むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • 仕事に行けない人

    お盆休みです。皆さんはいかがですか?開業する前は透析担当をしていたので、休日なんて関係なしに働いていました。働くこと自体は嫌いではないので別にいいのですが、他のみんなが休んでいる際に自分だけ働くのは無意識のうちにもストレスを感じていたと思います。休日の手当てをもらったとしても休みがないと使う機会もありません。

    急に仕事に行けなくなったと言って来院される方が毎日数名います。仕事に行こうと準備はしたけど、吐き気がするとか、めまいや動悸がするとか、体調に異変をきたしてどうしても体が職場へ向かわない。あるいは職場までは行って見たものの、建物には入れず引き返してきた、ということもあります。こういうケースでは、やはりなんらかの職場でのストレスを抱えていると判断します。伺うと、思い当たること(人間関係や過重労働が多い)がある場合がほとんどですが、たまに全く思い当たるようなストレスはないと断言されることがります。こういう場合は、それ以上追求しても仕方ありませんが、きっと催眠術のようなテクニックがあれば引き出せるかもしれません。

    それはともかく、そういう風に職場にいけなくなった人の治療は簡単ではありません。やはり仕事をしばらく休んでもらうしかありません。休んでいるうちに体も心も回復してきます。薬は補助的に処方しますが、環境と時間がいちばんの薬です。

  • 人目を気にしない生活inアメリカ

    立秋を過ぎた途端、夜はずいぶん涼しくなりました。また、日が暮れるのも早くなり、私が帰宅する時間はすでに真っ暗です。漢方の陰陽でいえば、陰が次第に強くなってきたことを実感します。うっかりいつものようにエアコンを強く入れて寝てしまうと風邪ひきそうです。気をつけましょう。

    明日からお盆の連休という人は多いと思います。今日の夕方は道もずいぶん閑散としており、人によってはすでに休暇をとっているのかもしれないなと思いました。一方私達の仕事は、お休みに入る前後は大混雑です。当院もお盆休みが13ー15日です。その週に薬が切れないよう、どうしても前後の日程に集中してしまいます。ところで、夜10時ごろゆうパックを受け取りに郵便局へ行ったところ、長蛇の列でした。お客さんは建物の外まで列をなしていました。どこもお盆前というのは忙しいようです。

    日本人はみんな横並びが好きで自分だけ違うのはとても気にします。夏休みを取るのもみんな一緒。そのせいで、行楽地は大混雑するし、飛行機や高速道路も渋滞します。アメリカなどではみんなそれぞれが好きな日程で休みを取るため、日本のように同じ週末に大混雑なんてありません。多民族国家というのはそういうものです。みんなそれぞれが違う個性を持っているから、それを尊重します。他人と違うからと言って変な目で見たりしないので人目を全く気にすることなく過ごせるのは、夢のようです。日本よりはるかに気楽な生活がそこにはあります。

  • ブログを書き続ける意義

    診察の際にこのブログを読みましたと多くの患者さんに声をかけて頂きます。毎日隅々まで読んでいただいてありがとうございます。感想など言っていただくと励みになります。当院はもうすぐ開院2周年です。実際にオープンしたのは9月1日だったのですが、保健所に開設届けを出したのは、8月8日でした。あれから2年、本当によく働きました。振り返っても、毎日が濃厚で5年くらいたった様な気がします。毎日毎日本当に難しい患者さんが「助けて下さい」と来院されます。いくつもの病院をたらい回しにされて、やっとたどり着きました、と言われると頑張るしかありません。どんな病気なのか、どう治療したらいいのか、どの患者さんも教科書に出てくるようなわかりやすい症例ではなく、どこにも治療法が書いてないような難治例です。

    そういう患者さんが集まって来ると、俄然やる気を出して頑張ります。他で治せなかったなら、漢方、鍼、生活指導、その他全ての方法を使いながらなんとかしてあげたい。これが当院の経営理念であり、存在価値であると思っています。患者さんがどんどん増えて来て混雑することも多くなりました。待ち時間をできるだけ少なくする努力をしていますが、ピーク時にはどうしても1時間程はかかることがあります。ご了承下さい。

