むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 懇親会で打ち解ける理由(わけ)

    日曜は東洋医学会熊本県部会でした。私は会長で主催者でした。今回のプログラムは3演題。菊池の古荘医院の渡辺先生、私村上、そして特別講演として九州大学総合診療部の貝沼先生でした。こじんまりした学会ですが、大変勉強になりました。実は熊本大学には漢方を専門としている診療科がありません。実は私が10年以上前に熊本大学病院で漢方外来を始めたのですが、ほとんど知られていなくて患者さんは一日で2−3人でした。その後私の異動で漢方外来は消滅し、現在に至ります。

    一方九州大学は本日お越しいただいた総合診療部が積極的に漢方診療をされており、漢方研究で学位も取れるそうです。熊本大学には東洋医学研究会という漢方を勉強するサークルがありますが、もし大学を卒業してから漢方をさらに勉強したいという場合、熊本で勉強する所がありません。今日、九大の貝沼先生にお尋ねしたところ、九大の総合診療部に入局してもらえば、漢方の教育をした上で熊本にお返ししますとのことでした。漢方を勉強したいと思っている医学生その他のみなさん。私に言っていだければ、仲介します。

    実は、こういう学会でためになるのは学会での勉強だけでなくその後の懇親会です。お酒の勢いもあり、ざっくばらんな話が聞けます。これは医療の分野に限ったことではないと思います。勉強中は交感神経が緊張しますが、飲食中は副交感神経が優位になります。すると、警戒心が取れて打ち解けやすくなるのです。家族で一緒に食事をとるとか、恋人同士いっしょに食事をするというのはそういう意味で食事が副交感神経を活発にすることで親密になれるのです。したがって意識的にあるいは戦略として食事会を利用すべきだと思います。

     

  • グレイの解剖学

    グレイの解剖学というのは、医学部に入ってすぐに勉強が始まる解剖学の有名な教科書です。解剖学を学んで初めて、医学の基礎中の基礎である体の構造を理解します。グレイのテキストはとてもリアルなカラーイラストで世界中で使われています。アマゾン・プライムビデオでアメリカのドラマを検索していたら「Grey’s Anatomy」というTVドラマがあったので、見てみました。この番組は、アメリカで外科の研修医が救急病院で研修を始めるという医療ドラマです。見ていると、自分が研修医だった頃を思い出します。まるまる48時間働きずくめです。研修医は奴隷のように働かされます。医者はいい仕事のように思われていますが、大変な肉体労働です。このドラマを見てもわかると思います。

    そんな日々もあっという間に過ぎて、気がつけば大学教授は自分より年下の時代になりました。いま、私の仕事といえば、4畳半くらいの診察室に一日ずっと座ってパソコン入力です。全然動くことがありません。走り回っていた研修医の頃とは大違いです。

    先日から募集してた医療事務を採用しました。一名増員です。医療事務は受付、会計だけが仕事ではありません。私が入力した電子カルテの記録から国が定めた診療報酬の規定に照らし合わせて適切に医療費を計算しないといけません。診察が終わってから会計までに時間がかかるのは、このプロセスです。しかも、患者さんが会計を済ませた後も、医療行為からレセプト(診療報酬請求書)を作成して、国保や社保に提出しないといけません。患者さんの負担はかかった医療費の1割から3割ですから、残りの7割から9割の金額を国の保険制度に請求する仕事があるのです。ミスしたら国は払ってくれません。医療行為としてはすでに終わっているので払ってくれないとまるまる損になります。医療自体が悪徳でも儲け主義でもなく、100%患者さんのことを思って行ってもレセプトを正しく作らないと国は減点してくるので、医療事務は病院の大蔵省としてとても重要な部門なのです。

  • 冬の漢方

    東京の方ではいよいよインフルエンザが流行期に入ったとのニュースが発表されました。時間の問題で全国的に広がってくることと思います。熊本の場合は人の流れとともに福岡ー大牟田ー荒尾という感じで広がってくることが多いような気がします。私は毎日数十名の風邪の患者さんと接触しますが、うつることはありません。うつらない自信はあるのですが、油断は大敵です。何も対策していないわけではありません。もちろん診察のたびに手を洗うとか、アルコール消毒するとか、診察した手で自分の顔(目や鼻)を決して触らないことなどは徹底しています。しかしそれだけではありません。私には漢方があります。

