むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 伝統と新しいものと

    私はワインをよく飲みます。いつも安いものばかりで高級ワインなどは買ったことがありません。安いワインでは、最近スクリューキャップになっていて、コルクの使用が随分減っています。コルクを減らすのは、コストの問題や材料の入手が困難なことなどいろいろあると思います。

    ワインはやっぱりコルクでないと・・・という人は、古いと思います。調べてみると、スクリュートップにはいろいろとメリットがあります。

    第一に、開けやすい。ワインオープナーが不要です。いつでもどこでも開けられます。

    第二に、保存がよく、酸化しません。コルクの場合、カビが生えたりして品質の劣化が一定の割合で見られます。昔はよくコルクが乾燥しないようにワインのボトルは寝かせて保存、などと言っていましたが、スクリューボトルではそんな必要はありません。普通に立てたまま保存がききます。そして、スクリュートップのボトルに詰められたものは劣化しませんから、品質管理が簡単です。コルクのワインの場合、ソムリエがうやうやしく開けてくれたものを、代表して一人がテイスティングをし、カビ臭くないか、発酵が進みすぎて酸っぱくなっていないかなどをチェックします。しかし、スクリュートップの場合、そんなテイスティングをしなくても品質は一定ですから、すぐにつぎ分けても問題ないはずです。簡単です。

    世の中このような事例がたくさんあると思います。伝統的な良さもありますが、技術が進むにつれ簡素であっさりした仕組みにはなっているものの、品質的には圧倒的に新しい方が良い、ということです。漢方好きの私のことですから、ワインはやっぱりコルクでないと・・・・とは思っていません。私はスクリュートップが好きです。

    さて、医療の話を少し。いよいよインフルエンザの季節となりましたが、インフルエンザの検査キットをご存知と思います。先日は高感度検査器のことを書きましたが、もう一つ検査について書いておきたいと思います。インフルエンザの検査では、綿棒を鼻の奥まで突っ込んでサンプリングするのですが、これが結構痛くて不快です。いろんなメーカーの検査キットがありますが、大塚製薬のインフルエンザの検査キットに付いている綿棒は細くてしなやかでどの検査キットよりも鼻に対する刺激が少ないのです。そこで、値段は少し高いのですが、当クリニックでは今シーズンはこの大塚のキットを採用することにしました。患者さんは自分の家族と思って接する、という当クリニックの理念に従ったまでです。患者さんが自分の家族だと思えば、やはり少しコスト高でも痛くない検査キットを使いたいと思うのは親の心情だからです。

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  • 望聞問切

    「ぼう・ぶん・もん・せつ」と読みます。漢方の診察の基本を4文字の漢字で示したものです。

    望診とは、患者さんの様子を見て観察することです。表情、姿勢、体の歪み、目の動き、喉の様子、口の乾き具合、舌の様子、足のむくみ、皮膚の状態などなど目で見て観察します。

    聞診は昨日も書いたように耳で患者さんの情報を集めます。声のトーン、呼吸音、心音、足音などです。

    問診は、質問して答えてもらいます。いつからどこがどうあるのか、どんな時に調子悪くなるのか、どうしたらその症状は和らぐのか、などいろいろ聞きます。

    そして切診。切るのではなく、実際には触って調べます。体の冷えや熱感、リンパのはれ、脈の力強さ、お腹の圧痛、腹力などです。

    漢方は2000年以上前の医学体系ですから、昔は採血やレントゲンのデータなどは見ずに病態を診断していました。望聞問切の情報をフルに活用して理論立てて、診断から治療までを考えるのです。そこで、私たち漢方専門医は患者さんが診察室に入ってくる前から診察が始まります。待合ロビーで座っている姿、診察室に入ってくるときの歩き方、座り方、話し方、そのときの目の輝き、全部情報として役立てます。話もいろいろ聞きます。多分、通常の内科のドクターなら、採血してレントゲンを撮って、データから判断することが多いと思いますが、私たち漢方専門にしていると、検査所見は一つの参考としてみますが、それが全てではありません。最近は電子カルテが導入されているため、たいていのドクターはデータ入力に忙しくて患者さんの些細な情報を見ていないことが多いです。私はそれを極力避けるため、診察中はあまりパソコン入力はせずに会話に集中するようにしています。(その分診察後に入力していますので、診察後に少々時間がかかってしまいます。ご了承ください)

