むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • ウォーキングは健康の基本

    皆さんは毎日どのくらい歩きますか?私は仕事でずっと椅子に座っていますからほとんど歩きません。下手をすると一日で2000歩も行きません。ただ犬の散歩で毎日2000歩は歩くので、それを合わせると4000歩です。これでは、通常推奨されている1日8千歩とか1万歩には半分にも及びません。これではいけないと思い、最近は診察の合間に一旦立ち上がって診察室内をウロウロします。それでもおそらく10歩くらいでしょうか?できるだけ天気が良い日は自宅からクリニックまで歩いています。そうすると、1日1万2千歩はいけます。理想的です。ただ、時間がかかるのでスケジュールに余裕が無いとできません。あと2週間もすると桜が咲いて歩くだけで花見気分になれますから、今が一年でいちばん歩くのにいい季節です。

    東京に住む子どもたちが最近帰省してきましたが、東京に住んで、歩く習慣ができたようです。熊本にいる頃はすぐそこまででも車で連れて行って、といっていましたが、今では4-5キロくらいなら散歩感覚で歩きます。東京での移動は電車が基本ですから、駅から目的地までは歩くのが普通です。交通が発展している東京でこそたくさん歩きます。逆に私達田舎暮らしの人間はどこでも駐車場があるので車で行ってしまいます。本当に歩かないで生活できてしまいます。これは問題です。

    歩くのにはお金はかかりません。好きなところを好きなように歩けばいいのです。ただ、靴だけは歩きやすいものにしましょう。靴底を見てかかとのすり減り方に左右差がある場合、歩き方に変な癖があると考えられます。骨盤がゆがんでいたり、膝の具合に左右差があったりです。ウォーキング仲間に真後ろから見て歪みがないかチェックしてもらうといいでしょう。

  • 漢方だけには頼らない

    当院のポリシーとして、患者さんにとってベストと思う治療方法を考えます。ベストというのは副作用が少ないから漢方で、というわけではありません。例えば、血圧をきちんと下げるのには漢方では無理です。西洋薬ではいろんな強さの薬がたくさんあり、患者さんごとに最も適している薬が必ずあります。これを、たんに漢方のほうが良さそうだというイメージで漢方にこだわるのは、なんのメリットもありません。西洋薬も10年20年飲んで、全く副作用のないものがあります。逆に漢方は何年も飲むとかなりの確率で副作用が出ます。こういう事実を総合的に考えて、ベストな治療法を考えています。

    私の知り合いの漢方専門の先生がいます。この先生は西洋薬に対してかなり否定的で、コレステロールも血圧も薬は飲まないと徹底していました。しかし、最近聞いたところ、心臓の血管が詰まってしまって、ついには冠動脈のバイパス手術を受けないといけなくなったそうです。もし、10年前からコレステロールの治療薬を飲んでいれば、こんなことにならなかったのではないかと思われますが、今となってはそれは言えません。

    そういう事実を考えると、私も患者さんには漢方ばかり勧めることはありません。西洋薬に優れた薬があれば、当然そちらの方を優先します。逆に漢方のほうが間違いなくいいと思えば、多少飲みにくくても頑張って飲んでもらいます。ただ、風邪の治療のように、結果的にどっちでもいい場合もあるので、そこは患者さんとの話し合いでいいように決めているのが実際です。

  • 若い脳梗塞に注意

    このところ、40歳代での脳梗塞が立て続けにありました。普通、脳梗塞といえば、高齢者に多い疾患です。働き盛りの40歳代で起こすのは珍しいし、もし運動麻痺が残るようなら大変です。人生の後半が不自由します。若くして脳梗塞を起こした原因はよくわかっていません。高齢の場合、通常は心房細動、高血圧、糖尿病などが基礎疾患にあります。血栓を起こしやすい状態にあるのです。若い人の場合、先天性の脳動静脈奇形、心臓に卵円孔という穴が開存している、先天性の血液疾患(凝固異常症)などが関連していることが多いですが、今回当院で見た患者さんたちはそういう先天的な原因はありませんでした。ストレスや脱水でも血液がどろどろになりますから、何かあったに違いありません。

