むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 医学論文のトリックを見抜く

    早い人はすでに花粉症の対策を始めています。よく、早めに薬を飲むと軽くて済むといいますが、真偽の程はわかりません。なぜなら、たいていそんなことを言うのは製薬会社だからです。製薬会社は薬がたくさん売れればいいだけなので、早い時期からたくさん使いましょうと言うのは当たり前です。以前、糖尿病治療薬を糖尿病になる前から始めたほうが良いというデータを見たことがあります。いわゆる境界型の人に薬を使ったほうがいいというデータですが、これも製薬メーカーが持ってくるデータなので、真偽の程はわかりません。論文というのはいいというのがあれば、良くないという論文もあります。それぞれ嘘を言っているわけではなく、調べた範囲ではそうだったというしかありません。その研究の対象となった患者グループの特性が偏っていると結果も偏るわけです。したがって、論文を読む際には結果や結論を読むことは大事なのですが、患者背景をしっかり読むことが大切なのです。

    研究をする場合、まず「仮説」をたてます。そして、その仮説を「検証」して、「結論」を導きます。例えば「Aという血圧の薬が心不全の治療に有用だ」と仮説を立てます。それを検証するために患者さんを2群に分けてAという血圧の薬を使った群とBを使った群で血圧の変化と同時に心不全の改善具合を検証します。

    そこで問題なのはどんな心不全患者さんを研究対象にするか。例えば、心筋梗塞後の重症心不全の症例、あるいは高血圧で心肥大をきたした軽い心不全の症例、あるいは慢性心房細動のある不整脈由来の心不全。どういった患者さんを対象とするかで結果は違ってきます。仮説が正しい(治療効果に差が出る)ようにするためには慎重に対象を選ばなくてはいけません。そのようにして、考え抜いた結果、うまく差が出たら、製薬会社はそれがまるでどんな心不全にでも効くかのようにプロモーションします。私たちはそういった嘘に騙されないようにしないといけません。患者さんはプロではないので、我々がプロとして論文の目利きをしてあげないといけないと思っています。

    南阿蘇

  • システムエンジニアは花形職業か?

    毎日NetflixやAmazonプライム・ビデオで海外ドラマを見るのが忙しい毎日ですが、先日からお風呂でYouTubeの講話を聞くようにしています。ちょっとの時間も惜しみません。最近気に入っているのは勝間和代のYouTubeチャンネルです。5分ほどの動画がたくさんアップされているのですが、気づきや役に立つことがたくさんあります。彼女は頭もいいですが、割り切った合理主義が聞いていて面白いです。

    この週末、クリニックのパソコンのメンテナンスをしました。電子カルテの端末が8台あるのですが、古いものと新しいものがあり、使われているOSがそれぞれ少しずつ違っていました。全部のパソコンがサーバーを介してネットワークされているのですが、OSがバラバラだと不具合が起こりやすいそうです。最近、そういった不具合がちらほら出始めたので、おもいきって全部のパソコンのOSを統一する作業をしました。新しいOSをダウンロードするのに45分、それをインストールするのに45分で合計1台あたり90分程かかりました。データをダウンロードする際、当院の光回線でも3台同時にダウンロードしたら極端に回線が遅くなったので、2台ずつしか作業が進みません。それでもなんとか終了しました。

    こういう作業は大きな施設ではSE(システムエンジニア)さんがやってくれるものです。SEの需要は非常に逼迫しており全然足りていません。実は中国で1年間に輩出されるSEの人数は全米のSE数に匹敵するそうです。もはや中国にはどこもかないません。SEは外国では引く手あまたの花形職業ですが、日本ではブラック扱いされていて、きつい、残業が多い、という職業として倦厭されています。おかげで日本だけ世界からどんどん取り残されて行きます。

    あそ望の郷 久木野  暖かくいい天気でした

  • 受験生の健康管理は大切

    世の中は大学入試ですね。私たちの時代は共通一次と呼んでいましたが、いつからかセンター試験と呼び名が変わり、今年は昔に戻って共通テストと言うらしいです。なぜ呼び方を変えるのでしょうね。受験の季節はこれから3ヶ月ほど続きますが、受験生を持つ家族はいろいろ気を使います。風邪を引かないようにとか、縁起が悪いこと、たとえば皿を割ったりおとしたりしないように気をつけるとか、です。そして、受験生本人の健康管理が何より大切です。ストレスがつよいと免疫が落ちて風邪をひきやすかったりします。そろそろ花粉症の季節となりますから、アレルギーの薬で眠くなるのは受験生にとっては一大事です。