    自分で毎日飲んでいいるのは霊芝です。サルノコシカケともいいます。がん患者さんの免疫を上げる健康食品として昔から重宝されている貴重な漢方薬です。私はこれを毎日水筒に入れて飲んでいます。また、自宅には板藍根(ばんらんこん)を常備しています。霊芝や板藍根は門前の凌雲堂にて販売中です。中国では風邪の季節に板藍根茶を飲むのは常識です。またお風呂であたたまるのにいいのはオリジナルの漢方生薬風呂です。潤美湯と名付けて凌雲同薬局で販売しています。

    一方、保険の効くツムラを始めとする漢方エキス製剤では、葛根湯、小青竜湯、麻黄湯、麻黄附子細辛湯、桂枝湯などいろいろな処方が風邪に処方されます。一人ひとり体力や反応性が違うため、同じ風邪でも処方は人それぞれ異なります。風邪かなと思ったらすぐに飲まないといけません。しかし、風邪の症状は狙ったように夜だったり土日だったり、病院のやっていない時間に症状が悪化します。やはりある程度の自分にあう漢方は常備しておくに限ります。

    ホスピタルメントにて

  • 誤解しやすい番組

    「ためしてガッテンで言っていたので、おにぎりを食べました」と患者さんが言うのですが、残念ながら昨日のガッテンは見そこないました。勉強会に参加していたためです。しかし、運良く昨日の番組は録画していたので、今日帰宅してから見てみました。内容は、深夜のどか食いをやめましょうという話です。帰宅が遅いお父さんたちはお腹が空いているものですから、深夜にガッツリ食べてしまいます。あとは風呂に入って寝るだけです。そうすると、血糖は一気に上るのですが、それに引き続いて血糖を下げるためにインスリンが分泌されるため、深夜気づかないうちに低血糖になるということです。低血糖は認知症や心血管イベントのリスクとなります。

    そこで、番組で言っていたのは「間食のすすめ」です。夜遅く帰宅してご飯を食べる習慣の人は、遅い夕食の前におにぎり一つ程度の間食をとりましょうという話です。しかし、おにぎりを食べればいいという単純な話ではありません。夕方おにぎりを食べておくと、空腹が紛れるため<深夜にどか食いしないで済む>というところが大切です。要は「分食することで結果的に炭水化物制限しやすい」ということであって、おにぎり一個分のカロリーを余分にとっていいと言うことではありません。

    しかし、番組を見た人は自分に都合のいい部分だけ頭に残るため、冒頭のように「おにぎり食べました」とその部分だけ実行してしまうのです。もっと番組は誤解を与えないように構成すべきだと思います。無駄にクイズ形式にしたりすると、誤った情報があたかも正解だったかのような錯覚をする場合もあります。せっかくいい番組なのですが、このガッテンの番組構成はいつもイマイチだと感じます。

  • 耳鳴りの治療

    耳鳴りで困っている人はかなりいらっしゃいます。耳鼻科で相談しても、年のせいだと言われることが稀ではありません。漢方を専門にしているとこのような人からもちょくちょく相談を受けます。実際、耳鳴りの治療は非常に難しく一筋縄では行きません。

    第一に加齢から来た場合は聴力も低下しており、セミが鳴くようなジージーとかワンワンとか比較的低い音が聞こえるようです。このような耳鳴りはかなり難治です。一方、若い世代で見られるのはキーンという高音の耳鳴りです。これは、多くの場合ストレスと関連しています。耳鼻科で検査すると突発性難聴と言われてステロイド治療を受けて治る場合もあります。このように、耳鳴りは音の性質により治りやすいものと治りにくいものを区別できます。

    漢方では高齢者の耳鳴りは腎虚と言います。八味地黄丸などが処方されます。若い人のキーンという耳鳴りは肝鬱に関連します。加味逍遙散、抑肝散、四逆散などを用いて治します。このように病態によって治療薬を使い分けます。この分野ではもしかしたら西洋医学より漢方のほうが治療理論が進んでいるかもしれません。同じ理屈で若い世代のキーンという耳鳴りは西洋薬で安定剤や抗てんかん薬などで気持ちを落ちつければ取れる場合があります。漢方にとらわれる必要はありません。漢方の理論で西洋薬を吟味するという治療法もあっていいと思います。むしろ私の通常の治療はそのような感覚です。西洋薬を漢方的解釈で使ったりします。