むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • 頻尿の話

    私は循環器が専門なので、血圧の薬やコレステロール、糖尿病の薬をたくさん使います。心不全の治療も行うのですが、その中で一番よく使うのは利尿剤です。意外かもしれませんが、心不全とは体に余分な水分がたまって、足や顔がむくんだり胸水がたまって息苦しくなったりする病気です。そこで、利尿剤を使います。そうすると尿量が増えてきます。増えることで体から余分な水分を出すので心不全は良くなるのですが、どうしても尿量が増えたことで、頻尿となり、場合によってはその効果が夜間に及び、一晩に何度もトイレに起きるので眠れない、と文句を言われることもあります。

    今は夏の暑い盛りで、じっとしていても汗をかくので、脱水に注意しないといけないし、利尿剤を控えめにします。そうすると、足は少しむくんでくるのですが、脱水の方が怖いので、しばらくは我慢してもらっています。結果、夜間頻尿は若干改善し、眠れるようになります。しかし、膀胱容量が小さくなってしまって、少し尿が溜まっただけで尿意を催し、トイレに行きたくなるという困った習慣が身についてしまう場合があります。特に高齢の場合、尿漏れの心配から、あまり膀胱に尿が溜まっていなくても、とりあえず早め早めにトイレを済ますような習慣をつけている人が多いです。そうすると、いよいよ尿が貯められなくなるのです。

    こういう状態を過活動膀胱と呼びます。過活動膀胱に悩む患者さんはとても多いのですが、あまり病院を受診せずに我慢していることが多いようです。最近はよく効く薬もあるので、我慢していないで病院に相談してはどうかと思います。その分野は泌尿器科が専門ですが、かかりつけの内科でもいいと思います。気を付けないといけないのは、女性なら膀胱炎、男性なら前立腺肥大や前立腺癌などがひそんでいないかきちんとチェックを受けることです。検尿や超音波検査でわかるので、心配するような検査はありません。自分でできる訓練としては、尿意を感じてもあと5分、10分とトイレを我慢することです。ぜひお試しください。

    thumb_IMG_0585_1024

     

     

  • くまもと森都総合病院年報の原稿

    くまもと森都総合病院に週1回通って漢方外来を担当しています。そこで、毎年恒例の年報を書いてくれと言われて原稿を書きました。せっかく書いたのですが、よく見たらH28年3月までの内容を書くようにと指示があり、熊本地震は4月の出来事なので、残念ながら内容がそぐわなかったのでボツにして、こちらにそのまま載せようと思います。以下、ボツ原稿です。

    <<<漢方内科>>>

    今年は熊本地震の影響で、心身ともに体調を壊して来院される患者さんがかなり多く見られています。地震の直後に多かったのはめまい、ふらつきです。私の外来では、苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)という処方を多用しました。また、地震後の不眠も多く、余震がまだ多かった頃は睡眠薬や安定剤を飲んで寝るのは怖いという患者さんも漢方で眠れるなら是非欲しいと言って大勢受診されました。使った処方は柴胡桂枝乾姜湯(サイコケイシカンキョウトウ)や酸棗仁湯(サンソウニントウ)ですが、どちらも大変よく効きました。実は、東北の大震災でいろんな漢方治療が使われて、効果が認められたのは論文化されているため、今回熊本で地震があった際にもすぐに東北での経験をもとに、こんな時にはこんな処方がいい、という情報が回ってきました。最初はその情報に基づいて使ったのですが、東北の大震災は3月の東北で、今回は4月の熊本。季節はかなり違うのです。東北ではまだ寒い時期ですが、熊本はやや暑い。この違いを考慮しないと漢方はきちんと効きません。そこで、最終的には上記の苓桂朮甘湯や酸棗仁湯を多用した次第です。最近は、震災時に一生懸命頑張ってなんとかやってきた人たちが、疲れがどっと出たと言って来院されるケースが多くなっています。こういう時は補中益気湯(ホチュウエッキトウ)や加味帰脾湯(カミキヒトウ)を使います。皆さんも是非参考にされてください。

    当漢方外来は熊本大学医学部の学生の臨床実習を兼ねていますので、患者さんの診察に学生さんたちが立ち会います。患者さんにはいつも協力いただいて、感謝しています。

     

  • 漢方勉強会〜テーマは頭痛〜

    毎月定例で漢方の勉強会を開催している。私もその世話人の一人で、先月と今月は司会進行の当番だった。今回の講師は東京在住の中国の先生。熊本にはしょっちゅう来ていただいているので、気楽な関係。日本語は流暢で、なんでも教えてくれる。今回は頭痛をテーマに、中医学的な解説をしていただいた。

    西洋医学で頭痛と言えばバファリンとかロキソニンで飲めばとりあえず治るというものだが、片頭痛の人はなかなか簡単には治らないし、特効薬と言われている片頭痛薬は1錠が千円近くするため、あまり気軽に飲むことができない。一方、漢方ではその人の体質に合わせて10種類以上の処方の中から最も合っているものを選んで使う。したがって、同じような頭痛でも、自分に合う薬が必ずしも他人の頭痛に効くとは限らない。その辺が漢方独特で面白いし、深みがある。