    血液をサラサラにするにはまず脱水の予防です。ただ、昔は寝る前に水を飲めばいいと言っていましたが、それは予防効果が証明されず、最近はあまり言わなくなりました。食べ物では、魚の油がいいです。イワシやサーモンなど脂ののった魚は血液をサラサラにします。魚やオットセイなどしか食べないエスキモーにはほとんど脳梗塞がいないことが知られています。

    脳梗塞は早く診断して治療すれば後遺症は残りませんが、遅れれば遅れるほど後遺症が残ってしまいます。手足が麻痺した、ろれつが回らない、激しい頭痛、など通常でない様子を見た時は「ひと晩様子を見る」ようなことはせず、一刻も早く受診して下さい。当院にはMRIはありませんが、怪しいと思ったらすぐに日赤に紹介します。どうしよう、しばらく様子を見てみよう、などと迷うことなく、1分でも早くご相談下さい。

    上江津湖

  • あれから7年

    東北の大震災からもうすぐ7年です。時が経つのは本当に早いものです。とは言え、東北の復興は道半ばであり、熊本も同じです。遅々として何も進んでいないように見えますが、実は確実に進んでいます。ブルーシートはほとんどなくなり、あたりは解体も終わって更地や空き地が目立ちます。そして、そのようなところに新しい家が建ったり、区画整理をし直して分譲されたりしています。確かに時は進んでいます。

    春のこの時期になると、東北の震災のことや熊本地震のことを思い出さずにはいられません。それは誰にでも起こることです。しかし、それを思い出して、不安が増したり、気分が落ち込むようなら困ったことです。精神科の領域では、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼びます。このPTSDをどう治すか、難しい問題です。ネットで調べると、カウンセリングや催眠療法と書いてありますが、私にはそのようなテクニックはありません。一つアドバイスをするなら、地震で失ったもの、できなくなったことなどマイナスのことを数えないことです。そのかわり、思いがけず手に入れたこと、できるようになったことなどプラスについて考えましょう。引っ越したこと、家をリフォームしたこと、仕事を変わったことなど震災後いろいろあるでしょうが、見方を変えればこれらはすべてプラスのことです。

    また、私の場合、PTSDには安定剤や漢方薬を使います。漢方では、PTSDに神田橋処方という特殊な処方があります。鹿児島の有名な神田橋先生が考え出した処方です。なぜこの処方がPTSDに効くのかの説明がないのですが、経験的に非常に有効とされています。私も、それを参考に時々この処方を使います。

  • 血糖は工夫次第

    糖尿病でこれまでずっと治療してきたのにへモグロビンA1cが10以上あり、いっこうに下がらないということで、自分の血糖はどうやっても下がらないと思っておられた患者さんがいます。食事もキノコ鍋のようなローカロリーに徹していたそうですが、どうしても血糖コントロールがうまく行かなかったそうです。このような場合、まず自分の膵臓からインスリンが分泌されているかを測定しないといけません。インスリンが出ていなければ、インスリンを出させるような薬を選ぶか、インスリンの注射をするかです。一方、インスリンが出ていれば、体がそのインスリンをうまく利用できていないということになるので、そういうインスリン抵抗性を改善する薬を用います。最近は新しい薬が色々と出てきて治療の幅が広がりました。そして、インスリン注射になる前に色々な内服薬によるコントロールが可能な時代になりました。

    結局、この患者さんも血液中のインスリン濃度を測って、理論的に治療戦略を考えたところ、うまく血糖は下がってきました。これまで下がらないと思っていたのに、ちゃんと下がるのです。最近は理論で考え、そのまま実行できるだけの薬が増えたことが福音となっています。すべては新薬のおかげです。

    更に最近は、研究の成果で驚くべき事実がわかっています。血糖を下げれば心血管イベント(心筋梗塞などによる死亡など)を下げることができるというのは間違いで、「どの薬剤で血糖を下げたか」によって患者さんの予後が異なるということです。これからは、単にヘモグロビンA1cがいつくかということだけでなく、どの薬をどのように使って血糖を下げたか(A1cがコントロールされたか)のほうが重要となる時代なのです。

    江津湖畔で夕日に輝くコケの斜面