むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 生活指導の難しさ

    毎年のことですが、当院は4月1日からしばらく暇になります。外来患者さんが急に減るのです。例年、月の後半には普通に戻るので心配していませんが、経営のこともあるので、暇だからと言って喜んではいられません。いつも慌ただしくして、患者さんとゆっくり話す暇もないのですが、このところの患者数だと、お一人お一人ゆっくり話したり検査する時間がとれています。本当は、我々医者の仕事というのは、検査値を見て薬を出すだけでなく、お話を通してどんな生活習慣が問題で今の病気が起こってきたかとか、そういったの問題点の解決方法まで一緒に考えてアドバイスするべきと思っています。検査値を見て薬を出すだけなら今後AIロボットがとって代わる日も来るのではないかと思います。

    生活指導で思い出しましたが、例えば高血圧の患者さんには「塩分を控えめにしましょう」ではなく、「塩分7g以下にしましょう」と具体的に指導しなさいと厚生局から注意されます。数年に一度、厚生局からカルテを見せろといわれて、適切な指導をせずに薬だけだしていると、怒られるのです。しかし、塩分7g(一日合計)がどんな料理になるかとか、まともに指導しようと思えば、料理教室までしないといけなくなります。仕方ないので、国が言う通り7g以下にしましょうと言うにとどまります。

    実際の問題は、塩分7gがどんなものかというところではありません。料理を誰が担当するかがポイントです。もし、お嫁さんが作るのなら、おじいちゃん本人に塩分7gにしましょうと言っても意味はありません。同居している孫のために毎日ハンバーグとか、スパゲッティーという家庭で、おじいちゃんおばあちゃんだけ薄味の和食にするなんて、無理だと思います。そういった個々の問題を考えながらアドバイスするのが本当の意味での生活指導だと思うのですが、現実的にはなかなかできていません。

  • コロナワクチンの予約(熊本市内はまだです)

    コロナワクチンの話題です。熊本市内では医療従事者の分もほとんど行き渡らず、いつになったら始まるんだろうと言う状況です。一方、郊外の方ではすでに医療者枠は終わっており、高齢者に案内が始まっています。人口密度の少ないところに先にワクチンが行き渡るのは変な話です。できれば、熊本などほとんど患者さんがいないので、大阪や東京など患者さんの多いところにワクチンを回してあげてはどうかと思います。

    今日は昼に暇だったので、待合ロビーでワイドショーを見ていたら、ワクチン予約の話題をやっていました。東京の郊外も高齢者枠の予約が始まったそうです。予約センターに電話かネットで予約するそうですが、高齢者ですからネット予約よりまず電話をする。その結果、予約センターは電話が殺到して、電話はつながりません。仕方なく、スマホをあれこれいじくってやっと予約しようとしたら、「4月の予約枠は終了しました、次のワクチンが入荷するまでお待ち下さい」だそうです。結局電話がつながった人も、わずか10分で予約枠は終了したそうです。

    去年の冬はインフルエンザのワクチンもあっという間に品切れでした。例年より多めに入荷したのにわずか2週間ほどでシーズンの予約枠が全部埋まってしまい、多くの患者さんに行き渡らずに不満を持たれた方も多かったと思います。コロナワクチンはインフルワクチン以上に流通が面倒でいつ頃何本入ってくるのか全然わからない状況です。皆さん、我先にと自分のことばかりいわず、お年寄りや重い持病のある人に回してあげるくらいの心の余裕を持ちましょう。

  • 青龍とは東の神様

    県庁の前を散歩したら、いちょう並木が新緑に輝いていました。黄金に色づく秋もいいですが、青々とした春もきれいですね。青々という言葉で思い出したのですが、日本語は緑のことを青と言うことがあります。信号も青といいますが緑に近い色合いです。これはどこから来たかというと、「蒼(あおい)」という言葉です。蒼は草かんむりですから草木が青々と輝くさまを蒼と表現したわけです。したがって、日本語の色彩感覚がおかしいのではなく、もともとそういう表現があったというふうに理解しないといけないのです。

    漢方で、陰陽五行という理論がありますが春の方角は東。色は青、臓は肝。腑は胆。味は酸、と決まっています。角界に朝青龍という力士がいましたが、朝の方角は東、色は青という五行の理屈をそのままネーミングしたものです。花粉症に効く小青龍湯も朝青龍と同じ青龍の文字が入っています。青龍は東の神様のことです。蒼龍とも言います。そして小青竜湯はかなり酸っぱいので五味も東の味=酸味に一致します。おもしろいですね。

