むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • にんにく注射とビタミン欠乏症

    ときどき、にんにく注射はありませんかというお問合わせがあります。にんにく注射というのは、ビタミン剤(おもにB1)を注射すると口ににんにくの香りがしてくるためにそのように呼ばれているのですが、ニンニクエキスが注射に入っているわけではありません。これを、風邪や過労で倦怠感が強いときや、肩こり、筋肉痛などの際に注射すると、効果抜群とうたわれているものです。当院では、胃腸炎や慢性の吐き気などで数日食事が摂れていないような場合に限り保険適応でにんにく注射(点滴)していますが、きちんと食事ができている人にはしていません。保険適応外でやっている病院もありますが、調べてみるとだいたい2000円から3000円位かかるようです。

    実は、炭水化物(ブドウ糖)が体の中でエネルギーになる際に解糖系とTCAサイクルというエネルギー産生系をつかうのですが、TCAサイクルに入る段階の律速酵素にビタミンB1を必要とします。これが欠乏すると解糖系は動いてもTCAサイクルに流れてきませんので、代謝されたブドウ糖が乳酸に変わってしまい、肩こりや疲労の原因になるようです。そこで、ビタミンB1(にんにく)注射をすると、乳酸から解糖系の方へ代謝が改善し、乳酸が減ります。その結果、肩こりなどが解消します。また、エネルギーが解糖系からTCAサイクルの方へ流れることで、一気にエネルギー(ATP)産生が高まり、元気が出ます。倦怠感がとれて、活動性が上がるのです。

    では、なぜビタミンB1が不足するのか。B1欠乏は脚気(かっけ)といいます。戦時中に、兵隊さんには白米が振る舞われて脚気になったという話があります。白米(生成された炭水化物)ばかり食べていると、その代謝にビタミンB1が必要となり、だんだん不足してきます。白米でなく玄米を食べることで脚気の予防ができることを日本人が発見したのですが、現代は状況が違います。米、パン、麺類などの炭水化物、スイーツに含まれる糖分の過剰で脚気に近い状態となっています。ビタミンB1を十分取ることはもちろん必要ですが、炭水化物制限がまずもって必要なのです。事実、炭水化物ダイエットをすると、体が軽く元気が出ます。和食は健康食と言われますが、現実は炭水化物が多すぎて疲れやすい食事です。食欲がないからご飯に漬物、では全くだめです。ご飯を食べる(胃の)スペースが有るなら卵とチーズにしたほうがいいと思います。

  • 日赤は大忙し

    日曜日にクリニックの近くの熊本赤十字病院へ行って来ました。当院で見ている患者さんで精密検査や入院が必要な場合、日赤にはいつもお世話になっています。最近、当院で訪問診療している方が急に体調を悪くして日赤に入院されたので、様子を見に行ってきました。訪問診療は原則24時間対応ですが、現実にはクリニックにも患者さんがいますので、診察時間中の急な往診には対応できないことがほとんどです。そういう時、日赤が近くにあるので、本当に助かります。ちまたではインフルエンザも多く、日赤の救急外来はごった返していました。それだけでなく、救急車もどんどん入ってきます。忙しそうだなーと思ってみていたら、屋上からはドクターヘリが飛び立ちました。私も以前、国立病院(熊本医療センター)で救急をしていました。一晩に救急車が40台入ったこともあり、救急の第一線がどんなに過酷かは身をもって体験しています。

    日赤が超多忙になっている理由の一つに、熊本市民病院の救急が止まっていることがあげられます。市民病院は震災で病院機能が大きく制限されています。今度自衛隊の東側に新築移転が決まりました。これが完成して、急患の受け入れを再開するまで、日赤の負担はつづくとおもわれます。

    そうした中、私達も何か日赤の負担を軽くする事を考えないといけないと思います。通常の風邪は、日赤ではなく休日当番医を利用すること。夜間の発熱も慌てず朝から近くのクリニックを受診する。などです。日赤には心筋梗塞、脳卒中、交通事故(重症)などの対応に専念してもらいたいので、風邪などの軽症での受診は控えたいところです。その分私達近隣のクリニックが頑張りたいと思います。

  • 血管を若返らせる食品

    昨日は血管を若返らせるためにはタオル握りが効果的という話を書きました。その他何かないかといえば、食べ物で若返らせる方法もあります。ちょうど今週の「たけしの家庭の医学」を見ていたらその答えがありました。ご覧になりましたか?この番組はとてもためになるのですが、時間が長く、話題となる疾患が4つほどあるので、全部見ていると、最初の方で言っていたことを忘れてしまいます。

    キーワードは亜鉛です。血管を若く保つためには亜鉛が重要だそうですが、日本人は亜鉛の摂取量が足りていないとのことです。亜鉛を多く含む食材は「牡蠣、チーズ、肉、カニ」などだそうです。そうかと言って、毎日カニやカキを食べるのは難しいので、番組ではかんたんに亜鉛を摂るコツを紹介していました。まず、卵料理(卵1個で亜鉛が0.84mg)、次に粉チーズ(パルメザン:大さじ2杯で卵1個分)、そしてごま(100gあたり5.9mg)だそうです。被験者に卵と粉チーズとごまをふんだんに食べてもらった結果、1週間で血管年齢が若返ったと紹介されました。

