むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 診療報酬

    みなさんが病院にかかる時には保険証を持っていくと思います。保険証があれば、1割から3割の間の自己負担となり、残りの7割から9割は国が負担してくれます。正確には国民健康保険(国保)や社会保険(社保)が払ってくれます。

    病院は、この患者負担の残りの部分を国保や社保に請求しないと収入になりませんが、その請求の仕方が難しいのです。病院の受付には医療事務の資格を持った人たちが働いていますが、私たち医者は医療事務の仕組みを全く習いません。診療報酬請求(レセプト)という書類を正確に作らなければ病院の収入にはならず、自分のした仕事も、間違えばタダ働きになってしまうのです。

    私がこのレセプトを初めて見たのは医者になってから13年も経ってからです。国立病院に勤務していた頃に、自分の行った診療に関するレセプトは自分で点検することになっていました。点検するといっても、そのレセプトがどのような仕組みになっているかは一度も習ったことがなかったので、医療事務の人が作ったレセプトを医学的見地から正しいかどうかを見ていただけで、それは全くチェックになっていませんでした。

    これから自分のクリニックを経営するため、このところ毎日「診療報酬入門」のような本を読んでいます。今まで知らなかったことだらけで、驚きの連続です。これでも、民間でずいぶん長く働いているので、大学や国立病院時代とは比べ物にならないくらい仕組みを理解しているつもりでしたが、全く足りていませんでした。これほど病院の経営に直結する医療事務については、医学部で教科として教えるべきでないかと思いました。

    しかし、裏を読むなら、あまり勉強して医者が診療報酬の仕組みについて詳しくなってしまうと、国はたくさん支払わないといけなくなるので、医者はその辺について詳しくない(請求漏ればかりしている)方がありがたいのかも・・・と思ってしまいます。

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  • 鍼灸勉強会2

    先週に引き続き、鍼灸勉強会を行った。四国から来られている鍼灸師兼薬剤師さんと私で先週と同じ患者さんを診て針治療を行った。四国の先生は彼独自の理論と経験で丁寧にツボを探り、針で刺激し治療する。私は私の理論でツボを決め、そこに針を打つ。不思議なことに、同じ患者さんの同じ症状を見ても使うツボは異なっている。

    どっちがすごいかを競うわけでなく、お互いの技術を披露し、刺激を受け、さらに勉強する。そういう会だ。鍼灸の世界は漢方のように2,000年以上昔から理論も技術も今に伝えられている。しかし、おそらく日本が鎖国していた江戸時代には日本独特の発展を遂げ、現代の中国バリと日本の鍼(はり)ではだいぶ異なってきていると思う。特に日本の場合、武道や茶道のように針道とでもいうべき世界になっており、師匠に弟子入りして初めて秘伝の技を伝授される、門外不出の方法といった世界だと思う。門外不出だから、他流試合などはあまり行わずに、自分のやり方を師匠から弟子へ、親から子へと、職業としての閉ざされた世界で密かに伝えられてきたのではないか。

    今の世はそんな世界ではなく、良いものは論文にして学会発表する。中国などは特許やISOなど世界標準を狙った政策を国を挙げてとっており、日本などとても太刀打ちできない。こんな勢いでは、東洋医学を使うなら中国に特許料を払えとか、漢字を使うなら金を払えとか言われそうだ。

    そんな面倒なことは国や厚労省に任せて私たちにできることは腕を磨き、一人でも多くの患者さんの痛みや悩みを取ってあげることだ。

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    写真は緑川ダム。梅雨の長雨で水が濁っていますが、青く晴れた空と紫陽花が綺麗です。

  • 在宅医療2

    先週に引き続き、Wクリニックの在宅部門に同行させていただきました。今回は、老人ホームやグループホームだけでなく個人宅にもお邪魔しました。個人宅ではもちろん介護職員がいるわけではないので、お年寄りの世話をするご家族がおられるのですが、やはり通院できない理由があるわけです。90歳代のおばあちゃんのお子さんが70歳代で持病のため車椅子だったりと、どこも大変です。だからこそ、在宅医療というサービスがあるわけです。

