むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 医学論文のトリックを見抜く

    早い人はすでに花粉症の対策を始めています。よく、早めに薬を飲むと軽くて済むといいますが、真偽の程はわかりません。なぜなら、たいていそんなことを言うのは製薬会社だからです。製薬会社は薬がたくさん売れればいいだけなので、早い時期からたくさん使いましょうと言うのは当たり前です。以前、糖尿病治療薬を糖尿病になる前から始めたほうが良いというデータを見たことがあります。いわゆる境界型の人に薬を使ったほうがいいというデータですが、これも製薬メーカーが持ってくるデータなので、真偽の程はわかりません。論文というのはいいというのがあれば、良くないという論文もあります。それぞれ嘘を言っているわけではなく、調べた範囲ではそうだったというしかありません。その研究の対象となった患者グループの特性が偏っていると結果も偏るわけです。したがって、論文を読む際には結果や結論を読むことは大事なのですが、患者背景をしっかり読むことが大切なのです。

    研究をする場合、まず「仮説」をたてます。そして、その仮説を「検証」して、「結論」を導きます。例えば「Aという血圧の薬が心不全の治療に有用だ」と仮説を立てます。それを検証するために患者さんを2群に分けてAという血圧の薬を使った群とBを使った群で血圧の変化と同時に心不全の改善具合を検証します。

    そこで問題なのはどんな心不全患者さんを研究対象にするか。例えば、心筋梗塞後の重症心不全の症例、あるいは高血圧で心肥大をきたした軽い心不全の症例、あるいは慢性心房細動のある不整脈由来の心不全。どういった患者さんを対象とするかで結果は違ってきます。仮説が正しい(治療効果に差が出る)ようにするためには慎重に対象を選ばなくてはいけません。そのようにして、考え抜いた結果、うまく差が出たら、製薬会社はそれがまるでどんな心不全にでも効くかのようにプロモーションします。私たちはそういった嘘に騙されないようにしないといけません。患者さんはプロではないので、我々がプロとして論文の目利きをしてあげないといけないと思っています。

    南阿蘇