むらかみ内科クリニック

院長ブログ

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  • ネーミングの重要性

    子供が出来たら「名前なんにしよう」という話になることでしょう。それと同じで、クリニックなどをオープンする際にもそのネーミングにはひたすら頭を悩ませます。それほどネーミングは将来を左右する重大なものです。ところが、私の家の近所に看板も名前もないパン屋があります。みんなこの店を話題にすることは殆どないと思います。なぜなら、名前という共通認識がないため、あの店美味しいよとか、あの店をネットで検索しようというときにキーワードがないのです。もし、名前がなくても「クロワッサン専門店」など、なにか際立ったキャラクターがあれば、勝手なあだ名が付きますからいいんですが、そうでもない場合、早晩世の中からは忘れ去られる運命だと思います。

    病気にもネーミングが重要な働きをします。2005年に突然世にあらわれたメタボリックシンドローム(いわるるメタボ)という言葉は有名です。これは、内臓脂肪、高脂血症、高血圧、高血糖の4つが寿命を縮めるリスクになるというものです。診断基準の内臓脂肪は本来CTをとらないと計測できないのですが、便宜上腹囲測定で代用したため、なんとなく肥満=メタボという雰囲気が世に広まりました。腹囲を測っても、それが内臓脂肪ではなく皮下脂肪だったら、メタボのリスクではないし、そもそもメタボリック症候群というものの診断基準は肥満ではなく、内臓脂肪蓄積(腹囲が基準以上)+脂質、血糖、血圧の3つのうち2つ以上が基準を超えるものですから、血圧や脂質が正常で単なる肥満者はメタボの診断にはあたらないのです。しかし、これをメタボと呼んで、肥満者の代名詞にしてしまったため、取り返しがつかない誤認識が世に広まってしまいました。

    今日、ためしてガッテンを見たら、「肩こり」と「首コリ」は別物だと言っていました。これは、「首コリ」という概念を区別してネーミングすることで、治療方法も異なることをはっきりさせるという意味で大切なことです。今日のがってんで言っていたことは、私も日頃患者さんに鍼治療をする立場として認識していましたが、鍼灸師さんがちょっとしたテクニックを番組で披露していたのを見て、目から鱗が落ちました。

    ソウル 明洞

  • 労働市場は売り手市場

    また、月初めでレセプトチェックが忙しい時期です。先月(1月)はインフルエンザの患者さんが多かったため、レセプト枚数が多く、チェックにも時間がかかります。今週末はそれにかかりっきりとなります。さて、来週2月4日からは、熊本電子ビジネス専門学校から医療事務の勉強をしている学生さんが実習に来ます。当院で3週間に渡って医療の現場を体験してもらうことになっています。受付や診察室で見かけたらよろしくおねがいします。若い学生さんですから、将来の金の卵です。大切に育てたいと思います。

    当院の通院患者さんからよく聞くのですが、どこの職場も人手不足が相当深刻なようです。これからの日本は更に人口が減って来ます。高齢者は増えて、若者が減りますから大変です。若い人を雇いたくても無理ですから、シルバー人材に期待するしかありません。それにしても、すでに若い人たちには相当な負担がかかっているようで、夜勤などをしてくれる人手不足は深刻です。シフトに入ってくれる人たちはかなり無理しているので、体を壊さないか心配です。先だっての国会では外国人労働者の受け入れを議論していましたが、タイムリミットはすぐです。

    特に介護現場などでは人がいないため、建物を作っても可動できないようなところがたくさんあります。よほど給料を上げれば人材も揃うのでしょうが、人件費にかけられる額は限度がありますから、厳しいです。私が患者さんにお話できるのは、いまは働き口は探せば結構あるということです。今の現場が嫌なら転職も割と簡単な時代です。売り手市場ですから、なんとかなります。そのあたりに希望を持って頑張っていきましょう。

    江津湖に沈む夕日

  • 漢方の講演の準備

    長年漢方を専門にしていると、各地で漢方の勉強会があるので、講演会の演者を頼まれます。それぞれの会の主催者から演題のリクエストがあります。もうすぐ2つの講演をひかているのですが、一つが「心療内科の漢方治療」もう一つが「産婦人科の漢方治療」です。私の講演を聞いてくれる人たちに聞いてよかったと思ってもらえるように話の内容を構成するのは大変です。ただでさえ、毎日臨床に追われて全く時間がありません。仕事、食事、寝る、毎日これ以外何をする時間もありません。

