むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 血糖は工夫次第

    糖尿病でこれまでずっと治療してきたのにへモグロビンA1cが10以上あり、いっこうに下がらないということで、自分の血糖はどうやっても下がらないと思っておられた患者さんがいます。食事もキノコ鍋のようなローカロリーに徹していたそうですが、どうしても血糖コントロールがうまく行かなかったそうです。このような場合、まず自分の膵臓からインスリンが分泌されているかを測定しないといけません。インスリンが出ていなければ、インスリンを出させるような薬を選ぶか、インスリンの注射をするかです。一方、インスリンが出ていれば、体がそのインスリンをうまく利用できていないということになるので、そういうインスリン抵抗性を改善する薬を用います。最近は新しい薬が色々と出てきて治療の幅が広がりました。そして、インスリン注射になる前に色々な内服薬によるコントロールが可能な時代になりました。

    結局、この患者さんも血液中のインスリン濃度を測って、理論的に治療戦略を考えたところ、うまく血糖は下がってきました。これまで下がらないと思っていたのに、ちゃんと下がるのです。最近は理論で考え、そのまま実行できるだけの薬が増えたことが福音となっています。すべては新薬のおかげです。

    更に最近は、研究の成果で驚くべき事実がわかっています。血糖を下げれば心血管イベント(心筋梗塞などによる死亡など)を下げることができるというのは間違いで、「どの薬剤で血糖を下げたか」によって患者さんの予後が異なるということです。これからは、単にヘモグロビンA1cがいつくかということだけでなく、どの薬をどのように使って血糖を下げたか(A1cがコントロールされたか)のほうが重要となる時代なのです。

    江津湖畔で夕日に輝くコケの斜面