むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 温熱療法

    がん細胞は熱に弱いことから局所的に体内の温度を42度くらいまで上げることで癌治療をすることができます。この温熱療法を外来でやっている病院もいくつかあります。昔から難病治療に湯治がいいと言われており、温泉場に長期滞在する話もありましたが、最近では昔話のように忘れられている感じがします。しかし、温熱療法をわざわざ病院でやっているのを考えると、自然豊かな山里の温泉宿で湯治するのもいいのではないかと思います。また、心不全にはサウナが有効というデータがあります。鹿児島大学から研究論文がいくつも出ています。

    江津湖のほとりにあるばってんの湯が昔は「ばってんバーデン」というネーミングだったことを知る人は結構熊本に古いと思います。この名前はドイツのバーデンバーデンという温泉地のネーミングをもじったものです。社会(地理)の教科書にも出てくる湯治場です。アメリカ(確かアーカンソー州だったと思います)にはバーデンという町があり、ここも温泉場です。やはりドイツのバーデンバーデンに由来した地名だと思います。ニュージーランドにも温泉保養所があります。このように世界中あちこちで温泉には病気を治療する湯治場があるのです。

    今日は、ゴールデンウィーク最終日で久しぶりに御船の「華ほたる」に行ってきました。御船インターからすぐ近くの小高い山の上にあり自然豊かでいい温泉です。今日は1日で2万歩も歩いたのでいい汗を流してきました。

  • うつは心の風邪

    当院では、内科と心療内科を分けることはしていません。ドキドキするという訴えでも、心療内科かもしれないし、不整脈かもしれません。これを心療内科として扱うと、内科的疾患が隠れていても見逃してしまいます。先入観のバイアスがかかるからです。まずは、体の問題と心の問題を広く疑ってチェックします。

    当院の扱う心療内科の患者さんで多いのは原因がわかっているうつです。職場や家庭のストレスが原因となっていることが多いようです。大抵は特定の人物が何らかの原因となっており、その人とのトラブルがなければストレスはないんだけど、と言われます。このような場合、転職や離婚で解決するのかもしれませんが、うつ状態では深い思慮ができないため、そういう状況では重要な決定をしないことをお勧めします。このようなうつ状態はしばらく薬を使いながら休養するとぐんと良くなることが多いので、転職や離婚は体調が良くなってから考えたらいいと思います。

    幸い、このところの求人倍率は高く、転職しようと思ったらなんとかなるご時世です。今、いろいろ悩んでいる人にとってはラッキーかもしれません。ただ、転職を考えても面接で暗い顔をしていてはうまくいきませんから、笑顔が出るくらいまで回復してから活動したほうがいいと思います。自力で何とかしたいと思ってもそれが難しいのです。こういう時は、一時的に薬を使っていいと思います。アメリカなどはうつは「心の風邪」みたいな認識で気軽に相談できる精神科のかかりつけを持っていると言われます。日本もそんな時代になってきたようです。

     

  • 糖尿病の新薬

    糖尿病の勉強会に参加してきました。最近はSGLT2阻害剤という新しい作用機序の新薬の話題で持ちきりです。糖尿病は読んで字のごとく尿中に糖が出るのですが、この新薬はもっとたくさん尿中に糖を出させる働きがあります。その結果、血液中の糖が下がってくるという逆転の発想です。尿中に糖を捨てるので、食べたカロリーのうち一定量を食べなかったことにしてくれるわけです。その結果、体重減少効果もあります。通常糖尿病の治療薬は血糖は下がるものの太りやすいという副作用があるのですが、この新薬は太らないどころかダイエット効果が期待できるということで、面白いと思います。

    ただ面白いのはそれだけでなく、これまでいろんな薬で成し遂げられなかった心筋梗塞などの合併症での死亡を有意に低下させるということです。これは素晴らしいことです。糖尿病が怖いのは心疾患の合併症です。これまでの糖尿病治療剤でこれをきちんと減らせるということを証明できた薬はありませんでした。今度の新薬が初めてです。

    そんなすごい薬に副作用がないかということを、一応書いておきます。糖を尿中に排泄させる薬なので、水分をたくさんとってもらう必要があります。特に夏場は脱水にならないように注意が必要です。また、尿中の糖に細菌感染を起こすと尿路感染(膀胱炎など)になりやすいと報告されています。そういった副作用の報告はあるものの、心疾患の合併症を本当に減らせるのなら、これからは使わないことはないと思います。もちろん当院でも処方しています。この薬を追加するのではなく、今飲んでいる薬から切り替えでもいいと思います。興味ある方はご相談ください。

     

     

  • 糖尿病と認知症

    ブルーインパルス、熊本に来ましたが、見ましたか?

    私はクリニックの駐車場でずっと待っていたら、真上を飛んで行きました。

     

    糖尿病の勉強会に参加しました。糖尿病の合併症についての講演です。糖尿病の合併症はたくさんあります。目の糖尿病性網膜症、心臓の心筋梗塞や狭心症、下肢の閉塞性動脈硬化症、足が痺れる糖尿病性末梢神経障害などなどです。特に心筋梗塞などは命に関わるのでこれまで重要視されてきました。しかし、これら大血管病変は医学の発展によりかなり抑制できるようになりました。

    一方、これからの糖尿病合併症として重要なのが認知症です。認知症はなかなか予防も治療も難しいのですが、糖尿病の合併症として認知症が起こってくるので、血糖コントロールを厳密に行うことで認知症が予防できるとのことです。これは今後重要なポイントとなることでしょう。

    もう一つの合併症が、ガンです。糖尿病で心疾患の合併症がうまくコントロールできて命を救われたと思っていたら、癌になってしまう、その確率が糖尿病がない人に比べて糖尿病があるとかなり高いそうです。がん細胞はクエン酸サイクルというエネルギー産生系がおかしくなっており、解糖系のエネルギー産生に頼っていることがわかっているので、糖が高いとがん細胞の餌がたっぷりあって増殖しやすい環境にあるのです。糖質制限が癌治療に有効というデータが最近話題です。

    やはりいつの時代も糖尿病は怖い病気です。ほとんどの場合、原因は食べ過ぎと運動不足ですから生活習慣をきちんとすることがまず第一です。

     

  • 不眠症から末期ガンまで

    土曜日は、平日に来院できない現役世代の若い患者さんでいっぱいですが、遠方からわざわざ来院いただく患者さんもおられます。できるだけ時間をかけて丁寧にお話を伺うようにしていますが、風邪や血圧のお薬だけでいい方にはお待たせして申し訳ございません。

    末期ガンで抗がん剤にするか漢方などにするかは本人のとっては命がけの選択です。抗がん剤が抜群に効くのなら悩むことはないのですが、今の段階では抗がん剤でかえって体力を奪われて肺炎などのために命を落とすこともあるし、抗がん剤が効いて半年くらい長生きしたとしてもその半年が合併症で寝たきりだったらあまり価値のある半年ではありません。そのような相談を持ってこられたらどうしても3分診療というわけにもいかず、時間をかけて話を聞いてしまいます。体力をつける人参、免疫力を上げる霊芝、抗がん作用のある白花蛇舌草などを組み合わせて処方します。一部保険が効かない生薬もありますが、薬局にもあまり高額にならないように頼んでいます。

    不眠症も単純な不眠からうつ病までいろいろありますから使う薬は人それぞれです。最近は眠剤の習慣性や依存性に注意喚起されており、できるだけそのような薬を使わずに眠れるような工夫をしています。

    そんなこんなで土曜日は混み合っていますが、どうぞご容赦ください。