むらかみ内科クリニック

院長ブログ

BLOG

  • ポリファーマシーの問題

    当クリニックのあたりは小高い丘になっているため、朝は気温が低く氷点下でした。霜が降りて今年一番の寒さです。テレビでは大雪のニュースとコロナ拡大の話題ばかりやっています。冬だから当たり前です。そんなに騒ぐことではありません。夏に雪が降ればニュースですが、この時期、雪が降ったと一日中ニュースで言うのは、よほどネタがないのでしょうか。一方、経済に目を向けると、日経平均株価はこの10年でも経験したことない高値圏に達しています。実体経済と乖離した高値は、世界の金融機関がコロナ対策のため市場に資金を投入した結果、お金が余って仕方ない状態になっているからです。企業は業績も悪く、年を越せるか不安なところもたくさんあるのに、株価だけが上がっています。明らかにマネーゲームになっているので、今このタイミングで素人が調子に乗って株式に手を出すのは危険だと思います。

    さて、今日も帰宅後はWEB講演会に参加しました。演者は心臓血管研究所の山下先生。とても頭のいい先生で、話が面白い。この先生の講演を聞きに何度も東京へ足を運んだことがあるのですが、今日は自宅からパソコンを通しての聴講でした。講演が終わって、質疑の際に高齢者に対するポリファーマシー(多剤処方)に対する先生の意見を求められたところ、山下先生のお答えは、素晴らしかったです。長期予後(何年も先の状態)を改善するための処方から切っていく。そして、QOL(生活の質)を維持するのに必要な薬は残す。例えば、コレステロール、血糖、血圧などの薬は切っても良い。コレステロールが上がっても、血糖が上がっても何も起こらない。こういう治療は20年以上先にやってよかったという結果が得られるものなのです。

    私も同じ考えで、80歳も超えて来たら、血糖やコレステロールの値はあまり厳密に管理しないでいいと思っています。それだけ長生きしたご褒美に、美味しいものを食べてほしいです。患者さんは、若いときに医者から厳しく言われたことをいつまでも金科玉条のごとく覚えていて、コレステロールなどの数値が上がることをすごく気にしますが、多剤併用(10種類近い薬を毎日飲むこと)のほうがよほど危険です。

  • 附子(ぶし)で冷えと痛みを取る

    毎朝、日の出前に歩いて出勤するのですが、今朝は雪が舞っていました。熊本市内では初雪だったと思います。寒いと、体のあちこちが痛むという患者さんが増えます。リウマチも冷えると痛みますが、それ以外でも冷えと痛みは密接に関係します。西洋医学では痛みにはロキソニンなど解熱鎮痛剤を使いますが、その効能の通り解熱剤には体を冷やす性質があります。冷えて痛んでいるのに冷やすのは理屈から考えておかしいです。湿布も通常はヒヤッとする成分(メントール)を含んでおり、貼ったところの体温が下がります。要注意です。

    私たち漢方医にとって、冷えて痛むときは温めて治すのが当たり前です。温めて治す生薬の代表は附子(ブシ)です。桂枝加朮附湯、大防風湯などに入っています。また、附子だけを粉末にした附子末という製剤があり、当帰芍薬散に附子を追加して当帰芍薬散加附子とか、十全大補湯に追加して十全大補湯加附子みたいにして使います。附子の量(グラム数)を調整して温めながら痛みを取ります。

    附子の入った漢方薬は他にも芍薬甘草湯に加えるとぎっくり腰や生理痛に抜群に効きます。葛根湯に合わせて葛根加朮附湯という処方は頭痛肩こりに効きます。麻黄附子細辛湯という風邪薬にも附子が入っていますが、寒気と喉の痛みが取れて非常に喜ばれる処方の一つです。注意点として、子供にはあまり使いません。子供は火のかたまりのようにしていて冷えていないことが多いからです。西洋医学がなかった時代にはショック状態みたいな重篤な患者さんに四逆湯という附子の入った処方を使っていました。附子はとてもよく効く生薬ですが、もともとトリカブトという有毒な植物です。もちろん漢方製剤に含まれる附子は解毒処理してあるので心配いりません。

  • みかんやいちごの収穫・・という仕事もある

    よく、会社のストレスで動悸や吐き気がして体調不良で早退した。翌日、出勤しようとしたが、どうしても体が動かない、みたいな患者さんが来院されます。よく聞くと、上司がとても怒りっぽくて指導という名のパワハラを繰り返している場合が多々あります。ただ、私たちのところに来るのはパワハラされた、という被害者意識のある患者さんだけで、パワハラをしたとされる上司が来ることは極まれです。それでも、私の経験からすると、どちらにも言い分があり、どちらかが悪とレッテルをはれるようなかんたんな構図ではないことが多いと思われます。専門的に言うと、仕事にいけなくなった側にも何らかの問題があり、それは発達障害(自閉症スペクトラム、アスペルガー、多動・注意欠陥障害など)が多少なりとも存在して、組織になじまないことが多いと感じます。