    心療内科をやっていると、「胸が苦しいです。動悸がします」といってきた患者さんが、心臓の病気か、ストレスからきたものかを見極めるが非常に重要になります。もちろん心電図など検査はしますが、それ以前にいろんな背景を聞いたり、その時の話し方などを観察して原因を探ります。その結果、よそでは「検査で異常ないから心配ないです」と言われて終わりだった患者さんにも、何らかの治療法を探ることができます。それは、循環器内科的には問題なくても、心療内科で考えると心身症や自律神経失調症かもしれないし、漢方的に考えて気虚(気の不足)や気鬱(気の巡りが悪い状態)かもしれないからです。

    つまり、西洋医学的な検査で分かるのは病気のほんの一部であって、それが全てではないのです。検査で異常なくても症状がある限り何らかの問題があるはずです。その診断をうまく説明できなくても、漢方的な説明ができれば、何らかの治療法もあります。

    東洋医学、西洋医学を問わずあらゆる手段を検討する、これは当クリニックの経営理念(その2)なのです。

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  • 耳で仕事をする

    耳も大事な仕事をします。

    当クリニックに木製の椅子を作ってくれた五家荘の家具職人さんとのお話

    職人さんの若いお弟子さんが、仕事中に怪我をしたそうです

    「我々は、耳でも仕事するんですよ」と職人さん。

    「工具の音、木を削る音を聞く、これが大事なんですよ。でも最近の若い人は、イヤホンで音楽を聴きながら仕事をする。大事な音を聞いていないと怪我をするんです」

     

    そして、生活の中でも考えるといろいろあります。自転車に乗っている時、後ろから来る車のタイヤの音、高い音はスピードがあります。低いゴロゴロした音はゆっくりです。

    お風呂に水を入れる時、水道の水が水面に当たる音が低い時はまだまだ。音が高くなれば満水間近です。

    天ぷらを揚げる時、ブクブクいっている時はまだまだ、パチパチと音が高くなったら出来上がり。

    たいていのことは、音を注意深く聞いていれば重要な情報がつかめます。

    医療の世界も同じ

    患者さんの足音、息づかい、声の張り、心電計の脈のリズム、酸素飽和度の機械の音の高さ。

    神経を集中していろんな音を聞きながら情報を集めます。

    慣れてくると無意識のうちに、耳で仕事をするのです。

    家具職人も医療人も同じです。

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  • 完璧を目指さない

    クリニックの前には大きな街路樹があり、今まさに落ち葉の季節です。朝出勤すると、歩道が落ち葉でいっぱいです。そのままだと歩きにくいし、自転車が滑ったりしやすいし、風が吹けば院内にまで落ち葉が飛んできます。私はもともと掃除好きで、落ち葉を見ると掃かずにはいられません。

    しかし、掃いても掃いてもハラハラと落ち葉は落ちてくるので、きれいにしようと思ってもそれは無理です。聞いた話では京都のお寺や料亭ではモミジなどの落ち葉をきれいに掃除して、後から色形のきれいな落ち葉をまく演出をするそうです。それなら私も、落ち葉を撒くわけではないけど、完璧にきれいにしようなど最初から思わなければいいのです。少し散っている方が趣があるわけです。

    そう考えて、完璧な掃除はしないことにしました。毎朝7時半頃に出勤して、7時50分まで20分間だけ時間を切って落ち葉を掃除します。クリニック前の道路は50m以上あり、20分で全部掃くのは無理ですから、頭を切り替えて、20分間で「とにかく歩道の落ち葉を減らそう」と考えたのです。ざっと掃いて袋に詰める。すると落ち葉の量は掃除しただけ少なくなります。もちろん綺麗さっぱりになってはいないので、掃除したのかしていないのかぱっと見ではわかりませんが、とにかく落ち葉の量は減っています。