    そんなときにおすすめなのが漢方です。漢方は免疫を高めて風邪の予防に役立つものもあるし、眠くならない鼻炎の薬もあります。風邪薬もうかつに飲むと眠くなるので注意しましょう。実際、受験の最中に寝てしまったという話を聞いたことがあります。葛根湯や小青竜湯なら眠気はきません。むしろ頭が冴える作用があります。

    受験に限りませんが、ストレスでお腹が痛くなったり下痢したりするのもよく相談を受けます。これは過敏性腸といいます。通常の乳酸菌などの整腸剤では治りません。専用の薬があります。もしお困りの際は本番直前でなく余裕を持って早めにご相談ください。

  • あきらめない嚥下障害

    私が以前勤めていた桜十字病院では「口から食べるプロジェクト」という取り組みをやっていました。今日は診療が終わってから、保険医協会主催のウェビナー(WEB講演会)で桜十字の安田先生、建山看護師さんなどによる講演を聞きました。桜十字での嚥下障害に対する取り組みの紹介です。歳をとって喉の筋力が衰えたり、脳卒中の後遺症で嚥下(飲み込み)が悪くなる例があります。食べ物だけでなく水を飲んでもむせるので、しょっちゅう肺炎を繰り返す困った病態です。

    肺炎を起こすと命取りになることから、以前は”胃ろう”といってお腹から胃に直接チューブを入れて経腸栄養をする方法を取ることが多かったのですが、患者さん本人が望まないのに強制的に胃の中に栄養を入れることで寝たきりになっても体だけは栄養状態もよく、いつまでも生かされる、という意味で、逆に問題視され、安易に胃ろうを作らないようにという流れになってきました。そういう中で、桜十字病院では頑張って口から食べていただこうという取り組みをやっているわけです。今日の講演ではその6年間の取組の成果について発表されました。

    講演を聞いてわかったのは、やはり嚥下が悪くなった人の嚥下リハビリは大変だということ。嚥下を専門とする専門看護師やST(口の麻痺を専門とするリハビリスタッフ)、歯科衛生士などが多職種連携をとって一日も休まず取り組まないといけないといっていました。やはり素人が家庭でなんとか食べさせようと口に食べ物を突っ込んだら命取りになります。今日の講演では言っていませんでしたが、嚥下を改善する鍼治療があります。また、むせないように食事にとろみを付けるのは常識ですが、味を香辛料(唐辛子や胡椒など)でスパイシーにすると喉の神経が刺激されて嚥下が改善するというデータがあります。知っただけでは意味がありません。そうと知ったら即行動。動いた人にだけ幸運がやってきますよ。

  • 高齢者の活動低下が心配です

    数日前までの寒波が嘘のように暖かくなりました。いい天気です。いつもどおり老人ホームなどの訪問診療に回りましたが、非常事態宣言を受けてロビーなどでくつろいだりデイケアなどの活動が制限されて、皆さん狭い居室内で過ごされています。することないのでベッドで寝ている人が多かったです。こんな日々がしばらく続くと筋力低下がすすみ、トイレに行こうとして転倒したり骨折したりする確率が上がります。また、一日寝て過ごすだけでは刺激もないので認知症が一気に進む恐れがあります。感染症のリスクもあるでしょうが、熱もない元気なお年寄りはできるだけ部屋から出して通常通りの活動を維持してあげたいものです。しかし、一人でも感染者が出ると施設の中は大混乱になりますから、お年寄りの健康というより運営上の危機管理を優先した形で入居者の行動制限が厳重になっています。仕方ないといえば仕方ないですが、かわいそうですね。

    こういう状況を危惧して、家庭で見ることのできるところはホームを一時退居されるケースがあります。理想と現実は相当ギャップが有り、家庭で見ることができると思っても子供やお嫁さんのマンパワーだけではどうしようもないと思います。家族総倒れになることも考えられます。連れて帰る前にケアマネージャーさんに相談して、訪問診療や訪問看護などのサービス(社会資源)を活用するよう用意周到にお願いします。

    ところで、今日スマートウォッチを買い替えました。今までもバンド型の小型スマートウォッチを使っていたのですが、今度はAmazfitGTRという機種です。アマゾンで5800円分のクーポンを発行しているのでかなり安くなっていました。携帯への電話着信や、メールなどの通知はもちろん、天気予報も見られます。画面(時計の文字盤)はアナログやデジタルなど、どんな画面にでもなります。100種類ほどのデザインから選べるので、気分で変えられます。また、一日3回アラームを設定しました。目覚まし、午後の診療開始10分前、寝る時間の30分前です。手首でブルブル振動するので便利です。