    診断書を書いて2−3ヶ月休職すると、体調も良くなることが多いですが、復職しようとすると駐車場まではいけたが車から降りられなかったとか、仕事を再開しようとしたけど上司の顔を見た途端震えが止まらなくなってまた早退した、みたいなことになります。会社からは「もっと完全に治ってから出て来い!」といわれますが、完全に治ったかどうかは出勤してみないとわかりません。何しろ家では元気なのですから。

    結局、そういう場合、半日出勤など復職プログラムを準備してもらい、少しずつ慣らす以外にないのですが、殆どの場合上司との関係性に問題があるので、部署異動するか転勤しないとなかなか元通りの職場で元気に働ける場合は少ないように思います。そのような人におすすめするのは農家での収穫のバイトです。上司はいません。自然を相手に黙々とみかんやいちごの収穫をするのはストレスも少なく、達成感もあり、働きやすいと思います。当院では何人もこうして農家のお手伝いをして社会復帰した方がいます。

  • 冷えると頻尿が起こりやすい

    天気予報通り、冷えてきましたね。クリニックは待合の換気をしないといけないので、なかなか部屋が暖かくなりません。今年はどこも同じと思います。申し訳ありませんが、暖かい格好でおいでください。患者さんに聞いた話では、発熱外来をやっている病院に行ったら駐車場のテントで3時間以上待たされて寒かった、風邪が悪化した、という事例があります。そんなことしてまで検査受けなくても、軽症なら家でじっと寝ていればいいと思います。ビタミンCをたっぷりとって、葛根湯を熱々のお湯に溶いて飲みましょう。市販の葛根湯は1包では弱いので、1回に2包は飲んでも大丈夫です。

    日が暮れるのが早く、日照時間が随分短くなりました。私は朝6時過ぎに家を出ますが、真っ暗なので懐中電灯を持って歩きます。帰宅も同じです。懐中電灯は足元を照らすためでなく、車や自転車が暗い道で自分に気づかないとあぶないので目立つように照らすのです。ところで、日が短くなると体内のビタミンDが減ってきます。体はそれに反応して冬眠モードにはいります。テンションが落ちて、うつっぽくなる季節です。そこで、この季節を元気いっぱい過ごすにはとにかく部屋を明るくしましょう。時間があれば日向ぼっこをしたり野外でウォーキングなど日に当たる運動をしましょう。それでも足りないならビタミンDをとりましょう。私の場合、出勤時、帰宅時とも真っ暗なので、ビタミンDをとるしか方法がありません。

    冷えてくると多いのが夜間頻尿です。一晩に3回以上トイレに起きるようなら病的ととらえます。睡眠不足になります。漢方では体を温める八味地黄丸や牛車腎気丸を使います。また、男性の場合前立腺肥大が悪さをしますから前立腺の薬を使います。女性の場合多くは過活動膀胱です。切迫尿失禁(突然の尿意でトイレに間に合わない)などがあれば治療の対象となります。当院でもこういった頻尿治療薬の処方を行っていますので、気になる場合我慢せずにご相談ください。

  • 笑顔は雰囲気を作る魔法

    昨日書いたように、自分の赤目(結膜の出血)を漢方で治せたので、いい経験をしたと思っていたところ、今日の外来でさっそく同じ症状の患者さんが来ました。いつもなら、「時間が薬。1週間ぐらいかかりますが、だんだん薄くなるので心配ないです」というところですが、「腫れが早く引く漢方があるので、しばらく飲んでみませんか」というふうに変わりました。この患者さんは、私のように自然と出血したのではなく、眼科で網膜の病気を治療するため目に注射をしたとのこと(あ~怖いですね!)で、その後の出血だったそうです。眼科では、そのまま様子を見るようにと言われたそうですが、かなり血腫もひどく見栄えだけでなく気持ちまで沈んでいました。この症状に治療法を見いだせたのは大きな収穫でした。災い転じて福となす。

    今週は、当院ナースのおすすめで、韓流ドラマ「運命のように君を愛してる」をNetflixでみています(https://unmei-kimi-ai.brokore.com)。回を重ねるごとにどんどん引き込まれます。とくに主人公の二人が素晴らしい。チャン・ナラさんの美貌と演技もさることながら、男優のチャン・ヒョクが面白い。どんな困難にあっても、「ハハハハハ」と高笑いする。暗い雰囲気も吹き飛びます。やはり笑顔は嬉しいから笑うのではなく、意識的に作ることで雰囲気をコントロールする魔法です。

    それにしても、診療中大きなマスクをしているので、口元を隠して笑顔を作るのは難しいです。目だけで笑顔を作るには、全力で微笑まないと相手に伝わりません。診察のときはできるだけ笑顔をと思っているのですが、正直十分できていないと反省です。昔、私が駆け出しの医者の頃は、若く見られないように(なめられないように)渋い顔をして話すものだと先輩から習った覚えがあります。しかし、時代は変わりました。そして、大学病院と違って、クリニックはサービス業でもあるので、いつもニコニコ和やかな診察室にしたいと思っています。

    味噌天神