むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 高齢者にガイドライン通りの治療は必要なのか?

    毎日コロナワクチンを打っています。かかりつけの患者さんが多いですが、なかにはよそのクリニックがかかりつけで、たまたま当院で予約が取れたという人も来られます。料亭なら一見(いちげん)さんですが、もちろん断ることはありません。そういう患者さんとお話をしていて、時には面白い話を聞きます。とあるクリニックがかかりつけの90歳くらいのおばあちゃんの話。80歳ごろまで血圧やコレステロールの薬をもらっていたけど、主治医の先生が、もうこの年になったら治療は必要ないと言われ、薬は全部やめました、至って健康です。とのこと。10年くらい前の私は、ガイドラインに縛られてこういうことは常識はずれだと思っていた時期もありましたが、今考えると、とても優しい先生なのではないかと思います。

    コレステロールは動脈硬化が進むから下げたほうがいいというのが通説ですが、80過ぎて下げる意味があるかと言われれば、殆どないと思います。ただし、もし脳梗塞や狭心症などの既往があれば、下げたほうがいいのは間違いありません。血糖もそうです。若いときにヘモグロビンA1cをとにかく下げろと口やかましく言われ続けた患者さんは、80過ぎたからもう血糖コントロールもだいたいでいいと言われたら、まず納得されません。しかし、下げすぎるのはかえって心血管リスクが上がりますから、程々がいいのです。

    アリセプトなどの認知症の薬も、物忘れが出てきたから飲みたいと言う人(本人より家族からの希望)が多いですが、ほとんど効果はありません。かえって、性格が凶暴になったりしますから、薬を切るという選択が有効な場合もあります。ガイドライン的には血圧も血糖(A1c)も、コレステロールも、いくつ以下に下げましょうと言われますが、80すぎの高齢者にはどのくらいその指針に意味があるのか、よく考え直さないといけないとおもいます。

  • 汗にもいろいろあります

    蔓延防止がおわって、街には活気が戻ってきています。車の交通量もだいぶ戻っています。土曜の午後、久しぶりに渋滞をみました。そういえば、以前はこのくらい道が混んでいたよなーと懐かしく思えました。これからしばらくは感染者数もへって、経済活動も活発になり、明るく楽しい夏が来そうです。これは去年の夏もそうだったので、たぶん大丈夫と思います。問題はその後です。秋ごろから次の波が来ればまた自粛の冬が来るかもしれません。まあ、先の悪い予感は信じずに、しばらく続きそうなハッピーな夏を満喫したいとおもいます。

    涼しい室内に引きこもっていると、毛穴がふさがって汗が出ない体質になります。これから、ワクチンも効果が出てみんなが外に出始めるとき、相当暑いと思われますが、体が夏に対応できていないと熱中症になります。今のうちから汗をかく練習をしたほうが良さそうです。スポーツをする人は問題ありません。仕事でオフィスにこもっている人や在宅などで家から出ないという人は要注意。温泉や家庭のお風呂でもいいのでしっかり温まって汗をかきましょう。

    汗について少し解説すると、暑くてかく汗は生理的なもの、あたりまえ。緊張してかく汗は交感神経。安定剤や漢方である程度抑えられます。人によって頭から滝のように汗が出たり手のひらがベタベタになる人、ワキ汗がひどい人などいろいろあります。寝ていて汗をかく人(寝汗、盗汗)、これは体力低下を意味します。そして、冷や汗。上司に怒られたり、失敗をやらかしたときのもの。もう一つ、更年期のホットフラッシュ。涼しいはずなのに自分だけ暑くて汗が吹き出す。このように発汗にもいろいろあり、漢方ではそれぞれに対応した治療法を考えます。

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  • 痛風の季節

    痛風は足の親指の付け根が腫れて痛むものです。風が吹いても痛いという話で、相当な痛みを伴うようです。人によっては小指側だったり足首、足背が腫れて痛む場合もあります。痛すぎて歩けない、仕事に行けないということが多いです。痛風の原因は高尿酸血症です。尿酸が高いと関節の組織内に尿酸が沈着して炎症を起こすそうです。尿酸はプリン体という核酸が代謝されるとできるのですが、プリン体は肉やビールに多く含まれます。毎日のように焼き肉を食べたりビールを飲むと尿酸が上がります。しかし、実際はそれだけでなく、どのアルコールを飲んでも上がるようなので、ビールをハイボールに変えてもだめです。プリン体ゼロのビールもアルコールだったら尿酸は上がります。ノンアルコールビールはOKです。

