むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 腎性貧血の新しい治療

    慢性腎臓病、腎不全になると貧血を合併します。それを腎性貧血といいます。腎臓は造血ホルモンであるエリスロポエチンという物質を分泌して赤血球の合成を促進しているのですが、腎機能が低下すると、造血ホルモンの分泌も減って貧血になるのです。このエリスロポエチンを発見したのは熊本大学の宮家先生といいます。私は熊大医学部を卒業して血液内科の研修医になったので、その当時エリスロポエチンが発見されて間もないころで、宮家先生の苦労話はよく聞かされていました。そして、研修医時代にはすでに大腸菌で遺伝子組み換え技術により作成したエリスロポエチンが医薬品として登場し、私たちもその臨床治験を行いました。

    そのように、当時からエリスロポエチンを使って貧血治療をしていたので、この薬には馴染みがあります。開業する前には桜十字病院で透析を担当していたので、腎不全で透析になった患者さんの多くにエリスロポエチンを使っていました。その流れで、現在開業してからも腎臓が悪くて貧血になっている場合、エリスロポエチンの注射を使った治療をしています。貧血は、鉄欠乏だったり、再生不良性貧血だったり、加齢による造血機能の低下だったり、骨髄異形成症候群と言って白血病に近い造血異常の疾患だったりしますから、本当に腎性貧血かどうかの見極めをしないとエリスロポエチンは使えません。

    今日は、診療のあとWEB講演会で腎性貧血の勉強をしました。なんとこの度新規で内服の増血剤が発売されたのです。データによると従来のエリスロポエチン注射と遜色ない効果が得られているそうです。注射しないでいいのは患者さんにとってはありがたいことです。何より、簡単に治療できることで貧血が改善すれば体も軽くなり元気が出ますから朗報です。

    苔むした山小屋