    それでいいのです。20分でできるところまでやったら終わり。完璧は目指さない。これがポイントです。よく、体調を壊して来院される人の話を聞くと、完璧を目指しすぎているように思います。家事、育児、介護、そして自分の仕事などとにかく頑張り屋さんばかりです。もっと気楽に、できる範囲でやればいいのです。無理と思ったら応援を頼むのも大事です。

    世界で工業製品を作っている国はたくさんありますが、日本はかなり特殊です。0.1%(1000個に1個)の不良品も絶対に許さない。こんな国は他にはあまりありません。大抵は1%程度は最初から不良品が混じることを想定して返品、交換に気軽に応じるシステムを作っているのです。これは、どちらがいいかではなく、考え方の違いです。結果、外国製は不良品が一定の割合で出てきますが、製造コストはかなり安い。日本は不良品が圧倒的に少ないけれど、製造コストがそれだけかかってしまう。そういう仕事を日ごろからやっているから上司も厳しいし、現場ではプレッシャーが大きいし、客も不良品が混じっていることを許さないのでクレームになりやすい。確かに日本の工業製品は世界一だと思いますが、その背景に私たち日本人の生活が世界一窮屈になっているのは否めないと思います。

    せめて家庭では息を抜いてリラックスしましょう。夫婦仲良く、親子も仲良くです。

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    県庁前です。今まさにイチョウが見頃です。私はこの県庁前のイチョウをきれいに写真に撮りたくて5年くらい前からチャレンジしています。昔は一眼レフEOS kiss(標準ズームレンズ)で撮り、全く満足いかず、単焦点レンズを買って少しきれいに撮れるようになり、Ricoh(リコー)のGRデジタルというコンパクトデジカメを買ったら更に良く撮れるようになり・・・という歴史を経て、今日の写真はiPODです。すごくきれいに撮れています。10万円以上する一眼レフよりiPODの方がきれいに撮れるとは、これは技術の進歩でしょうか、腕が上がったのでしょうか?

  • 学生実習

    朝から福島県沖の地震で大騒ぎでした。どのチャンネルを回しても津波が来るから逃げろというニュースばかり。なかでもNHKはヒステリックで恐怖を煽るような言い方が耳につきました。他局は比較的冷静なアナウンスでした。最近はスクープ映像を撮るために危険を冒す人も多いので、避難をさせ、命を守る行動をしてもらうというのは確かに大切ですが、私はNHKのアナウンスはあまり好きでありませんでした。

    先週のスーパームーンの時に地震がおきやすいから1週間くらい気をつけましょうと書きました。その翌日にニュージーランドで地震があったので、それで終わりかと思っていました。また、東北大震災の時が半月だったので、今回も半月を過ぎるまで、つまり昨日までは要注意と思って自分では警戒していましたが、その警戒を解いた翌朝に起こるとは我ながら皮肉なものでした。今回のスーパームーン関係の地震はこれで一旦終わりでしょうが、今日の福島の余震があるかもしれないので、東北はあと数日気をつけたいものです。

    ところで、来月、熊本大学の医学部の学生さんを1名臨床実習で1週間当院にて見学してもらうことになりました。学生実習を受ける施設に対する説明会があったので出席してきました。なんと、「学生さんをどういう風に褒めて指導すればいいか」といった内容の講義でした。1日の「ふりかえり」とフィードバックを行ってくださいと言われました。参加している各施設のドクターとペアになってフィードバックの練習までさせられました。まるで小学校のようです。学生は毎日のふりかえりを1枚の日記風のレポートに書かないといけないそうで、小学校の夏休みの友のようなものを渡されました。私たちが学生の頃は、見て覚えろ、技を盗んで勉強しろ、の世界だったのですが、時代はすっかり変わっています。

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