むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 風邪で熱が出る仕組み(ちょっと難しく解説)

    おかげさまで先日の私の風邪はすっかり回復しました。熱はなく咳だけが一日出ましたが、ひどくならずに良かったです。結局葛根湯などの漢方も入手困難のため飲まず、のど飴とビタミン剤と朝鮮人参エキスで治りました。サプリは通常のビタミンB,C,D,Eなどにくわえてセレン(セレニウム)、オリーブリーフエキス、タウリンを追加して飲みました。ビタミンCは通常2000mgのところ4000mgにアップしました。これでかぜ薬いらずです。今回は熱も出ませんでしたが、熱について少し解説したいと思います。

    風邪のときに熱が出るのは体のウイルスに対する免疫反応でリンパ球からインターロイキン(IL-1, IL-6など)とインターフェロンがでてくるためです。その結果、細胞膜のリン脂質からホスホリパーゼA2という酵素の働きでアラキドン酸が遊離され、アラキドン酸はシクロオキシゲナーゼ(COX)により分解されてプロスタグランディンE2が産生されることで脳の体温中枢が刺激され発熱します。したがって、発熱は感染に対する防衛反応です。体温が上がることで体内の酵素活性が高まり、ウイルスを排除する力が増強されます。濡れた体をほったらかして体を冷やすと風邪をひくし、サウナで温めると風邪が飛んでいくのはこのあたりに関連していると思われます。イブやロキソニンなどの解熱剤はCOXを阻害してプロスタグランディンの産生を抑えるので発熱が抑えられます。よく使うカロナールはなぜ熱が下がるのか詳しいメカニズムが分かっていません。理屈から考えて、防衛反応である発熱を解熱剤で抑えるとウイルスにとっては好都合で風邪は長引くと考えられます。解熱剤の唯一のメリットは熱が下がったほうが元気が出るので食事が取れること。熱が下がったから学校に行くとか仕事をすると言うのはだめです。無理せずゆっくり寝たほうが早く治ります。

    葛根湯などの漢方薬は解熱効果はなく、むしろ体を温めて風邪を治します。一方、インターフェロンなどのサイトカインによる体の過剰な反応を和らげてくれる働きがあるため、頭痛や悪寒が緩和されます。こんな処方を薬草の組み合わせで考えだした2000年前の中国の医者のレベルの高さには驚かされます。