むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 場数を踏むことの大事さ

    マラソンの世界では公務員ランナーとして有名な川内選手が、普通ありえないほどたくさんの大会に出場していて、その道のプロ(オリンピック選考委員のような人たち)からは無謀だとかなんとか言われていましたが、当の本人にしてみれば一つでも多くの本番レースに出場することで鍛えられるのだ、それが自分の練習法だ、と言っていました。つまり、本番のレースに出ることも練習の一環であり、練習と本番は一体となっているわけです。

    最近、熊本市内ではものすごい勢いで震災のひどかったビルやマンションを解体しています。おそらく去年までだったら年に数回しかないような大型の解体工事がどんどん行われています。そして、それを見ていて思うのが、解体のスピードが以前と比べて手早く、要領良くなってきたなーということです。やはり、場数を踏むことで仕事は効率化され、技術は進歩します。素人目に見ていても、その進歩は明らかです。きっと大工さんも左官さんも瓦屋さんも、みんな場数を踏んで腕を上げていることでしょう。

    私たち医者も一人前になるためには場数を踏まないといけません。ただ、練習中の身であっても、患者さんに不利益があってはいけませんから、私たちの練習の場は研修指定病院でありそれは大学病院や国立病院などに限られています。修行はだいたい10年以上かかると思います。私のように開業すると、基本自分一人の責任で患者さんを見るわけですから、開業するまでにそれだけ十分な経験を積んでいなければいけません。

    一方、流行っている病院はそれだけ日々のトライアンドエラーの積み重ねができていますから、こういう症例にはこういう薬が効くと言ったノウハウもたくさんあります。そのノウハウは近代以前(戦前)であれば、医者の家系の門外不出の術として秘伝とされていました。「医学」は教えてくれることが多いのですが、「医術」はなかなか簡単には教えてもらえないのです。それはもしかしたらうなぎ屋さんのタレのレシピと同じかもしれません。ただ、今では学会で発表することも多いですから、やはり私たちは経験豊富な(場数を踏んだ)ドクターの教えをしっかりこうて勉強を怠ってはいけないと思います。thumb_img_0720_1024

    実るほどこうべを垂れる稲穂かな