むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 週1回の糖尿病薬

    以前このブログに紹介したことのある週1回タイプの糖尿病治療薬の話です。週に1回しか飲まないでいいというのはホントかな?と思うのですが、症例を重ねて見て、本当に効くのを確認しました。なんとも便利な薬です。ただ、糖尿病も進行して複数の薬を使わないと行けないようなら、あまりメリットがありません。そう考えると、健診で見つかったばかりの軽い糖尿病で、食事療法や運動療法で頑張ればなんとかなるかもしれないけどとりあえず薬できちんと下げておく、というような症例ではとてもいいと思います。

    また別の便利な使い方としては、高齢者です。週1回なら訪問看護などのサービスを受けた時に飲ませてもらえばいいし、週末に家族が様子を見に来た時に1回だけきちんと飲ませてもらってもいいと思います。週1回製剤のメリットはそういう服薬管理のしやすさだと思います。

    ところで高齢者の糖尿病の治療ですが、若い年代できちんと血糖管理をしておけば、歳をとってからはかなりゆるい血糖管理で良くなります。若い時代にきちんと治療することで将来のぶんまでリスクを軽減できるのです。歳をとって厳しい血糖管理をしていると、時に低血糖を起こすことがありそちらの方が問題となります。外国の大規模臨床研究で、厳しすぎる血糖管理は問題だという結果が出ています。そういう意味でも、若い時代はきちんと厳しく節制し、歳をとったら週1回製剤などを使いながら治療してはどうかと思っています。

    綺麗な夕日でした。錦ケ丘中付近にて。

  • 五月病

    季節によって色々な疾患があります。1月はインフルエンザ、2月は感染性胃腸炎、3月4月は花粉症、そして5月は五月病です。五月病はストレスからきた心身症のような病態ですが、学生さんも社会人もかかります。先日FMラジオを聴いていたら、アメリカ人がゲストに来ていました。パーソナリティーが五月病って英語でなんていうんですか?と尋ねたところ、アメリカに五月病はありません。という返事。なぜならアメリカの新学期は四月ではないからです。会社の会計年度はたいてい1月始まりと思いますが、学校は9月です。夏休みを挟んで学年が上がります。五月病というのは日本が4月に新年度を迎えて入学、入社、転勤、進級、部署の異動などがあり、環境の変化と慣れない仕事や学業に一生懸命頑張った結果、5月ごろになって精根尽きてしまうのです。

    朝起きたら仕事に行けなかったとか、通勤中にドキドキしはじめてパニックになったとか、いろんなパタンがあります。みなさん真面目な方ばかりです。適当に気をぬけない性格が自分を苦しめてしまっています。会社にとっては、職員さんは宝ものです。職場環境のせいで体調を壊されたり離職されては本望ではありません。どうか、みなさん話せる上司と相談してください。そして、無理しないでください。

    私たち心療内科を標榜するクリニックも何かお役に立てるかもしれません。職場の環境を改善することはできませんが、相談することで何か解決へのアドバイスができるかもしれません。また、うつ状態に陥ったり、不安障害や不眠症になってしまった場合は薬でかなり改善しますので、あまりひどい状態になる前にご相談ください。

    アジサイ:桜十字病院のラウンジにて

  • 夏かぜに葛根湯は使わない

    まだ5月ですが、季節的にはもう夏といってもいいほどです。昼の日差しは危険を感じるほどです。運動会の練習をしている子供さんたちの健康が心配です。こんな暑い毎日ですが、朝夕は結構涼しくなり、1日の温度差が大きいのも事実です。そうすると、外来には風邪症状で受診される人が結構増えています。特に38度から39度の高熱を出した人が多く、本当にきつそうです。

    この、発熱患者さんたちですが、原因はいろいろです。今日一例目は胃腸炎。高熱と下痢です。家族内で似た症状だと、下痢や嘔吐がなくても少し胃がムカムカするだけでもうつった可能性ありです。次に溶連菌感染。喉が腫れていたんでいる子供さんです。次にインフルエンザ。今はだいぶ減っていますが、今日見たのはB型でした。まだ出ています。そして、もう一例がおたふく風邪。小学生でした。耳の下から顎にかけて大きく腫れて触ると痛がります。熱も高かったです。