    このところ、黄砂の影響と思われますが、喘息患者さんが増えています。そういう私も昨日から深呼吸すると胸がヒューヒューなって息切れしたり咳が出たりします。喘息になったのは去年からです。私の場合、シングレア(モンテルカスト)を1錠飲めば一日快適に過ごせます。漢方では小青竜湯や五虎湯、あるいは麻杏甘石湯が良いと思われます。

    熊本県庁

  • いろいろな種類の汗と治療法

    暑くなりましたね。診察室は今シーズン初めてクーラーを入れました。患者さんはまだ厚着の方もいらっしゃいますが、私は半袖白衣です。難しい症例を考えると頭がオーバーヒートしそうになります。頭を涼しく冷やしたほうがいいのはパソコンのCPUと同じです。こう暑いと汗が出ますが、汗にもいろいろあります。暑くて出るのは当たり前ですが、緊張して手や頭から滝のように汗が出る人がいます。多汗症といわれる状態です。恥ずかしくて握手できないとか、顔を流れる汗を拭き取るハンカチが手放せないといわれます。もう一つ困るのはワキ汗。洋服の素材によっては汗で色が変わり目立ってしまう。これは、これまで美容整形でボトックスの注射をして汗を止める方法がありましたが、最近新しい塗り薬が発売されました。保険適応です。塗ることで局所的に発汗に関する神経伝達物質のアセチルコリンをブロックし、発汗を抑えます。面白い薬ですが、また当院では使ったことはありません。

    多汗症は、漢方治療を希望して来られる場合も多いので、わりと治療しています。漢方が効けばいいのですが、100%有効ということはありませんので、やはり抗コリン剤も使います。抗コリン剤の内服は汗は止まるのですが、体に熱がこもったようになることがあり、結果的には使えない場合もあります。逆に、発汗が少ない人で熱中症になりやすいということで漢方を希望される方もいます。その場合、汗を出す治療というより、漢方で体を冷ましてあげる治療をします。これは、更年期でほてって仕方ないという場合の治療法にもにた感じの処方となります。

    寝汗というのもあります。寝汗は普通の暑くて出る汗とも緊張して出る汗とも異なります。多くの場合、体力を消耗したような虚弱体質で寝汗が出ます。体表の汗腺(毛穴)をギュッと締めておくには気のパワーを必要とします。その気が不足すると毛穴が開き、汗が漏れてしまうと考えるのです。したがって、寝汗の場合は気を補う治療をします。このようにひとことに汗といってもその背景によって適切な治療法を考えるのも漢方の面白いところです。

  • 邪気と正気の戦いについて

    雨はふらずいい天気なのですが、黄砂で霞んでいます。今日は風も強いので桜吹雪でした。犬の散歩をしていると、ホコリが目に入ります。ところで風邪は「ふうじゃ」とかいて「かぜ」と読みます。風のように突然吹いてきて体に影響するという意味です。脳卒中のことを中風(ちゅうぶ)と昔呼んでいました。中という字は「当たる」という意味です。的中(てきちゅう:的に当たる)という字があるのでわかると思います。したがって、中風というのは突然手足が麻痺する脳卒中の病態を風に当たったようだと表現したわけです。

    邪(じゃ)というのは風だけではありません。漢方の理論には、病因論というセクションがあります。そこには、病気の原因は内因と外因の2つに分けられると書いてあります。内因は生活習慣病、ストレスなど内的な問題です。一方、外因としては、風寒燥湿暑火という6つの要因が挙げられています。つまり、風邪(ふうじゃ)だけでなく、寒の邪もあるし暑の邪もあるということです。私が漢方の診察をする際にはこういったどのような病因(邪)が悪さをしているかを考え、治療方針を決定します。

    漢方の理論では、邪だけで病気になるとは考えません。邪正闘争というのですが、邪に対して体には正気というものがあり、免疫力や抵抗力の意味です。つまり、病気になるかどうかは「正気」と「邪気」の戦い(闘争)の結果、正気が邪に負けると病気になるわけです。今話題の新型コロナも「邪」なのですが、発症する人の割合は少ないので弱い邪です。体力さえしっかりしていれば邪にさらされても発症しないというわけです。したがって邪を怖がるひまがあれば、正気を高める努力をしましょう(正しい栄養、十分な睡眠、ストレスを避ける、が大切)。