むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 胃腸炎が増えています

    前にも書きましたが、最近は胃腸炎が増えています。このところ新型コロナもインフルエンザもない平和な年の瀬ですが、胃腸炎ばかりは例年通り見受けられます。胃腸炎を起こすウイルスは、アルコール除菌できません。コロナ対策であちこちにアルコールスプレーが置いてありますが、あれを使っても防げないのです。塩素系(次亜塩素酸など)で消毒できるのですが、臭うので、通常次亜塩素酸は手指消毒には使いません。ではどうしたらいいか。それは手洗いです。石鹸を使っても使わなくても、流水で30秒ほどしっかり洗えば感染予防できます。もし家族に下痢している人がいたら、トイレの便器、洗面所、ドアノブなどを塩素系消毒薬あるいは薄めた漂白剤(ハイターなど)で拭き掃除しましょう。

    胃腸炎はビオフェルミンやガスターのような胃腸薬では治りません。そんな治療では1週間はきつい思いをします。しかし漢方で治療すると2−3日で治ります。私の経験では1回飲んだだけで効いている実感がしますので、相当即効性があります。私が一番使うのは黄蓮解毒湯です。カプセル製剤や錠剤もあるのでお子さんでも飲めると思います。そのほか、半夏瀉心湯、黄芩湯、柴苓湯なども効果はありますが、黄蓮解毒湯の方が鋭く効果を発揮します。当院では胃腸炎で食事が入らなくてきついから点滴してほしいという人は1年を通してほとんどおられません。みなさん漢方治療で治っていると思います。私がこの処方にたどり着いたのは偶然ではありません。漢方の勉強会でとある先生から教えてもらったのですが、その処方はもっと複雑でした。とにかく効くから騙されたと思って使ってみるよう勧められました。その処方が劇的な効果を発揮することはすぐ確かめられたのですが、その処方をシンプルに研ぎ澄ませた結果、黄蓮解毒湯単剤で素晴らしく効くことがわかったのです。この件に関しては、すでに10年以上の臨床経験があります。

    漢方薬はこのように、医者が10年20年とひたすら臨床知見を積み重ねた結果、間違いないと確信したものだけが後世に伝えられてきたと思われます。つまり、漢方4000年の歴史の総決算が今残っている処方だということです。効いた効いたと喜ぶのはお子ちゃま。効いて当たり前なのです。

  • 足が攣(つ)った!

    寝ていて、久しぶりに足が攣りました。あいたたたたたた。飛び起きてうめき声をあげます。ふくらはぎが攣ったときにはすぐに足の親指を手で上に持ち上げ、足首の関節に上向きの力を加えます。そうすることで、ふくらはぎが痙攣して縮こまっているところをひっぱり伸ばします。手で足先を引っ張ってアキレス腱を伸ばすのと、ふくらはぎがつって縮むのと力比べみたいになりますが、5分10分と頑張って引っ張り上げると痛みは遠のいていきます。

    どうして足が攣ったのか考えたら、前日革靴でクリニックまで3キロ歩いて通勤したからではないかと気づきました。いつもは運動靴で歩くのですが、その日は夜に会合があったので、革靴で通勤したのです。やはり、日頃使わない筋肉の使い方をしたのでしょう。マラソンとか登山でも足が攣ることはよくあるので、攣った時の対処法は体得しておいた方がいいと思います。さて、漢方でもこのように足が攣る場合、有効な治療があります。ご存知、芍薬甘草湯(68番)です。この薬は寝る前に飲んでおけば寝ていて足が攣るのはかなり抑えられます。私の経験では、透析患者さんが透析をした日の夜に足が攣るとよく言われるので、透析日の夜だけこの漢方を処方したら、まったくつらなくなりました。また、この処方は予防投与だけでなく、足が攣ったときに急いで飲むと効果を発揮します。漢方なのに即効性がある貴重な処方です。

    このように、素晴らしい効果を発揮する芍薬甘草湯ですが、一つ気をつけないといけないことがあります。甘草の副作用で使い過ぎると血圧が上がるのです。ある日急に上がり始めてびっくりしますが、漢方をやめれば下がります。しかし、この副作用はよくないので、私は治療が長期にわたる場合、四物湯を使います。芍薬甘草湯ほど即効性はないのですが、甘草を含まず、毎日飲めば足が攣るのを抑えてくれる働きがあります。

  • 睡眠薬の話

    当院は心療内科も標榜しているため、不眠症で睡眠薬の相談に来られる患者さんが結構います。眠れないのは本当に辛いもので、布団に入ったままモゾモゾしながらまだ1時、まだ2時と時間が過ぎるのを気にしていたら朝になった、みたいな感じ。おかげで日中は眠気で仕事もはかどらず、その日の夜もまた眠れない。体調が悪く疲れが取れない。今晩も眠れなかったらどうしようと考えがぐるぐるめぐってさらに眠れない。困ったものです。