    在宅医療はクリニックだけで成り立つものではありません。訪問看護や訪問リハなど多職種が介入します。通院できない患者さんができるだけ自宅で不安ない生活を送れるようなサポート体制があるのです。

    しかし、こういった制度をどうしたら利用できるか、よく知られていません。大きな病院では、このような在宅の医療に対する理解が少ないですから、在宅医療に力を入れているクリニックに相談するのがいいでしょう。また、「ささえりあ」という熊本市の地域包括支援センターがお近くにあると思いますから、そちらで相談に乗ってもらえます。

    ある程度の歳になったら、健康相談ができるかかりつけ医を持ちましょう。気軽に話しやすいドクターでないと意味がありません。また、悩みをしっかり受けけ止めて聞いてもらえないといけません。人生のパートナーを選ぶつもりで、しっかりかかりつけ医を決めることをお勧めします。

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  • 鍼の勉強会

    愛媛県から薬剤師兼鍼灸師さんが熊本に来ました。そこで、同僚の肩こりや腰痛をみんな集まって「私ならこうして治す」という実践勉強会をしました。

    集まったのは、その薬剤師兼鍼灸師さん、漢方を得意とする薬剤師さん、漢方を得意とする精神科ドクター、理学療法士(リハビリ)、そして私(漢方と鍼を実践する)。それぞれが、同じ患者さんを診察して、鍼治療の方法(どのツボに治療するかなど)をディスカッションしたり、リハビリからはストレッチ体操の方法を伝授。私は、鍼に整体の理論を組み合わせたハイブリッド東洋医学を披露しました。

    お互いプロとして、治療実績があるものの、同業者が同じ患者さんに対してどんな治療をするかなんて、めったに見る機会はありません。お互い良い刺激になり、とても勉強になりました。このような他職種カンファレンスは、ありそうでなかなかありません。特に、整形外科にかかっても治らなかったような症例が漢方や鍼に来ることが多いので、東洋医学で治せた時の喜びは大きいです。そして、医師、薬剤師、鍼灸師など職種の垣根を超えて同じような患者さんを治療するプロとしてお互いのことを尊重し、学び合う姿勢が素晴らしい。今後も貪欲にこのような勉強会を開いて、切磋琢磨したいと思います。

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  • 訪問診療は楽しい

    前に書きましたが、訪問診療(在宅医療)の実際について勉強するため、Wクリニックにお邪魔しました。朝から訪問診療のチームに同行させていただきました。行き先は熊本市の北区から南区まで広い範囲で、午前中で5軒の老人ホームを訪問し、入居者の方の定期巡回です。

    今までに中に入ってみたことのある老人ホームは数えるくらいしかありませんでしたが、今日一日で5箇所も巡ると、それぞれのいいところ、悪いところがわかってきます。それは、玄関から一歩入っただけで、その施設の雰囲気が伝わってくるのです。木をたくさん使った建物や、ホテルのような建物など、ハード面での好みもあるかもしれませんが、そういうところは大した問題ではありません。部屋の広さなどはどこも大差ありません。大きく違うのはスタッフの雰囲気です。

    もしご家族が老人ホームに入居される場合は、たくさん見学してみてください。決して建物や広告に騙されないように。日中のレクレーションの様子や、食事の内容、トイレ介助などの雰囲気を確かめてみてください。そして、入居者さんの笑顔が確認できれば間違いないでしょう。

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    それにしても、老人ホームでお年寄りが楽しそうに笑顔で過ごしているのはなかなか現実には見ません。それはCMの世界だけです。何かが間違っていると、ずっと思っていました。例えば、デイケアでみんなが歌っている歌が聞こえてきますが、ほとんどが「ふるさと」などの童謡です。でも、今のお年寄りの好きな歌は、五木ひろしや山口百恵です。ピンクレディーも盛り上がります。デイケアの若いスタッフが想像するお年寄りのイメージが古すぎるのだと思います。あと数年したら、デイケアでは松田聖子の時代になると思います。時代を読み間違っているから、お年寄りの笑顔が少ないのでは?と思いますよ。