むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 抗がん剤と漢方と

    今年のノーベル医学生理学賞は本庶佑(ほんじょたすく)先生に決まりましね。免疫療法で画期的な成果を上げていますから、評価されてよかったと思います。ところで、私は循環器が専門ですが、循環器内科で扱う心臓、血管系にガンはほとんど発生しません。心不全、心筋梗塞など命に関わる疾患は多いのですが、がんになることはないため、循環器の医者はほとんど抗がん剤を使いません。

    私は循環器内科に入局する前は血液内科が専門でした。血液内科では、白血病という血液の癌があるため抗がん剤の使用は毎日の仕事でした。今も、済生会や日赤などの腫瘍内科や化学療法の専門外来では、血液内科の先生が活躍しています。そういうわけで私は医者になってしばらくは抗がん剤を使うのが仕事でしたが、今とは時代も違うため、使った抗がん剤も今のものとは比べ物になりません。副作用も強く、大変な時代でした。

    その頃、抗がん剤を使うと食欲が低下して体力も落ちていつまでも退院できない患者さんが大学病院にはたくさんおられました。そこで私は当時勉強したての漢方の知識を駆使して補中益気湯など体力を上げる漢方治療を始めました。抗がん剤治療を受けた患者さんで、私が担当した患者さんたちからは今回の化学療法は回復が早く助かりましたとお礼を言われたのが嬉しく、どんどん漢方の勉強にはまってしまいました。それが私の漢方の原点です。

    広木公園内

  • 雨の日の体調不良に漢方

    また雨になりました。週末は次の台風が来そうです。雨が降りそうになると頭痛がするという方が結構います。ほとんどの場合片頭痛の体質です。こういう体質の方は、雨の日の湿度で頭痛がする場合もありますが、雨が降り出す前の気圧の変化(気圧が下がってくる)により発症することも多く見受けられます。漢方では五苓散がよく効きます。ただし、このような場合、五苓散以外に当帰芍薬散、苓桂朮甘湯なども候補となります。

    雨や台風で喘息が出る場合があります。こういう時は、早めに小青竜湯を飲んでおくといいようです。小青竜湯は気管支拡張作用があるので、気管支の狭窄に有効ですが、それ以外に水分代謝を良くして、利尿する働きも強力です。雨の日に効くはずです。

    他に、雨の日にめまいがするなら苓桂朮甘湯や真武湯、半夏白朮天麻湯などが有効です。雨の日に気分が沈んだり体が重いという場合、半夏厚朴湯や五積散などがいいと思います。最近、台風などの被害が続いているため、台風に対する不安が強く出ている患者さんが結構来院されます。これは漢方も多少有効と思いますが、通常の不安障害の治療で脳内のセロトニン(気分を安定させるホルモン)を補ったほうが確実です。ちゃんと治りますから迷っていないでご相談ください。

  • 午後に集中するには

    今週は月初でもありレセプトチェックがあります。私の1ヶ月分の診療の総チェックです。診察でどう考え何を検査して何を処方したのかがA4一枚の紙にまとまっています。一枚一枚見ながら、診察風景が目に浮かんできます。あーこの患者さんは元気になってよかったなー、とか、この薬は思ったより使うのが難しいな、とか、いろいろ思いながら振り返ります。そして、診察が適切だったかを1000枚以上チェックしていきます。国が決めたルールに則っているか、薬剤の効能効果、適正使用などのルールに従っているかを本を調べながらチェックしないといけません。ルールを守っていない場合、別に金儲けでなく患者さんを思って処方した薬も不適正として保険から切られてしまいます。毎月の点検には時間と労力を要します。私だけでなく、医療事務担当スタッフ全員で提出期限までに何度もチェックして仕上げます。

    いつもは週末にまとめてみるのですが、今回は月初が週の初めでしたから、平日にチェックせざるを得ません。始業前も仕事が終わってからも、家に帰ってからもずっとチェックです。集中しないとミスしますから本当に疲れます。こんなことで頭が疲れると、午前の診療はまだいいですが、午後の診療は疲れが出ます。そこで、私の取り組んでいる午後に集中するためのコツを紹介しましょう。

