むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 鉄剤の飲み方

    夕方診療が終わって予約していたWEB講演会が始まったのでZOOMにアクセスしたら、なんと演者は長嶺北クリニックの北先生でした。テーマは睡眠と栄養という話。北先生も私と同じく分子栄養学に凝っていて、蛋白、ビタミン、ミネラルなどの栄養がいかに大切かを講演されました。要点をかいつまんで書いておくと、睡眠はメラトニンという脳内ホルモンが関与しているが、メラトニンの産生にはタンパク質(材料)とそこから代謝して生成するために必要な補酵素としてビタミンB6,ナイアシン、鉄などが必要である。したがって、まずはきちんとした食事、特に十分量のタンパク質とビタミンを取ること。足りない栄養素はサプリでもいいので補充することです。このことはうつやパニック障害にも共通しています。なぜなら、メラトニンの生成とセロトニン(気分を安定させる脳内ホルモン)は同じ経路だからです。

    鉄は赤血球の生成に大切なので、不足すると貧血になることは広く知られていますが、それ以外にも様々な酵素に必要です。ミトコンドリア内でATPエネルギーを産生する際に電子伝達系を使いますが、鉄はそこでも主役です。したがって、たとえ貧血がなくても鉄が足りないとエネルギー不足となり強い疲労感がでます。女性は生理で出血する際に鉄を失うので鉄欠乏になりやすいので要注意です。逆に男性が鉄欠乏になる事はめったになく、もし検査で鉄欠乏だった際には消化管出血(胃潰瘍や胃癌、大腸がんなど)がないかチェックしておく必要があります。

    鉄の錠剤を飲むと胃もたれして飲めないと言われる人がかなりの割合で存在します。これは、鉄が胃酸と反応して活性酸素を発生してしまうことが原因です。そこでムコスタなど、活性酸素の消去能力のある胃薬やビタミンCを一緒に飲むことをおすすめしています。ガスターなど胃酸を抑える胃薬は活性酸素を消去できないのであまりおすすめではありません。そして、ちゃんと食事をしてからのむことです。コーヒーだけ、みたいな軽食後に鉄剤を飲むと胃が荒れます。ご注意ください。