    こういった食材を、最近ではMEC食と呼びます。Mはミート(肉)、Eはエッグ(卵)、Cはチーズです。肉、卵、チーズをもっと食事に取り入れて、その分炭水化物を減らしましょう。炭水化物は消化されると糖になるため、血糖値が上がります。糖がタンパク質と結合すると糖化蛋白と言いますが、これこそ老化の超悪玉なのです。

    増上寺

  • 血管を若返らせる

    最近は血管の老化が話題になっています。当院でも血管年齢を測ることができます。皆さん、自分の血管がどのくらいの若さかご存じですか。高血圧や高コレステロール血症、糖尿病などがあれば結構高くなります。60歳の人で血管年齢90歳など、ざらです。興味ある方は、診察時にご相談ください。

    さて、そのような血管年齢ですが、高かったときにどうするか。そのままにしておくと、心筋梗塞や脳梗塞など重大な血管病変を起こすリスクが高いため、何らかの対策を必要とします。まず必ずしないといけないのは、血圧、コレステロール、血糖の厳重な管理です。これは必須です。しかし、薬を使うほどではない程度の高めで食事や運動を気をつけましょうと言われた場合、困ってしまいます。何をどうしたらいいのでしょうか。減塩、油ものを控える、1日30分程度のウォーキング、とは耳にタコができるほど聞いていることでしょう。それはわかっているけどできていない。そこでどうするか。NHKのためしてガッテンではタオルを握れば血圧が下がると言っています。当院通院患者さんでそれを実践してたしかに下がったと言うことでしたので、試さない手はありません。(下をクリックすると動画へ飛びます)

    https://www.nhk.or.jp/ten5/articles/17/002407.html

    この簡単な体操で血圧が下がる(血管が若返る)メカニズムは血管内皮細胞から一酸化窒素(NO:エヌオー)が出てくるからだと言われています。NOは血管拡張物質です。私は留学中NOを専門に研究していました。NOはアルギニンというアミノ酸から産生されます。ある日思いつきで研究室にいた日本人とアメリカ人の血液中のアルギニン値を測定したところ、日本人は明らかにアルギニンが低かったのです。理由はおそらくタンパク質の摂取不足です。日本人は米と野菜を多く食べ、肉が少ない。結果、アルギニンが足りず一酸化窒素も低くなります。血管年齢を若返らせる運動(ウォーキングでもタオル握りでもよい)をする際には、十分な蛋白摂取が必要なのです。私もアメリカにいた頃は木金土日と週4日はバーベキューをしていました!

    増上寺 徳川家霊廟

  • 美肌にはセラミド

    最近は化粧品の成分にセラミドを配合したものが多数見られます。みなさんも、手元にお持ちかもしれません。セラミドというのは肌の保湿成分の代表です。潤いのもとになっています。したがって、それを補うことで肌がしっとりすると考えるわけです。しかし、化粧水などの水分はどんなに塗っても肌から体には入りません。入らないように皮膚のバリアがあるからです。やたらと外から水分を与えてそのままにしておくと、革製品を濡れたまま放置したのと同じでカピカピになります。大切な革のバッグやグローブなど濡れたままにすることはないでしょう。濡らしたままはいけません。そこで大事なのはセラミドですが、残念ながら、セラミドも外から皮膚に塗りつけても体に入っていくことはありません。

    私が数日前から乾燥肌で痒かったのが治った話を書きました。ここで、セラミドは重要な鍵となっています。じつは、ビタミン剤でセラミドの合成を増やすことができるのです。その大切な役割を担っているのは、ビオチン(ビタミンB7)とナイアシン(ビタミンB3)です。さらに、ビオチンというビタミンは食事で取ることができるのですが、その吸収を邪魔する悪玉の腸内細菌がいるそうです。しかし、その悪玉菌を宮入菌(ミヤBM)という整腸剤で除去することでビオチンの吸収を良くすることができるということがしられています。また、美肌に大切なコラーゲンのことも先日書きました。コラーゲンは経口摂取することで消化吸収されます。一旦アミノ酸まで消化されたあと、ビタミンCの働きでコラーゲンに再構築されます。(コラーゲンも化粧品で塗っただけでは皮膚には入りません)

    以上をまとめると、体の内側から美肌をめざすにはビタミンC、コラーゲン、ビオチン、ナイアシンを十分量取ること。できればミヤBMを併用することが大切です。通常市販されているマルチビタミンはB1,B2,B6,B12です。ここにはビオチン、ナイアシンが入っていませんので、成分をよく見て買ってください。そして、乾燥性皮膚炎などの肌のコンディションを改善するには高用量を要しますので、市販薬では不十分です。処方してもらったほうがいいと思います。当院では、看護師さんたちがその美貌をずっとキープしてくれるようにこれらのビタミンを自由にとれるように常備しています。

    増上寺