることです。プログラムは複雑ですが、新薬に頼った治療でないため今日からすぐにでも始められるし、副作用の心配もありません。

    この本に書いてあることは予防だけでなく治療にも有効です。ただ、認知症は単純な原因で短期間に形成されるものではなく、悪い生活習慣を長年続けることで次第に形成されます。したがって、脳に悪影響と思われることを一つでも1日も早く取り除くよう取り組むことが大切です。

    現在アルツハイマーの治療薬として4種類が認可され、現場では処方されています。しかし、どれをとってもその効果は非常に限定的です。わずかにしか効かないのと、改善期間がたった半年くらいであとは飲み続けても効果がないというデータが出ています。さらに今後有効な薬の開発がストップすることで当分は新薬は出てくるめどがありませんので、ますます生活習慣を改善するしかありません。

    引用 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180527-00000007-jij-n_ame

  • 運動会は一眼レフがいいのか?

    昨日までの雨も上がり、快晴の日曜となりました。今日はあちこちで小学校の運動会です。小学校の運動会は中学や高校と比べても一大イベントです。ご両親、おじいちゃんおばあちゃんみんなでお祭り騒ぎです。弁当を作るのが忙しいお母さん、場所取りに朝早くから運動場に並ぶお父さん、ご苦労様です。そして、いよいよ我が子の出番となると、みんなで写真を撮ったりビデオを撮ったり必死です。私は今は写真好きで毎日のように写真を撮りますが、うちの子が小学生だった頃は、年に一回運動会の時だけカメラを引っ張り出してきて一眼レフにズームレンズをつけたりしていました。

    しかし、一眼レフなどは年に一度取り出してきても上手く撮れるはずはありません。iPhoneの方がよほど綺麗にとれます。一眼レフは、露出、シャッタースピード、ピント、手ブレ補正、その他いろんな設定をしながら自分の思った仕上がりを目指して写真を撮ります。それだけマニアックであり、極めれば面白いものです。しかし、オート設定で撮っただけでは何も面白くはありません。

    また、運動会ではズームレンズが活躍するのですが、ズームにするとレンズの特性上画面が暗くなります。そうすると、シャッタースピードを長くして明るくするのですが、速く動いている被写体を撮るにはシャッタースピードが短くないとブレてしまいます。そこで、頑張って撮った写真も後から見るとブレたり暗かったりで駄作ばかりになるのです。実は、高倍率でも明るいズームレンズがあります。(f値が通常のズームで4くらいですが、これが2.8かそれより小さいものがおすすめです)しかし、これはカメラ本体より高いので、年に一度しか使わないならもったいないですね。