    また、患者数が増えるに連れてお一人お一人に十分お話しする時間が取れなくなって来ました。挨拶もそこそこ本題にはいり、状態を観察し、治療の方針を立て、患者さんの疑問に答えたりしているとあっという間に時間がすぎてしまいます。食事の取り方、ビタミンのすすめ、その他いろんなアイディアがあるのですが、ゆっくりはお話しできません。診察時に簡単な説明はしますが、ブログを参考にわたしの考え方を理解していただけるとたすかります。

    今日の夕焼け@尾ノ上

  • コレステロールを下げるべきか下げざるべきか

    コレステロールが高いと検診で引っかかります。再検査でも高い場合、薬で下げましょうという話になります。ガイドライン的にはLDL(いわゆる悪玉コレステロール)がいくつ以上なら下げましょうということになります。個々のリスクファクター(危険因子)に応じて厳しく治療目標が定められます。循環器内科を専門とする立場としては、ガイドラインを遵守して薬を使うのが正しいので、わたしも、検診で引っかかった人にはできるだけガイドラインに沿った治療を心がけています。実はここに私なりの葛藤があります。

    以前はコレステロールが高い人には卵やイカなどの食材はコレステロールが上がるから食べないように、と指導していましたが、最近はこれが間違いだということが明らかになっています。今では、卵は制限する必要なしとなっています。そもそも血液中のコレステロールの7ー8割は自分の肝臓で合成されたものであり、食事から入ってきたのは2ー3割にしかすぎません。それだけ肝臓がコレステロールをたくさん合成しているということは、いかにコレステロールが体にとって大切かということです。細胞膜にはコレステロールが必要で、コレステロールを薬で下げすぎると筋肉などの組織が崩壊して筋肉痛の副作用が出ることが知られています。

    またコレステロールの合成を阻害するスタチン薬をのむとコエンザイムQ10という大切な酵素の合成まで阻害されてしまいます。こういった悪影響を考えると、果たしてガイドライン通りコレステロールを下げていいのかという疑問が湧いてきます。コレステロールの中で病気をひき起こすのは酸化LDLというものです。LDL(悪玉コレステロール)が酸化すると悪さをするのです。そこで、理論的には酸化を防ぐビタミンCとEを十分量取ることでLDLの酸化を抑制できます。私はビタミンCを毎日3000mg、ビタミンEを800mgとっています。この量は保険適応外(自己責任)です。これがスタチン(コレステロールを下げる薬)より優れた治療であるという学説がありますが、循環器学会的にはまだ一般的な意見ではありません。そこには、スタチン薬を売る製薬会社と学会の癒着なども絡んだ大人の世界があるのかもしれませんが、私たちにはわからない難しい世界です。

  • 食事指導

    食事指導といえば、高血圧の人の減塩、コレステロールが高い人に油ものを食べすぎない、糖尿病の人に甘いものを控える、などと通り一遍のことを思い浮かべるかもしれません。私の外来では、こういった生活習慣病の食事指導はあまり口うるさくは言わないようにしています。そんなひと言で改善するとは思えないからです。

    例えば糖尿病の食事指導を大きな病院では栄養士さんが行います。おそらく、カロリー計算表を説明して、何が何カロリーだから、1日3食で1800カロリーの抑えるには、これとこれで何カロリーになります、などと電卓片手にお勉強、みたいな世界になります。しかし、私はこの食事指導は片手落ちだと思います。

    毎日何を食べているか、誰が作っているのか、誰と一緒に食べるのか、買い物はどこに週何回行くのか、そういう情報に基づいて個々に考えるべきです。例えば、高齢者の独居で自分ではほとんど料理できないため、ご飯と漬物とたまに家族が持ってきた食材しか食べないという人にはカロリー計算の方法を教えても仕方ありません。いかにきちんと3食食べてもらうかの工夫あるいは支援の方法を考える方が先です。こういう個別に対応した食事指導は時間もかかるしマニュアルがないため経験がないとむずかしいものです。通り一遍の食事指導なんて、時間とお金の無駄だと真剣に思っています。