    不思議と、毎年今ぐらいの季節に痛風発作で来院される方が多いようです。なぜ季節変化があるのかわかりません。梅雨時にビールなどのアルコール消費が増えるのでしょうか?とにかく、毎日数名の痛風発作の患者さんが来院されます。ほとんどの症例は腫れた足をぱっと見ただけで診断が付きます。しかし、念の為採血してみると尿酸の値は様々です。すごく高い人からあまり上がっていない人まであります。痛風発作では、尿酸があまり上がっていない場合もあります。大事なのは血中の尿酸の値ではなく血管外(組織中)に沈着した尿酸だからです。

    痛風発作は通常のロキソニンのような鎮痛剤だけでは1週間たってもまだ痛みます。当院ではコルヒチンなどの特効薬をいくつか組み合わせることで素早く炎症を取ります。尿酸を下げる治療は痛みが落ち着いてからになります。不思議なことに、慌てて尿酸を下げると、痛みが悪化するといわれているからです。当院では尿酸の薬を処方するときには、開始のタイミングを処方箋に書いて差し上げています。

  • 動悸の原因と治療

    動悸がするという訴えで来院される方が結構います。動悸というと、心臓がドキドキすることですが、人によっては心臓が速くうつとか、脈が乱れるとか、脈は乱れていないけど強く打っているのが気になる、とか、人それぞれです。本当に不整脈(心疾患)の場合もあれば、精神的なものもあります。毎日何度も起こるようなら検査をすればちょうど動悸がする時の心電図などが取れるので確認できるのですが、それが難しい場合はホルター心電図と言って、24時間心電図を記録し続ける道具を使います。最近のホルターは小型化しており、防水になっているので日常生活はほとんど通常通りしてもらうことができます。この検査をするときは、いつもどおりの生活をしてください。安静にしていつもの動悸がでないと意味がありません。

    いろいろ検査をして不整脈が見つかった場合、経過観察でいい不整脈と、治療が必要な不整脈があります。心エコーなども行い、心臓の評価をして治療方針を立てます。一方、不整脈が記録されなかった場合、心因性の可能性が高くなります。これは、たいてい「強くうつ」あるいは「速くうつ」という表現をされることが多いです。

    私は心因性と思っても、心拍が速くなっているようなら心臓の薬を使って遅くなるよう調整します。これがうまく効くと、不思議と心も穏やかになり、快適な毎日が過ごせます。下手に安定剤を使うよりよほどいいと思います。

  • ワクチンが効くまで1ヶ月かかるそうです

    検査会社の人から聞いたお話。コロナワクチンを打ってから抗体ができるまでの期間は人それぞれですが、若い世代は3週間ほどでピークに達するのに対し、高齢者は1ヶ月以上たってゆっくり増えてくるそうです。今回のワクチンはmRNAでできているのですが、RNAはDNAという遺伝子(設計図)からタンパク質を合成する際につくるDNAのコピーです。RNAは必要なときに必要な部分だけできてくるので、DNAに書かれた全設計図のうちの一部分というわけです。今回はこのRNAを人工で設計して注射にしたわけです。筋肉内に注射されたRNAはタンパクの設計図なので、体内でRNAに書かれたとおりタンパク質を合成するのですが、出来上がったタンパク質がウイルスの表面のスパイクと同じものなので、免疫がつくわけです。高齢者はアミノ酸やビタミンなどの栄養が不足しており、蛋白の合成力も落ちているため、効果が出るまで時間がかかるものと思われます。年をとったら傷の治りも悪くなる、というのと同じ理屈です。

    細かいことはともかく、高齢者はワクチンを打ってから効果が出るのに1ヶ月以上かかるそうなので、注射を打ったからもう大丈夫とうかれて街に飲みに出かけたりカラオケで大騒ぎするのはもう少し待ったほうが良さそうです。

    ワクチンを作っているファイザーという会社にはずっとお世話になりっぱなしです。私は循環器内科が専門なので、ノルバスク(アムロジピン)という血圧の薬やリピトール(アトルバスタチン)というコレステロールの治療薬が出てきたときは新しい時代を感じました。従来の薬とは一線を画するすごい効果だったからです。その後、心療内科の方でジェイゾロフト(セルトラリン)やイフェクサーと言った抗うつ剤もとても効果がよく、私の仕事を多く支えてくれました。そして今回のワクチンですが、打ったみんなはホッとしたと言って喜んで帰られます。まるで抗うつ剤みたいです。