    まず、昼ごはんには糖質を取らないこと。炭水化物を食べると血糖が上がって眠くなります。私のランチはほうれん草やピーマンなどを炒めたもの、冷凍食品のから揚げや砂ズリのピリ辛炒めなどです、コメは食べません。そして、昼休みの往診帰りには、スタッフに運転を任せて10分ほど寝ます。しばらく車の中でウトウトするだけで午後の頭はすっきりです。

  • 歩行とヨガの効果

    歩く効能をテレビの番組でやっていました。認知症の予防、骨粗鬆症の予防、高血圧の予防、うつの予防、など歩くことで絶大な効果を発揮するようです。それぞれ何歩ぐらい歩いたらいいかを番組で言っていましたが、全部の効果を発揮するためには1日8000歩だそうです。通常1万歩と言っているのはただの切りがいいだけの話で、今回の科学的なデータに基づくと8000歩が目標になるようです。その歩数を歩く人と歩かない人では4ー6倍疾患の罹患率が変わるようです。認知症など特に薬がありませんから、歩くだけで予防になるなら是非取り組みたいものです。当院に通院されている方で多いうつ症状ですが、番組によると4000歩でいいそうです。家に引きこもっていてはこの歩数は難しいですが、ちょっと公園まで散歩するだけで、達成可能です。是非、引きこもっていないで外に出て歩いて欲しいと思います。

    私の場合、歩いて通勤すれば、毎日1万歩になります。ただ、雨の日や忙しすぎて車で通勤すれば、3000歩ぐらいにしかなりません。こういう時は、その場でスクワットが最適です。場所も時間もとりません。コーヒーのお湯を沸かしながら10回、テレビのCM中に20回、という感じです。

    それから、今月日経ヘルスという雑誌の付録についていた簡単ヨガという漫画があったのですが、それに紹介されている3つくらいのヨガの基本ポーズは仕事の合間に椅子に座ったままでもできるし、やってみると本当に体がリフレッシュします。レセプトの点検で目も頭も疲れ切った時にわずか数分ヨガのポーズをするだけで復活します。すばらしいです。ヨガ4000年の歴史ですね。このヨガの本はクリニックの待合においていますのでご覧ください!

  • 落ち葉を掃きながら考えた

    台風一過でいい天気になりました。クリニック前の歩道には街路樹があるのですが、台風の影響で落ち葉がすごいだろうということはわざわざ見なくても予想がつきました。そこで今朝は6時半からクリニックに出勤しました。さっそくほうき、ちりとり、ビニール袋を持って外に出たところ、ご近所のMさんが落ち葉をかき集めてくれていました。それにしてもズゴイ量です。挨拶もそこそこ私も落ち葉掃きに加わりました。クリニック前は多分70mくらい道路に面していると思いますが、1ブロック掃除するのに二人がかりで1時間はかかりました。

    いつも落ち葉の掃除をしていて考えるのが京都の料亭やお寺の話です。一度完璧に掃除して、そのあと色形の鮮やかで綺麗な落ち葉を自然な感じに撒くというもの。撒くというより生け花のような感じで玄関を彩るディスプレイでしょう。風流ですね。

    このように、完璧に綺麗すぎるのは逆に不自然。そこで、手を抜くわけでなく、計算づくで手を抜いたように見せるテクニック。真似したいものです。ここで思い出すのは、大学院生の頃に論文を書くテクニックです。実験データから完璧な論文を目指して書くわけですが、それを投稿すると、レフリー(医学雑誌の審査員)からはとても無理難題を押し付けられて、それを解決しないと掲載しないと言われます。それを避けるには、完璧と思って書いた論文から、わざとデータ(図表など)を一つ削って、惜しいもう一歩!という論文に仕上げて投稿するのです。するとレフリーは、当然プロですから、そのデータを出せ、と言ってきます。そこで、待ってましたとばかりに、準備していたデータを送って完璧な形に仕上げてめでたく掲載されるというわけです。論文を書くときのテクニックが落ち葉を掃除するのと同じなのです。100%全力を出し切っても正当に評価されないとき、手を抜くのではなく110%働いて90%に見せかけるという高等テクニックです。会社でも通用すると思いますよ!