むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • あきらめない嚥下障害

    私が以前勤めていた桜十字病院では「口から食べるプロジェクト」という取り組みをやっていました。今日は診療が終わってから、保険医協会主催のウェビナー(WEB講演会)で桜十字の安田先生、建山看護師さんなどによる講演を聞きました。桜十字での嚥下障害に対する取り組みの紹介です。歳をとって喉の筋力が衰えたり、脳卒中の後遺症で嚥下(飲み込み)が悪くなる例があります。食べ物だけでなく水を飲んでもむせるので、しょっちゅう肺炎を繰り返す困った病態です。

    肺炎を起こすと命取りになることから、以前は”胃ろう”といってお腹から胃に直接チューブを入れて経腸栄養をする方法を取ることが多かったのですが、患者さん本人が望まないのに強制的に胃の中に栄養を入れることで寝たきりになっても体だけは栄養状態もよく、いつまでも生かされる、という意味で、逆に問題視され、安易に胃ろうを作らないようにという流れになってきました。そういう中で、桜十字病院では頑張って口から食べていただこうという取り組みをやっているわけです。今日の講演ではその6年間の取組の成果について発表されました。

    講演を聞いてわかったのは、やはり嚥下が悪くなった人の嚥下リハビリは大変だということ。嚥下を専門とする専門看護師やST(口の麻痺を専門とするリハビリスタッフ)、歯科衛生士などが多職種連携をとって一日も休まず取り組まないといけないといっていました。やはり素人が家庭でなんとか食べさせようと口に食べ物を突っ込んだら命取りになります。今日の講演では言っていませんでしたが、嚥下を改善する鍼治療があります。また、むせないように食事にとろみを付けるのは常識ですが、味を香辛料(唐辛子や胡椒など)でスパイシーにすると喉の神経が刺激されて嚥下が改善するというデータがあります。知っただけでは意味がありません。そうと知ったら即行動。動いた人にだけ幸運がやってきますよ。