    このような患者さんで困るのが2パタンあります。一つは、昔デパスとかソラナックスをもらったらすっきり眠れたのでそれを出してくれ、と薬を指定される方。今はそう言った習慣性のある安定剤を睡眠薬がわりに使うことはありません。ほとんどのケースでお断りしています。もう一つが、睡眠薬は抵抗があるので漢方で眠れるようにしてほしいというもの。軽い不眠ならそれも可能ですが、多くの場合漢方で眠るのは難しいです。

    最近は睡眠薬の開発が進んで、ベルソムラとかデエビゴといった習慣性の少ない眠剤があります。当院では多くの場合これら安全な眠剤をお勧めしています。それでもうまくいかない時は、デジレル(トラゾドン)やレメロン(ミルタザピン)などを考慮します。いわゆるベンゾジアゼピンという系統の眠剤はできるだけ使わないようにしています。ただ、中にはどうしても満足な睡眠が得られず、マイスリー(ゾルピデム)やルネスタ(エスゾピクロン)なども使います。考えるのは薬の安全性、依存性、作用時間の長さ、目覚めのすっきり感などです。私自身は生まれてこの方一度も眠剤を飲んだことがないのですが、患者さんの訴えを詳細に聞きながら薬剤選択を適切にしたいと思っています。

  • 英語は手段

    珍しくアメリカ人の患者さんが来院されました。いろいろ探したけど、英語対応可で心療内科をやっているところは当院しかなかったとのことで連絡があったのでどうぞきてくださいとお伝えしました。コロナ禍で大変だったと思いますが、最近来日して仕事を始めたそうですが、慣れない環境や仕事のストレスで体調を壊されていました。私は留学も長かったので、相手の言っていることは全部わかるのですが、こちらの言いたいことがスラスラとは出てきません。なんともつたない英語で確認すべきところは確認して、処方しました。体格も日本人より大きいので薬は少し多目がいいかも、などと考えることはいろいろあります。通常、当院で外国人の患者さんといえば、中国人、タイ人、韓国人などが多いですが、アメリカ人は年に一人あるかないかです。

    私は、今年車を買い替えました。前の車にはフルセグTVがついていたのでいつもTVを見ていたのですが、新しい車にはラジオしかありません。そこで、通勤の行き帰りはNHK第2で基礎英語を聞いています。私は中Ⅰからラジオ基礎英語をずいぶん聞きましたが、今の基礎英語はかなりレベルが高いです。私の聞いていた頃の数倍難しくなっています。番組のパーソナリティーに鈴木福くんとか、サンシャイン池崎さんとかが入っていて、面白いです。しかし、気になることが一つ。いくつかある基礎英語の番組の中で一人女性の先生がいるのですが、発音が下手。驚くべき日本語訛りのペラペラ英語。よく中学や高校にいたような英語の先生の典型。もう少し綺麗に発音できる先生はいなかったんでしょうか。

    しかし、考えてみると、英語というのは仕事をする手段であり、目的がきちんと達成できれば訛っていてもいいのです。イギリス訛り、アメリカのカリフォルニア訛り、テキサス訛り、黒人の訛り、オーストラリア訛りとネイティブだけでもいろいろな訛りがあります。また、フィリピン訛りとかインド訛りなど公用語を英語としているけどすごく訛っているところもあります。ラジオ基礎英語の日本語訛りの先生はそのことを教えてくれているのかもしれません。

  • 漢方の飲み方

    今日の診療ではなぜか相当人数が集中してしまい、待ち時間が長くなってしまいみなさんにご迷惑をおかけしました。ご協力ありがとうございます。待ち時間が長い時はスタッフに声をおかけください。ウォーターべッドなどリラックスできる設備がありますので、待ち時間に使ってください

    話は変わって、漢方の話題です。当院は漢方を専門としているので漢方薬を処方することがかなり多いです。最初から患者さんも漢方を希望で来られることが多いのでその点は問題ありません。しかし何でもかんでも漢方を勧めるわけではありません。私が西洋薬より漢方が絶対いいと思えば漢方を勧めるし、漢方では難しい時には西洋薬にします。時々、どうしても「漢方で」と言われることがありますので、その場合はできるだけの対応をしています。

    さて、漢方の飲み方ですが。添付文書には食前または食間と書いてあるので患者さんによってはついご飯を食べてしまったので、その時は漢方を飲まない、という方がいらっしゃいます。しかし、食前にする根拠は乏しく、2000年前に書かれた書物に桂枝湯を飲んだらそのあとお粥を食べて体を暖かくするように、と書いてあるため食前となっているだけです。したがって食前に飲み損ったら食後に飲むようしてください。飲まないと治療になりません。