    なかでも厄介なのは、薬物乱用性頭痛という疾患だ。薬物乱用と聞くと覚せい剤や麻薬のようなものを思い浮かべるが、この頭痛は頭痛薬(鎮痛剤)の飲み過ぎで起こる病気だ。つまり、頭が痛いから頭痛薬を飲む。飲めばしばらくいいが、その頭痛薬のせいで次の頭痛が誘発される。また頭が痛むから頭痛薬を飲む、の悪循環が始まり、どうしても断ち切れなくなり、薬物乱用に陥るのだ。これを直すには頭痛薬を絶たないといけないのだが、それは辛いこと。頭が痛いのをなんとか我慢させて痛み止めを使わないでいると、やっと悪循環から抜け出せるというものだ。しかし、それほど意志の強い人はなかなかいない。

    そこで漢方の出番だ。漢方で頭痛の起こりやすい体質を治療すると、次第に頭痛の回数が減ってくるので、自ずと頭痛薬を飲む回数も減る。その結果、薬物乱用性頭痛からも苦労せずに自然と離脱できるよいうものだ。僕の外来でもこのような漢方薬併用でうまく行った患者さんは何人もいるので、今では自信を持って漢方を使うことで頭痛薬から離脱へと導いている。頭痛に困っている人は是非ご相談ください。(クリニックはH28年9月1日オープンですので、お急ぎならメールをください murakaminaika096@gmail.com)

    thumb_IMG_0550_1024

  • 珍しく晴れた七夕

    七夕は滅多に晴れない。梅雨明け前のことが多いから仕方がない。今年は珍しく晴れたが、梅雨明けとはまだ発表になっていないようだ。そもそも、星のお祭りがなぜ梅雨の真っただ中にあるのか、その答えは簡単だ。

    そう、旧暦の七夕が、本来あるべき日なので、正しい七夕はお盆の頃にあるはずなのだ。それなら、夜空を見上げて星を眺めたりするだろう。東北の方では旧暦に七夕まつりをやっているので、それが正しいのだ。

    ロシアからは宇宙船ソユーズに日本人パイロットが乗って宇宙ステーションへと打ち上げられた。うまくいっているようだ。以前はアメリカのスペースシャトルが頻繁に打ち上げられていたが、いつの間にか、予算不足か何かの理由で中止され、今ではロシアだけがコンスタントに有人ロケットを打ち上げている。昔言われていたのは、スペースシャトルは設計図を積み上げると月に届くくらいの分量がある。一方ソユーズは町工場のおじさんがトンカチでロケットをコツコツ作っている、らしい。結局、ロシアが低コストでかつ実績もアメリカに勝ったわけだ。

    今の医学もアメリカ方式で、科学的事実に基づいた医学(EBM)というのが推奨されている。科学的事実とは大規模臨床試験で統計的に優れた治療法であることを証明しないといけないわけで、漢方薬のように2000年の歴史があるからといってもそれは統計学的手法を用いていないからと、非科学的のような扱いを受ける。僕が思うに、西洋医学はまだ若すぎる。せいぜい200年くらいの歴史しかない。漢方の10分の1だ。漢方の有効性なんか今更証明するまでもないくらい歴史的に確かめられている。きっとロシアのソユーズのように、気がついたらアメリカのEBM的医学はすたれてしまい、結局漢方が勝つだろう。だいたい、西洋医学は発展すればするほどお金がかかる。財政破綻の原因の一つにもなっている。

    そうはいっても時代はEBM一辺倒なので、しばらくは静観しておこうと思う。

    thumb_IMG_0544_1024

  • 飲んでいる薬が多すぎませんか

    誰しも、年をとると血圧が上がったり、夜眠れなかったり、何らかの理由で薬を常用していることと思います。採血の検査をすると、コレステロール、尿酸、肝機能など、多少ひっかかることもあると思います。そのたびに、薬を増やしていくと、気がつけば10剤以上となり、薬を飲むだけでおなかが一杯、ということにもなりかねません。薬を飲むときには水も飲みますから、そのせいでおしっこが近くなったり、足がむくんだりすることもあります。

    このような状況は、どこにでも起こりえます。これには、処方する医師にも責任があります。現在の医療のレベルでは、2剤の組合せの有効性を検討する研究がやっとできてきたくらいの状況ですので、3剤以上の薬が体の中でどう効いているかは、科学的データなど全くない状態なのです。薬に依存することを考え直す必要があります。

    ひとつ例を上げると、ある80歳を超えた女性が20種類を超える処方をもらっていました。血圧、コレステロール、認知症の薬、頻尿治療薬、便秘薬等などです。私はこの中から、この患者さんにどうしても必要な便秘薬と睡眠薬を1つだけ残して、あとは全部やめてもらいました。すると、今までいろいろあった症状が全部良くなって、すっかり元気になられました。薬のせいで体調を悪くし、その体調不良を別の薬で治そうとするからこういうことになるのです。

    治療は薬の足し算だけではうまくいきません。しかし、引き算(薬を減らすこと)は慎重にしないと状態が悪化してしまいます。これは思った以上に難しいことです。他の人にはいらない薬でも、自分にとっては絶対にやめてはいけない場合もあります。自分で勝手に判断せず、なんでも相談できるかかりつけ医に相談をされることをお勧めします。また、薬の専門家である調剤薬局の薬剤師さんも相談に乗ってくれると思います。

    thumb_IMG_0539_1024