    このように、熱が出た=風邪とは限りませんから、やっぱり疑って検査することが大事ですね。それから、夏風邪には葛根湯はあまり効きません。風邪引いてゾクゾクした寒気を伴う時が葛根湯の出番なのですが、今頃の風邪では寒気が少ないです。そういう時には葛根湯以外の漢方を使うのですが、日本ではあまり扱っていませんので、私もほとんど処方しません。夏の風邪に葛根湯を飲むと体がさらに温められ、ただでさえ高熱でうなされているのにもっときついことになります。

    昨日と同じ麦畑。絞りの条件を変えて撮影

  • 夏は血圧の下がりすぎに注意

    暖かくなって、皆さん随分血圧管理が良くなってきました。やはり冬に比べると、春から夏にかけては血圧が安定する人が多いようです。一方、気になるのは下がりすぎです。冬飲んでいる薬を夏の間も飲み続けると下がりすぎることがあります。上の血圧が100を切ったり、ふらつきなどの症状が出る場合には、薬を軽くしたほうがいいかもしれません。

    高血圧の薬として利尿剤が入っている場合があります。なかには、合剤で利尿剤成分を含む薬剤もあります。このような場合、特に夏場は注意が必要です。なぜなら、夏は何もしなくても汗をかくことで脱水になりやすいからです。利尿剤で体から塩分を抜いて血圧を下げているのに、脱水予防にミネラルウォーターを飲むならプラマイで効果が打ち消されてしまいます。最初から脱水予防に夏場の利尿剤は加減した方がいいと思います。

    そう思って私はたいていの患者さんで今ぐらいの季節に内服薬を見直すのですが、利尿剤は結構難しいです。夏場の脱水予防と思って利尿剤を中止すると、途端に足がむくんでくる患者さんがいます。日頃から利尿剤で尿を出しているので、薬を飲まないと尿量が一気に減ってしまうのです。やはり理論的には夏場の脱水を予防するため利尿剤を減らす、と思っていても、実行する際は慎重にした方がいいようです。

    (有料老人ホーム)ホスピタルメント桜十字の玄関のローズタワーです

  • ビタミンDの効能

    「みんなの家庭の医学」という番組があります。火曜の夜です。とても興味深い内容でした。骨を強くすることで知られるビタミンDが運動機能を高めるだけでなく認知機能も高めるという話でした。それが本当なら、画期的な話です。これからの高齢社会でとても有用なビタミンであろうと思われます。

    一方、このような番組にはトリックがあるので、それを十分検証するまでは安易に飛びついてはいけません。例えば、血液中のビタミンDレベルと認知機能や運動機能に因果関係が認められたというのは事実で、これを見るとビタミンDが運動機能と認知機能に関係しているだろうということはわかります。しかし、認知機能が低下した人がビタミンDをたくさんとれば認知機能が改善するというデータはまだありません。昔からビタミンDは高齢者に骨折予防として処方していましたが、そういう人たちに認知症が改善したという事実は未だ聞いたことがありません。

    もう一つ気をつけないといけないのは、人工的に作ったビタミンDを摂取するのと干し椎茸のような食材からビタミンDを取るのとは同じではないという点です。サプリの会社はいかにサプリメントにはたくさんのビタミンが含まれるか、例えばカプセル1個にしいたけ何十個分のビタミンDが含まれるというかもしれませんが、それが優れているという証拠はありません。別の研究ですがβカロチンが体にいいということでβカロチンのサプリをたくさん飲ませたら肺がんが有意に「増加」して研究がストップされたという事実もあります。早とちりせず、まずは干しいたけ、適度な日光浴程度のビタミンD摂取を心がけるくらいでいいと思います。ちなみに私は干し椎茸を毎日1個食べています。安い椎茸をベランダに3日ほど並べておくと今の季節簡単に干し椎茸ができますよ。

    熊本市動植物園の駐車場の花壇にて