    講演はスライドを使うのですが、だいたい1分で1枚使います。60分なら60枚、90分なら90枚は必要になります。相当な労力です。実は、スライドを作る手間暇もさることながら、全体の話の流れ、構成を考えるのに1ヶ月以上かかります。一度考えがまとまれば、あとはそれを決まった枚数のスライドに仕上げるだけです。今週末は久しぶりに家でゆっくりしたので、あさからノートとペンをテーブルに置いてひたすら考えました。Google検索しながらアイディアを広げていきます。一度考え出すと芋づる式にキーワードは浮かんでくるので、忘れないように目の前にパソコンとiPadを合計3つ立ち上げてそれぞれの画面に検索結果を表示しながら思いついたことを調べていきます。朝から始めて夕方にはA4で5枚位の構成ができました。単純にこれをスライドにすれば25枚位になりますが、あとは検索して膨らましたアイディアをスライドとして肉付けすると60枚位にはなります。

    私の臨床のスタイルは漢方一本ではありません。西洋薬もたくさん使うし、最近はビタミン剤やプロテインも使います。それくらい総合的に取り組まないと難病の患者さんには太刀打ちできません。また、診察中の患者さんとの会話も薬です。カンセリング料をとるほど時間をかけまていせんが、一言一言言葉を選んでいます。愛情を込めて、親しみを込めて、尊敬の念を込めてお一人おひとりと話します。言葉のちからも薬以上に治療になるからです。したがって、私の漢方の講演を聞いて理解してたと思っても、それは私の診療テクニックの全てではありません。

    郡市対抗女子駅伝

  • 緊張してお腹が痛くなる人へ

    猛威を奮っているインフルエンザは少し下火になってきたようです。このまま収束に向かってほしいものです。高校受験もいよいよ始まるようですので、体調も万全に頑張ってもらいたいと思います。ところで、このような試験や大きな発表会などで必ずお腹が痛くなって下痢したりするという人がいます。他にも、緊張で震えたり過呼吸みたいになってしまう人もいます。こういう緊張しやすい体質は、なかなか難しいのですが、ある程度は薬でなんとかなります。先日も、受験前に緊張でお腹が痛くなるのを治してほしいと言われました。あまり直前に言われても困るのですが、少し余裕を持って相談していただけると、いろいろ試すことができます。

    そういう試験などの緊張する状況でなくても、精神的、あるいはストレスから体調を悪くすることはいろいろあります。学校や会社に行こうとすると吐き気がしたり頭痛がしたり、腹痛がしたり、いろんな症状が出ます。このようなストレスから来た身体症状も薬である程度はコントロールできます。根本的にストレスのもととなっていることが解決するわけではないのですが、薬の力でストレスをストレスと感じなければ、体はあちこち痛くなったりしません。

    当院では、漢方を併用することで安定剤などをできるだけ最小量で使うように心がけています。ただ、子供さんなどでは、漢方がうまく飲めない場合もあります。そのような場合は漢方にこだわらず、飲める薬でなんとか考えます。最近、インフルエンザなどの患者さんが殺到している関係で、このような心療内科の患者さんはあまり予約が入らない状況です。おまたせしてすいません。入試や就活などどうしても期限が切迫している場合は電話予約の際に事情をお話ください。なんとかお力になりたいと思います。

    ソウル駅から明洞方向 左が南大門市場

  • オーソモレキュラー栄養療法

    オーソモレキュラー療法というものがあります。聞き慣れないと思います。私が去年から力を入れているビタミンやミネラルを使った治療法です。通常の栄養学(栄養士さんたちが学ぶもの)は、欠乏症にならないための栄養学です。例えば、ビタミンB1が欠乏した食事(カップラーメンばかり食べている)だと、脚気(かっけ)心不全を起こします。そこで、最低限必要なビタミンを計算して食事として取り入れられるようメニューを構成します。しかし、飽食の時代、栄養失調で病気になるなんてみんな思っていないと思います。ほとんどのドクターも栄養失調なんて今の日本ではないと思っていると思います。

    健康保険でも、ビタミン剤を処方するとたとえ「ビタミン欠乏症」という病名があっても保険では切られます。そこで、私たちも及び腰になってビタミンの処方はほとんど行いません。しかし、実際にはビタミン欠乏はものすごく身近です。おそらくこれを読んでいるあなたも足りていないと思います。通常は足りていても、風邪を引いたときなどは炎症が起こるのでそれを制御するためには大量のビタミンCが必要です。通常の10倍近く必要になります。しかし、これは保険が通りません。自分で買って飲むしか方法はありません。

    他にも、不妊症や糖尿病の人は亜鉛やビタミンEが不足している場合が多いし、慢性疲労の人は鉄、ビタミンB群の不足、うつやパニックの人はタンパク質と鉄の不足など、病態により違ってきます。栄養士さんがみんなに共通のメニューを考えるのと違い、オーソモレキュラーは個別に足りなくなっている栄養を入れて治療します。採血のデータを非常に細かく評価し、分析します。残念ながら保険があまり効かないので、サプリに頼りますが、最近は安くても使えるサプリがありますので、当院ではそのようなサプリを買っていただくように勧めています。仕事や子育てで日頃の食事を疎かにしていると、後からつけが来ますよ。

    ソウル駅裏の歩道。なんとなく韓国風の石積み。