むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 静かな看取り

    訪問診療をしていた患者さんが亡くなりました。この方は、入居している老人ホームで最期を迎えたいという希望が強かったため、施設の受け入れ、訪問診療の体制、万一の際の入院ベッドの確保など受け入れ態勢を備えました。食事が入らない時には点滴できるように訪問看護にも協力いただきました。このように万全の体制で受け入れ、ちょうど1ヶ月がたったところでした。

    通常、癌末期で大病院に入院していると、これでもかと体に鞭打つように抗がん剤や放射線を続けます。体力は落ちるし、感染症にかかったりして大変な目にあいます。一方、今回のように老人ホームで最期を迎える場合、せいぜい酸素を流す程度で点滴も何もチューブは体につけません。病院では当たり前の酸素モニターや心電図などの生体監視は行いません。それに変わって、家族がそばにいて手を握り、頑張って、頑張って、と声をかけます。

    しばらくすると、家族も状況を受け入れ、「頑張れ」から「頑張ったね」に変わってきます。そして「いままでありがとう」と感謝の言葉にかわります。病院に比べて老人ホームはその人の自宅と同じですから、静かに厳かに時は流れます。病院で下手に最期を迎えると心臓マッサージされて、気管内挿管(管を喉に入れる)されて、人工呼吸器につながれたまま息を引き取ります。私は今までそんな病院で働いた時間が長かったため、このように静かで美しい最期はとても印象的です。このような最期を迎えることができるかどうかのポイントは・・・・

    本人と家族の覚悟だけです。また、家族は覚悟していても、突然遠い親戚さんが現れて「救急車で日赤にお願いします」なんて言い出さないことだけがポイントとなるのです。

    明午橋から見た白川