むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 糖尿病の新たな展開

    久しぶりにリアルの講演会があり、参加しました。ホテルの宴会場だったのですが、参加者は10名前後でやはりこじんまりした会です。演者は熊大分子生理学の永芳先生でした。素晴らしい講演でした。例年だと、終わってから懇親会もあるのですが、今回はそういうのは無く、真面目に勉強の会でした。それにしても、ホテルは閑散としており、玄関にはタクシー一台止まっていません。ちょっと怖いくらいでした。経営が心配です。

    勉強した内容は、RNA修飾病という新しい概念。遺伝子はDNAでできており、それがタンパク質に変換される途中段階でRNAという設計図のコピーが必要となります。そのRNAが変なふうに修飾を受けると設計図通りタンパク質が合成されなくなるそうです。糖尿病でも、膵臓でインスリンを合成する際にRNAが異常な修飾を受けることで設計図通りの蛋白(プロインスリン)ができず、その結果、インスリンが活性化できない(Cペプチドが切れない)そうです。例えれば、万年筆を使いたいのにキャップが外れなくなり、万年筆はあっても字がかけない(役に立たない)。こういう異常が見つかったそうです。

    更に凄いのは、こういう異常蛋白を作ってしまうRNAの修飾を正しくする薬剤の候補が見つかったというもの。私もよく使っている薬ですが、その薬剤がまさかインスリンのRNAを正しく働かせる働きがあったとは驚きでした。この分野は非常に新しいですが、今後すばらしい展開が期待できます。やっぱり勉強というのは不要不急のものではなく、どんな状況でも休んではいけませんね。