むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 抗インフルエンザ薬と検査キット

    タミフルの出現以降、インフルエンザの治療は激変しました。ご存知の通り、熱があればインフルエンザのキットで検査して、陽性なら抗ウイルス薬を投与し、陰性なら通常の風邪薬という感じです。これが理論通りにうまくいけば、インフルエンザによる学級閉鎖などは激減するはずでした。しかし、私が医者になった20数年前と今では、何ら変わっていません。診断も治療も新しくなり、時代は変わった気がするのですが、学級閉鎖など集団発生(流行)は依然として毎年毎年出ています。ワクチンの研究もしているはずですが、インフルエンザの流行が抑えられたという事実はありません。(これが理由で学校での集団接種は中止され、現在の任意接種になりました)

    なぜかということを考えると、みんなが検査キットや治療薬を絶対のものと信じすぎているような気がします。検査キットは感度というものがあり、陽性のものを陽性であると診断できる確率は70−80%です。つまり、本当はインフルエンザなのにインフルエンザでないと誤って診断される確率が20−30%はあるということです。その人たちが、自分は検査したけど陰性だったたという結果のみを信じて学校に行けば、感染源となります。本気で感染拡大を予防するには、検査結果は問わず、症状がある人全てを欠席にすべきです。むしろ検査することが害になっているのです。

    また、抗ウイルス薬は漢方薬の麻黄湯などと効果に差がないことが明らかになっています。抗ウイルス薬を使うとまるでインフルエンザウイルスが排除されたような気になるかもしれませんが、全くそういうわけではありません。データでは、治療しないで経過を見た場合に比べて「たった数時間解熱するのが早い」だけです。欧米ではすでに抗インフルエンザ薬の使用はスタンダードではなくなっています。実際は、20年前と比べて何も進歩していないのに、進歩していると思い込んでいる日本人だけが世界中でも非常に特殊な状況に置かれているという事実を学んでほしいと思います。

    *ただ、当院でも熱があればインフルエンザの検査をするし、抗ウイルス薬の投与をしています。なぜなら、社会全体(学校や職場)がそれを求めているからです。

    クリニックの駐車場でみた朝日