むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 望聞問切

    「ぼう・ぶん・もん・せつ」と読みます。漢方の診察の基本を4文字の漢字で示したものです。

    望診とは、患者さんの様子を見て観察することです。表情、姿勢、体の歪み、目の動き、喉の様子、口の乾き具合、舌の様子、足のむくみ、皮膚の状態などなど目で見て観察します。

    聞診は昨日も書いたように耳で患者さんの情報を集めます。声のトーン、呼吸音、心音、足音などです。

    問診は、質問して答えてもらいます。いつからどこがどうあるのか、どんな時に調子悪くなるのか、どうしたらその症状は和らぐのか、などいろいろ聞きます。

    そして切診。切るのではなく、実際には触って調べます。体の冷えや熱感、リンパのはれ、脈の力強さ、お腹の圧痛、腹力などです。

    漢方は2000年以上前の医学体系ですから、昔は採血やレントゲンのデータなどは見ずに病態を診断していました。望聞問切の情報をフルに活用して理論立てて、診断から治療までを考えるのです。そこで、私たち漢方専門医は患者さんが診察室に入ってくる前から診察が始まります。待合ロビーで座っている姿、診察室に入ってくるときの歩き方、座り方、話し方、そのときの目の輝き、全部情報として役立てます。話もいろいろ聞きます。多分、通常の内科のドクターなら、採血してレントゲンを撮って、データから判断することが多いと思いますが、私たち漢方専門にしていると、検査所見は一つの参考としてみますが、それが全てではありません。最近は電子カルテが導入されているため、たいていのドクターはデータ入力に忙しくて患者さんの些細な情報を見ていないことが多いです。私はそれを極力避けるため、診察中はあまりパソコン入力はせずに会話に集中するようにしています。(その分診察後に入力していますので、診察後に少々時間がかかってしまいます。ご了承ください)

    心療内科をやっていると、「胸が苦しいです。動悸がします」といってきた患者さんが、心臓の病気か、ストレスからきたものかを見極めるが非常に重要になります。もちろん心電図など検査はしますが、それ以前にいろんな背景を聞いたり、その時の話し方などを観察して原因を探ります。その結果、よそでは「検査で異常ないから心配ないです」と言われて終わりだった患者さんにも、何らかの治療法を探ることができます。それは、循環器内科的には問題なくても、心療内科で考えると心身症や自律神経失調症かもしれないし、漢方的に考えて気虚(気の不足)や気鬱(気の巡りが悪い状態)かもしれないからです。

    つまり、西洋医学的な検査で分かるのは病気のほんの一部であって、それが全てではないのです。検査で異常なくても症状がある限り何らかの問題があるはずです。その診断をうまく説明できなくても、漢方的な説明ができれば、何らかの治療法もあります。

    東洋医学、西洋医学を問わずあらゆる手段を検討する、これは当クリニックの経営理念(その2)なのです。

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